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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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義理の妹は亡国の王女(逃避行エンド)
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JUGEMテーマ:恋愛小説

 

・以前UPした「義理の妹は亡国の王女」シリーズの続きです。

ノベルゲームを想定してシナリオを書き始めたものの、ゲームは作らずじまいという…。)

・シェヴィーが亡国の王の娘であることが広く知れ渡り、反逆の罪を被せられて処刑されそうになる→からの逃避行エンド(BADエンドの1つ)です。

(BADエンド(予定)の中には、そのままシェヴィー処刑エンドもありました。)

・シェヴィーを匿っていたユーディス家は、当主とその妻(エディーの両親)は殺され、エディーも監禁状態だったものの、シェヴィーのメイドだったメアリ、シェヴィー付きの騎士だったクロフォード(亡国の出身)が命懸けで逃亡を助けてくれ、ひとりでシェヴィー救出に向かいます。
  ↓
エディー
「クロフォード!!」
クロフォード
「どうか、あの方を!!あの方を救いだせるのは、あなたしかいない!!」
エディー
「……お前はっ!?」
クロフォード
「私のことは良いのです!あの方の御命こそ、私の全てですから!だから、早く!!」
エディー
「――すまない。感謝する!!クロフォード!!」



・その間、王子とシェヴィーの間ではこんなやりとりが…。
  ↓
王子
「最後通牒です。シェヴールグレン。私のものになると言えば、命だけは助けて差し上げましょう」
シェヴィー
「……私の正体は王国中に知られてしまっているというのに?処刑しないと示しがつかないのではないですか?」
王子
「なに。処刑したと言っておけば済むことです。そしてあなたは今後、表に出ることなく、一生私の傍にいれば……」
シェヴィー
「……ユーディス家は?父上たちへのお咎めはどうなるのですか?」
王子
「そちらはどうにもなりませんよ。姫を処刑するというのに、何故匿っていた家を処罰せずにいられるのですか?」
シェヴィー
「……それなら、私の答えは決まっています。あなたに囚われて一生を送るくらいなら、ここで人生に幕を引いた方が何百倍もマシです」

 



・そして何とかシェヴィーの元に辿りつけたエディー…。
  ↓
エディー
「シェヴィー!!無事か!?」
シェヴィー
「兄……うえ。どうして、ここに!?」
エディー
「助けに来た。一緒に逃げよう」
シェヴィー
「……なんてことを……。そんなことをしたら兄上まで反逆罪で…!」

言いかけて、シェヴィーは何かに気づいたように顔を強張らせた。
聡いシェヴィーのことだ。父母を人質に取られて動けずにいたはずの俺が、こうしてここにいることの意味に、すぐ気づいたに違いない。

シェヴィー
「…あ、兄上……っ、父上は…?母上は…?それに、クロフォードやメアリは…」
エディー
「………………」

俺は答えなかった。……答えられるわけがなかった。
しかしシェヴィーはその沈黙から答えを悟ったようだった。

シェヴィー
「……行けない。……一緒には…行けないよ。だって……私のせいで、皆……」
エディー
「ばか!お前のせいなわけないだろ!生まれなんて選べやしないのに、それが何でお前のせいになる!?」
シェヴィー
「……でも、皆、私がいたせいで……。行けない…。行けるわけ…ない。兄上だけでも逃げて……。私は……」

震えながら首を横に振り続けるシェヴィーの手首をつかんで強引に引き寄せる。
シェヴィーの言葉には予想がついていた。だが、どうあっても絶対にこのままシェヴィーを死なせるわけにはいかない。シェヴィーが永遠に喪われてしまうなんて、考えただけで身が凍る。
それに、あまりに酷過ぎるじゃないか。お前は、こんな惨めな最期を迎えるために生きてきたわけじゃないだろう?

エディー
「俺をたったひとりで生き残らせるつもりか?」

間近からシェヴィーの瞳を覗き込む。

エディー
「お前を救うためだけに、ここまで必死に生き延びてきたんだ。何もかも犠牲にした。俺に残されたのはもうお前だけだ。そのお前さえも喪うというなら、俺ももう生きてはいけない」
シェヴィー
「そんなの……!」

シェヴィーがつかまれていない方の手で俺の手を握ってくる。何かをつなぎとめようとするような強い力で。
俺は強張った顔で、それでも無理矢理笑顔をつくった。

エディー
「……ああ。だから、生きよう。ふたりで。それが、父上たち皆の願いだから」

シェヴィーはそれでもためらいを捨てきれないように目を伏せた。だけど、シェヴィーがどんな答えを出そうと俺の決意は変わらない。

罪悪感で死んでしまいたいのなんて、俺の方なんだよ、シェヴィー。
俺は父たちを見殺しにした。シェヴィーの救出を言い訳にして、父たちの死を利用した。本当なら、一緒にあの場で死ぬべきだったのに。ただ、もう一度シェヴィーに会いたかったから。……いや、会うだけじゃなくて、できるものなら、シェヴィーとともに生きていきたくて。

エディー
「逃げよう。シェヴィー。一緒に来てくれ」

俺はシェヴィーの決断を促すようにつかんだ手首を軽く揺らした。
シェヴィーはためらって、ためらって、震えた声で俺に問う。

シェヴィー
「逃げるって、何処へ?相手は王族なのに。逃げる場所なんてこの国にはないよ」
エディー
「諦めちゃ駄目だ。とにかく逃げるんだ。逃げられる所まで。どこまででも」
シェヴィー
「……兄上」
エディー
「お前一人殺させやしない。死ななきゃならないなら一緒に死なせてくれ。お前と逃げて、逃げて、それで捕まって殺されたって俺は本望だ」

・こうして、二人の絶望的な逃避行が始まります。

・追っ手の迫る中、死を覚悟したエディーはシェヴィーに想いを告白しようとします。
  ↓

 

 

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タイトル
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義理の妹は亡国の王女(幼少期・兄妹ふれあい編2)
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エディー
「……あれ?どこへ行ったんだ?シェヴィー……」
メアリ
「ああ!若様!どうか姫様をお探し下さい!最近お部屋を抜け出されてばかりで困っているんです」

この娘はメアリ。
後にシェヴィー付きのメイドとなる少女だ。当時はシェヴィーの遊び相手として城に上がっていた。
俺と同じくシェヴィーに振り回され苦労していたようだ。

エディー
「分かった!見つけて連れ戻すよ!」

エディー
(……どこを探そう)

→調理場を探す
→庭園を探す
→中庭を探す

 


→調理場を探す

エディー
「……いないなぁ」

 


→庭園を探す

エディー
「シェヴィーどこだ………。……あ、いた!」
シェヴィー
「あにーえ!見て見て、シェヴがつくったの!」
エディー
「……って!泥だらけじゃないか!」
シェヴィー
「えへへ〜。どろだんご」
エディー
「あぁああぁ〜…。ドレスが…っ。顔が…っ。手が……っ!」

俺は嫌がるシェヴィーを無理矢理引っ張って部屋に連れ戻した。

メアリ
「きゃあぁ!姫様っ!なんというお姿をっ!」
エディー
「すまないが、なんとか綺麗にしてやってくれないか?」
メアリ
「もちろんです!さ、姫様。お風呂に参りましょう」
シェヴィー
「あにーえもいっしょにはいる?」
エディー
「ええぇえぇッ!?あ、いや、俺はっ……」
メアリ
「いけませんッ!!」

その時のメアリのあまりに必死の形相に、俺はたじろいだものだった。

……今になって思い返せば彼女の必死さも理解できる。
何しろ俺はあの時まだ知らなかったのだから……。
シェヴィーが俺の“妹”なんかではないことを…………。

 


→中庭を探す

エディー
「シェヴィー!どこだ――!?」
シェヴィー
「あにーえ?」

その声は俺の頭上から聞こえてきた。
あわてて顔を上げるとそこには…………

シェヴィー
「きゃふふふふっ。すごいでしょ!?」
エディー
「うわあぁああぁッ!危ないッ!なんて所に登ってるんだ!!」
シェヴィー
「あにーえはいつも登ってるのに」
エディー
「おんなのこは木登りなんてしなくていいんだ!早く降りて来なさい!!」
シェヴィー
「はぁい!じゃ、行っきますよぉ〜!」

言うなり、シェヴィーは木の枝から勢い良く飛び降りてきた……!!

エディー
「えっ!?うわあぁああぁああぁああぁッ!!!」

どさっ どすん

俺はとっさにシェヴィーを受け止めたものの、見事に尻餅をつき、かなり痛い思いをした。

エディー
「こらッ!!なんてことをするんだ!危ないじゃないか!!」

俺は本気で怒鳴った。
なんとか受け止められたから良かったものの、失敗していたらシェヴィーは大怪我をしていたところだ。
その場面を思い描いたら、本気で血の気が引いた。

シェヴィー
「ふぇっ!?あ……あにーえ…っ。ごめんなさいっ……」

それまでシェヴィーを怒鳴りつけるなんてしたことのない俺だ。
シェヴィーはびっくりして大きな目に涙をにじませた。

エディー
「え!?ああぁああぁっ!シェ、シェヴィーっ!な、泣かないでっ!」
シェヴィー
「あにーえ!あにーえっ!ごめんなさい!ごめんなさいっ!シェヴ、いい子になるから、だから、シェヴをきらいにならないでっ!」

シェヴィーは泣きながら俺に抱きついてきた。
俺は……怒りも忘れてシェヴィーの身体をぎゅっと抱き締めて、その頭を優しく撫でてやった。

エディー
「嫌いになんか、なるわけないだろ?シェヴィーが嫌いだから叱ったわけじゃないよ。シェヴィーが自分で自分を危険な目にあわせたから怒ったんだ。……もう決してこんな危ないことはするんじゃないぞ。シェヴィーが大怪我したり……死んじゃったりしたら、兄上は泣くからな」

シェヴィー
「うん!もう、もうしないよ!だから、泣いちゃダメ!あにーえ!」
エディー
「よしよし。シェヴィーはいい子だ。……じゃあ、部屋に戻ろうな」

 

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義理の妹は亡国の王女(幼少期・ライバル妨害編)
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JUGEMテーマ:オリジナル創作

 

赤ん坊がどうやってできるかも知らなかった当時の俺は、ある日突然現れた妹の存在を疑うことさえ思いつけなかった。
だから、シェヴィーと俺に血の繋がりがないことを知ったのは、かなり後になってからだった。

その事実を知るまでは、「兄妹は結婚できない」という現実の前に、ひどく切ない想いをしたものだ。

幼い頃から既に、内から光を放つかのような美貌と存在感を持っていたシェヴィーは、まだ色恋もよく分かっていないだろう子供たちからも、熱烈なアプローチを受けていた。

シェヴィーに群がるどの男より、シェヴィーの近くにいて、どの男よりシェヴィーのことをよく知っていて、きっと他の誰よりもシェヴィーのことを愛しているのに……その資格がよりによって自分だけに無いなんて……。

俺は、いつか来る未来に怯えた。
シェヴィーが、俺でない誰かのものになってしまう未来に。
だから、必死にシェヴィーの周りに集まる男たちを遠ざけようとした。

シェヴィーに会いにきた友人1を俺は……


→シェヴィーは病気だと言って追い返した
→庭園におびき寄せて落とし穴にハメた
→シェヴィーと会っている所をずっと監視し続けた

 


→シェヴィーは病気だと言って追い返した

友人1
「そうか……。それじゃ仕方ないな。姫にお大事にと伝えておいてくれ」

 


 

→庭園におびき寄せて落とし穴にハメた

友人1
「ぎゃっ!?な、なんだこれはっ!?」
エディー
「ああ……。すまない。穴が開いていたのをすっかり忘れていたよ。うわぁ、泥だらけだなぁ。家に帰って風呂に入った方がいいんじゃないか?」
友人1
「うぅう……。そうだな。こんな格好じゃ姫に会えない」

  


→シェヴィーと会っている所をずっと監視し続けた

友人1
「ど…どこまでついて来るんだよぉ」
エディー
「大切な妹に変な真似でもされたら堪らないからな」

 



シェヴィーが庭師の息子と話しているのを見ると…

 


→無理矢理話に割り込んだ
→庭師の息子を強引に追い払った
→シェヴィーを強引に連れ出した
→庭師(父)にあることないこと言いつけた

 

 


→無理矢理話に割り込んだ

エディー
「今日はいい天気だなぁ、シェヴィー」
シェヴィー
「いい天気って……雨が降りそうなのに」

 


→庭師の息子を強引に追い払った

エディー
「あっちへ行け。誰がシェヴィーと話すことを許した」
庭師の息子
「うわあぁあんっ。ごめんなさいっ」
シェヴィー
「……あにうえ。いじめっ子はだめでしょ」

 


→シェヴィーを強引に連れ出した

エディー
「シェヴィー!ちょっとこっち来い!!」
シェヴィー
「いた…っ、あにうえ、ひっぱらないで……!」

 


→庭師(父)にあることないこと言いつけた

エディー
「お前の息子がシェヴィーをいじめてるぞ。どうにかしてくれ」
庭師
「も、申し訳ございませんっ!きつく叱りつけて、もう姫様のお傍には寄らないようにさせますからっ!!」

 



友人2がプレゼントを持って現れると…

 

 

→プレゼントを奪い取った
→プレゼントを横取りした
→シェヴィーは病気だと言って追い返した

 


→プレゼントを奪い取った

友人2
「な、何するんだっ!?」
エディー
「物で女心をつかもうなんて姑息なんだよッ」

 


→プレゼントを横取りした

友人2
「返せよぉぉおぉッ」
エディー
「悪いな。シェヴィーにはちゃんと渡すさ」
(僕からだと言ってな……)

 


→シェヴィーは病気だと言って追い返した

友人2
「そうかぁ…。病弱なんだな。シェヴィー姫…。じゃあ、これは見舞いの品として渡してくれよ」
エディー
「ああ。気をつけて帰れよ」

 

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義理の妹は亡国の王女(幼少期・兄妹のふれあい編)
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JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの

 

シェヴィーはユーディス家の娘として、ますます愛らしく育っていった。
そんなシェヴィーに対し、俺は……

→よく遊んであげたものだ
→何かとプレゼントをあげたものだ
→毎日のようにおしゃべりをしたものだ
→ついつい、いじめてしまったものだ
→よく部屋を訪ねたものだ
→シェヴィーは放っておいて城の探検に夢中だった

 


→よく遊んであげたものだ

エディー
「シェヴィー!今日は英雄ごっこだ!シェヴィーはお姫様役だぞ!」
シェヴィー
「いや!シェヴも“えーゆー”する!」
エディー
「だめだよ。シェヴィーは女の子なんだから。英雄になるのは男の仕事。シェヴィーはお姫様になって、僕に守られてなきゃ」
シェヴィー
「あにーえ、ずるい!!シェヴも剣をもつの!」

当時、シェヴィーはまだ舌足らずで、俺のことをちゃんと『兄上』と呼べずに、『あにーえ』と呼んでいた。
自分の名前もちゃんと呼べていなかったっけ……。
あの頃からおとなしくしているのが嫌いで、男の子と同じことばかりしたがっていた。

 


→何かとプレゼントをあげたものだ

エディー
「シェヴィー!今日はくまさんだぞ」
シェヴィー
「ありがと、あにーえ」

当時はまだ素直に、ぬいぐるみでも人形でも何でも受け取ってくれていたんだ。
俺のことを『兄上』と呼べず、『あにーえ』と呼ぶ様は、それはもう可愛らしかった。

 


→毎日のようにおしゃべりをしたものだ

エディー
「その時俺の行く手に巨大な蜘蛛がどさっと!」
シェヴィー
「それで?それで!?」
エディー
「俺は勇気を振り絞って、その蜘蛛にフライパンを振り上げて……」
シェヴィー
「あにーえ、かっこいい!」
乳母
「若様だったんですか!?フライパンで蜘蛛を叩き潰したのは!料理長がカンカンでしたよ!!」
エディー
「わ、悪かったよ……。だって、武器になるようなものが他になかったんだ」
シェヴィー
「しかたないのよ、悪をたおすには“ぎせい”がつきものなのよ」

思えば、この頃から既にシェヴィーの言動には賢さがにじみ出ていた気がする。
(こういうことを言うと、すぐに周りからは「兄ばか」扱いされるんだが…。)

乳母
「……若様、姫様におかしな言葉ばかりお教えにならないで下さいね」

 


→ついつい、いじめてしまったものだ

シェヴィーが泣き出すと困るくせに、それでも俺はよくシェヴィーに意地悪をした。
いわゆるアレかもしれない。好きな子ほど……ってやつだ。

シェヴィー
「あにーえの、いじわるぅ!あにーえなんか、きらい!!」
エディー
「き……きらい……」

自分でいじめておきながら、嫌いと言われるとショックを受けたりしていた。
それでも意地悪をやめないのだから、俺は当時から相当屈折している。

 


→よく部屋を訪ねたものだ

 

メアリ
「まあ、若様。いらっしゃいまし。
姫様は今クラヴィーアの練習中ですよ」

この娘はメアリ。後にシェヴィー付きのメイドとなる少女だ。
当時はシェヴィーの遊び相手として城に上がっていた。

エディー
「……ってことは、この音はシェヴィーのクラヴィーアか。………なんというか、独創的だな」
メアリ
「まだ始められたばかりですもの。仕方ありませんわ」
シェヴィー
「あにーえ!いらっしゃい!」
エディー
「ああ。ジャマしたかな?随分熱心に弾いてたみたいだが……」
シェヴィー
「えへへー。シェヴさっきょく『アマガエルのひめい』だい2がくしょうだよ」
エディー
「……ひ、悲鳴……?しかもアマガエルの……?どんな状況を想像して作ってるんだ?」

シェヴィーはいつもこんな感じで、見ていて全く飽きなかった。

 


→シェヴィーは放っておいて城の探検に夢中だった

……………まあ、俺も遊びたいさかりだったし。

 

 

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義理の妹は亡国の王女(プロローグ)
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JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの

 

・学生時代にノベルゲームで作ろうと思って書き始めたものなので(そしてゲームは作らずじまい…)小説というよりシナリオ的です。

・選択肢による展開の分岐があります。

・とりあえず冒頭部分のみです。
(他のシーンもそのうち出したいとは思っていますが、間のシーンがちょこちょこ抜けていたりするので…。)

 



幼い頃、俺は何も知らず無邪気に母にねだったものだった。

 
「ねぇねぇ、母上。僕には弟はできないの?」
「まあ。エディーは弟が欲しいの?」
「うん。ジェームズにはお兄さんがいるし、ヘンリーにだって弟がいるんだ。僕も弟が欲しいよ」
「そうねぇ。でも、これは神様のお決めになることだから。弟じゃなく妹ができるかも知れないわよ?」
「えぇ〜っ!?やだよ、妹なんて。僕は絶対に弟が欲しいんだ」
「……まぁ、どうしても弟なの?妹じゃだめなの?」
「女の子なんかつまらないよ!家にとじこもってお人形遊びばっかしてて!弟だったら、いっしょに木登りもできるし冒険ゴッコだってできるもん」
「あらまぁ。困ったわね。そんなことを言ってもどちらが生まれるかは私たちには決められないのよ。赤ちゃんができるかどうかも神様しだいなんですからね」
「やだ。弟が欲しい。母上、神様にお願いしてよ。僕に弟を下さいって」
「まぁ。それじゃあ、父上がお帰りになったら一緒に教会に連れて行ってもらいなさいな。神様にお願いしてくるといいわ」
「そうだね。父上はいつお帰りになるの?」
「……さぁ。大変な戦ですもの」

 
その当時の俺には戦というものがどういうものかも、その戦が父にとってどんな意味を持っていたのかも知らなかった。
貴族である以上、国王に命じられれば戦に赴かなければならない。だが、その戦は偽りの大義を掲げた侵略戦争。その上、相手は父にとって親友とも呼ぶべき人間だった。

 

トントン

 

「奥方様、旦那様がお戻りになられました」
「まあ!それじゃあ、戦が終わったのね!?」
「はい。それで、旦那様から大切なお話があるとのことで、奥方様だけいらして下さるように、と旦那様が」
「……まあ、何かしら」

 
母は眉をひそめて部屋を出て行った。俺は早く父に会いたくてたまらなかったが、メイドに引き止められ、しぶしぶ部屋で待っていた。
一時間ほど経って戻ってきた母の腕には…………。

 

「エディー、ご覧なさい。あなたに妹ができたのよ。今日からあなたはお兄さんになるのよ」
俺は思わずぽかんとして母の腕に抱かれたその赤ん坊を見つめた。
リクエストした“弟”ではなく“妹”ができてしまったということに怒りを覚えることすら忘れて。
……その出逢いの日のことは、今でもよく覚えてる。
あんな綺麗な生き物を見たのは初めてだった。宗教画の天使くらいでしかお目にかかったことのない、えもいわれぬ薔薇色の頬。鏡のようにきらきら辺りを映す、つぶらな瞳。あの時の赤ん坊の愛らしさを表現するには、どんなに言葉を尽くしても足りない。とにかく、俺はひと目でその赤ん坊に夢中になったのだ。

 
「可愛いでしょう?もっと傍でご覧なさいな」

 
俺はおずおずと母の傍に歩み寄っていき、その赤ん坊を間近から見つめた。赤ん坊は俺の顔を見て、きゃっと笑った。

 
「さ、さわっても、いい?」
「ええ。そぅっと、ね?」

 
俺は壊れ物にでも触れるようにそのぷくんとした頬に触れ、もみじのような小さな掌を指先でつついた。赤ん坊はつついた俺の指先を小さな手で握り締めてきた。

その様子が、食べてしまいたいくらいに愛らしくて、俺は言葉も忘れて赤ん坊の笑顔を眺めた。

 
「だっこしてみる?」
「ええ!?いいの?」
「大丈夫よ。重いから、気をつけてね。ほら、しっかり支えて」
「……うわぁ〜」

 
抱き上げた赤ん坊は予想より重かったが、俺はこの愛らしい生き物が俺の腕の中にいるということに夢中で全然気にならなかった。

 
「僕の、妹。僕の……」

 
頬を緩めて赤ん坊をぎゅうっと抱き締めて……俺はふと気がついた。名前をまだ知らないことに。

 
「ねえ、母上。この子の名前は?」
「シェヴールグレンっていうのよ。シェヴールグレン・ユーディス。それが今日からこの子の名前よ」
「シェヴール…グレン……。僕の、シェヴールグレン」

 

まだ子どもだった俺は、赤ん坊がこんな風にある日突然「やって来た」ことに何の疑問も抱いていなかった。
新しい俺の“妹”シェヴールグレンは、家族の間では「シェヴィー」と呼ばれるようになった。
俺は赤ん坊だったシェヴィーに……

 

→よく花をつんできたものだ
→よく遊んでやったものだ
→子守唄を歌ってやったものだ
→さわって無理矢理起こしたものだ

 


→よく花をつんできたものだ

 

乳母
「まぁ、若様。姫様は今お休みですよ。お静かにお願いしますね」
エディー
「あのね、おはな、つんできたんだ。シェヴィーの髪に飾れるように」
乳母
「あらまぁ。今まで花なんか見向きもしなかった若様が珍しいこと」
エディー
「だって、シェヴィーがきれいだと僕もうれしいもん」

 

あの頃の俺は、この、俺だけの小さなお姫様を飾り立てるのに夢中だった。
ままごとや人形遊びばかりの女の子たちを馬鹿にしていたのに、思い返せば俺のやっていたことも、まるで着せ替え人形遊びだ。
だが、それでもシェヴィーを自分の手でますます可愛らしくしていくことが、俺にとって何よりの喜びだったのだ……。


→よく遊んでやったものだ


エディー
「たかいたか〜い!!」
シェヴィー
「きゃっ♪きゃっ♪」
乳母
「きゃあ〜〜あ!!若様ッ!!何をしておいでなんですか!?」
エディー
「何って『たかいたかい』だぞ」
乳母
「…………それは…ッ、赤ちゃんを放り投げて受け止めるものではありませんッ!!」
エディー
「え?違うのか?シェヴィーが大喜びしてるから、てっきりこれで合っているものだと……」
乳母
「…………お願いですから、まともなあやし方をなさって下さいッ!」

 
その後俺は、乳母にも母にも……父にまでもたっぷり叱られ、しばらくの間シェヴィーと遊ぶことを禁止されてしまった。
……あの時は本当に哀しかった……。

 


→子守唄を歌ってやったものだ

 

乳母
「わ、若様!?一体何をお歌いなんですか!?姫様が泣き出してしまわれます!」

 
当時の俺は自覚していなかったが…………俺は、実はものすごく……音痴なのだ。

 

エディー
「何って、子守唄だぞ。シェヴィーがよく眠れるように」
乳母
「こ、子守唄!?あ、あの……もう少し……その……静かな子守唄はございませんか?」
シェヴィー
「きゃっきゃっ♪」
エディー
「シェヴィーは喜んでくれてるみたいだぞ」
乳母
「………………姫様はきっと、たくましくお育ちになられますわ」

 


→さわって無理矢理起こしたものだ

 

シェヴィー
「みゃあぁああぁぁッ!!!」
エディー
「うわっ、泣いちゃった」

シェヴィーが眠っているのがつまらなくて、目を覚まして欲しくて、ちょっかいを出して……それでよくシェヴィーを泣かせたものだった。
シェヴィーが泣いてしまうと、俺はどうしたら良いのか分からず右往左往して……結局 乳母や母に助けを求め、シェヴィーを泣かせたことがバレて叱られたりしたものだった。
思えばあの頃から既にシェヴィーの泣き顔には弱かったんだ……、俺。

 

そうしてシェヴィーはユーディス家の姫君として大切に育てられ、すくすくと成長していった。

 

 

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ミトコンドリアの恋
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JUGEMテーマ:恋愛小説

JUGEMテーマ:恋愛小説

 

「なぁ、知ってるか?太古の生物には寿命なんて無かったんだ。生殖行為を行わず、分裂で ( ) える代わりに、最初からプログラムされた死も無い。単細胞生物なんてばかにしてるけどさ、せっかく育てた身体(からだ)も記憶も、何十年か経てば必ず消滅してしまう人類(ぼくたち)に比べたら、ずっと生命体として完成された、永遠に近い存在なんじゃないかな」

僕は、なんで君にこんな話をしているんだろう。

養護教諭のたまたまいない、二人きりの保健室。
君は保健委員として僕につき添って来てくれただけで、特に親しいわけでもなければ、そもそも会話を交わした記憶さえ、ほとんど無いくらいの間柄なのに。

……ただ、いつも教室の隅で一人静かに本を読む君が、時々、妙に視界の端に引っかかるのは感じていた。

皆が群れを作って居場所を確保しようと必死でいる中、独りになることを恐れず“自分”を貫こうとするようなその姿は、まるでサバンナを独りで生き抜くライオンのように、気高く、強い存在に見えて、そんな君を何だか眩しく思ったこともあった。

だからかな。
君だったら、僕のこんな聞くほどの価値も無いような愚痴だって、笑わずに聞いてくれるんじゃないか――そんな風に、思ってしまったのは。

 

「なぁ、何で僕たちは、こんな不完全で儚い、永遠を生きられない生命体に進化してしまったんだろうな?太古の命のままでいれば、死に怯えることも、そもそも人生に悩む頭さえ無かっただろうに」

こんな話、友達とだって、親兄弟とだって、したことがない。

死ぬのが恐いだとか、人間の生命のあり方に納得がいかないだとか、言い出したところでどうにもならないことだし、答えなんて見つかるはずもない。

だから皆なんとなく、そこからは目を逸らし、見ないようにして、受け入れたフリをしながら日々をやり過ごしている――そういうものだと思っていた。

君だって、急にこんな重苦しい話をされたら、きっと戸惑って、困惑して、僕から距離を置きたくなるに違いない……そう、思っていたのに……。


「……それなら、私たちは、もしかして“恋をする”ために永遠を ( ) てたのかも知れない」

ひそやかに告げられたその言葉に、僕はまともな反応が返せなかった。

「……え?」

「ううん。“恋”だけじゃないかも知れないね。“友情”や“親愛”の気持ちだってあるかも知れない。あるいは、見も知らない芸術家の作品や、遠い国の偉人の人生に触れて、感動したり涙を流したりするためかも知れない。でも、たぶん、 そういうもの ( ・・・・・・ ) を知りたくて、私たちはこういう生命に進化したんじゃないかな。どこまで殖えても、自分の分身ばかりで、結局どこまでも“ひとりぼっち”で生きるより、永遠の命を棄ててでも、自分とは違う誰かを生み出して、出逢って、心を震わせたかったから。ひとりだけじゃ感じられない何か、ひとりだけでは生み出せない何かを、この世界に創り出したいから」


それは、思いもよらない“答え”だった。
理想論だと、ただのロマンティシズムだと一笑に付してしまえばそれまでの、どこか夢見がちな感情論。

だけど、僕は笑えなかった。
君が笑わず真剣に答えを返してくれたことにも、その答え自体にも、言いようのない衝撃を受けたからだ。


きっと僕ひとりでは、永遠に 辿 ( たど ) り着けなかったであろう、答え。
僕とは生まれてきた環境も、成長してきた軌跡もまるで違う君だから見出せた、僕にとっては未知の、全く新しい考え方。


どうしてこの世界に、君にような人間が存在するんだろう。
どうして僕は、今日この瞬間まで、そのことに気づけずにいたのだろう。

いつの間にか、心臓が、今までに感じたことのない激しい速度で、けれどどこか妙に甘ったるいリズムで、鼓動を刻み始めていた。

これは、今までに味わったことのない感情だ。
だけど僕は、生まれてから十数年間、ずっとこの瞬間を待っていた気がする。


この地球に生命が生まれてから、およそ40億年。
生物と呼べるかどうかすら分からない単純な姿から、少しずつ形を変え、遺伝子を組み換え組み換え、繋がれてきた、命。

自分とは異なる遺伝子を持つ誰かと、出逢っては恋をし、似て非なる遺伝子を持つ子どもを生み出しては、また新たな世代で新しい恋をする――。

そうして途方もないほどの時間と世代を超えてきた生命のリレーの、数えきれないバトンパスの果てに、 現在 ( いま ) 、こうして僕が生まれ、同じようにこの時代を駆け抜けるべく生まれてきた、けれど僕とはまるで違う、たった一人の君と出逢う。


これから僕は、君に対して、どんな気持ちを抱いていくのだろう。
甘いドキドキや幸福感ばかりじゃなく、切なさや苦しさも、味わうことになるのだろうか――。

だけど、そんな切なさや苦しささえも引っくるめて、この痛いくらいの胸の震えが、永遠を棄ててまで手に入れた代価だと、君は言うのだろうか。


僕は、きっと、今日のこの瞬間を忘れない。
魂の根幹を揺るがすような衝撃と、初めて覚えた甘い胸の震えと、風に揺れる白いカーテンや、伏し目がちな君のまつ毛の長さまで。

きっと、ひとつ残らず覚えている。

もしかしたら、この想いは、実らないかも知れない。
君に知られることさえなく、終わってしまうかも知れない。

それでも、僕はきっと後悔はしない。
君は僕に、大切なものをくれたから。


いつか必ず終わりが来ると分かっているこの命に、否応なく、僕は生まれ落ちた。
自らの意思でもなく、選択の余地すら与えられずに。

だけど、永遠に背を向けてまで、この儚い生命に生まれてきた、その理由が、君のくれたその優しい答えなのだとしたら――この世界も、そう悪くはないのかも知れない。
そう、思えるんだ。

 

 

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若殿と幼馴染と鎮守神の和風ファンタジー・ラブコメ小説
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「時。お前に伝えねばならぬことがある」
 いつになく真面目な父の声に、時子は居住まいを正す。
「如何なるお話でございましょうか、父上」
「実はな、お前に縁談が持ち上がっておる」
 時子はわずかに眉を上げたが平静な態度を崩さなかった。時子の家は代々、国の家老職を務める家柄。いつかはこの話が出ることを、物心ついた頃から覚悟していた。
「それで、相手はどちらの家の御方なのでしょう?」
「それが、な……」
 父は珍しくひどく言いづらそうに言い淀む。娘の顔色を窺うように幾度も言いかけては止め、言いかけては止めを繰り返した後、ようやく意を決したように口を開く。
「我が国の若殿様なのだ」
 その瞬間、時子は固まった。父の言葉を頭がまるで受け付けてくれなかった。
 たっぷりの間を置いてやっと出てきた言葉は、政略のための結婚を幼い頃から受け入れていた名家の娘とは到底思えぬ悲鳴じみた叫びだった。
「じょおぉだんじゃありませんよっ!」
「……うむ。私も、冗談であれば良かったと、そう思うておるぞ」
「何故です!?何故私が、あの大うつ……若殿と夫婦にならねばならぬのですか!?」
「幼き頃より若殿の御側仕えを務めてきたお前であれば、あの若殿をお支えし、この国を良き方向へ導いていけるであろうという、殿のお考えでな……」
「要は若の御守をこの先もずっと私に押し付けようということですよね!?」
「いや、まぁ、その……な」
「私がこの十年以上、若の御側でどれほど大変な目に遭ってきたか、分かった上で仰っているのですか!?もうこれ以上は御免です!それに、今さら若とだなんて……あの若が御承知するはずがありません」
「……いや、若殿は存外乗り気でいらっしゃったぞ。『それはなかなか面白いな』と仰って」
 その言葉に、時子は開いた口がふさがらなかった。震える拳を握りしめ、時子はすっくと立ち上がる。
「私、今からお城に上がります。若に真意を伺って参ります!」

 

 

 時子が鬼の形相で“真意”を問い質すと、次期国主であるはずの若殿は、城下の子どもとほとんど変わらない汚れや破れ目だらけの着物でけらけらと笑った。
「ああ、その話な。聞いたぞ。あれは笑えるな。おぬし、そういえば女子であったのだなぁ。親父殿から話を聞くまですっかり忘れておったわ」
「忘れないでください!と言うより、意味が分かりませんから!若と初めに会ったときから私はちゃんと女だったでしょう!?」
「確かに昔は一応ちゃんと女子に見えていたがな。今はぱっと見どちらか分からぬぞ。おぬし何ゆえそのように男前に育ってしまったのだ?」
 目の前の時子を頭から膝まで一通り眺め、若殿は不思議そうに小首を傾げる。
「……誰のせいでこうなったと思ってるんです」
 時子は苦虫を噛み潰したような顔でつぶやく。
 若殿の言う通り、時子の姿は一見、女には見えないものだった。髪は頭の高い所で一つに束ねて馬の尾のように長く垂らし、着物も女物ではなく、名家の若君が着るようなすっきりとした袴姿だ。知らぬ者が今の時子と若殿を見たならば、まず間違いなく時子の方をこの国の“若殿”だと思うだろう。
 時子がこのような姿をしているのは、ひらひらした女物の着物では、到底この若殿の側に付いていられないため。そしてさらに言うなら、本来であれば若殿と歳の近い少年が務めるはずの側仕えを時子が女の身で務めているのは、この国で時子以外にこの若殿についていける者がいなかったためである。
「それで、私との縁組の件は、若の方からきっちりお断りいただけるのですよね?」
「断る?何ゆえだ?」
「何ゆえって、ありえないでしょう。先ほども仰っていたように、若、私のことを女子として見ていないではありませんか」
「わしはべつに構わぬぞ。嫁を娶るならば、わしに理解ある女子と昔から決めておったし、おぬしほどわしのことを理解しておる女子はおらぬだろうからな」
 特に何も考えていなさそうな顔であっけらかんと告げられたその言葉に、時子は憤怒した。
「『べつに構わない』なんていう適当な理由で嫁にされてたまるかぁあ〜っ!」
 

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花火の中の一生
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JUGEMテーマ:ショート・ショート

 

浴衣ってね、見た目ほど涼しくはないんだ。
着付けするのにコツも要るし、キレイに着るの、結構大変なんだよ。

でも、初めてのわりには上手く着られてるでしょう?
帯だってね、今時よくあるワンタッチのやつじゃなくて、自分で結んでみたかったから、調べて、練習したの。
思ってたよりナナメになっちゃったけど……これでも頑張ったんだから、笑ったりしないでよね。


花火、もう始まっちゃったね。
確かに、ちょっと遠いけど、ここからでも充分だよ。
人でいっぱいだから、これ以上前には進めないし……。

あ、今ちょうど打ち上がった。

……綺麗だね。

弾けて、光って、消えていく……。 
こんなに一瞬で、あっと言う間に消えちゃうのに、どうしてこんなにも沢山の人がこれに惹かれて集まって来るんだろうね。


本当言うとね、昔は花火って、ちょっと苦手だったんだ。
物悲しく思ったり、恐くなったりして。

……そうだよね。
自分でも独特の感覚だとは思うんだけど……。


花火って、ほら、ぱぁんと弾けて、無数の星がきらめきながら、どんどん広がっていって、最後にはすぅっと消えちゃうでしょう?
似てると思わない?この宇宙に。

大爆発 ( ビックバン ) から始まって、どんどんどんどん膨らんで。
最後がどうなってしまうのかは、私にはちょっと分からないけど。


そう思っていたらね、あの打ち上げ花火のひとつひとつが、小さな宇宙に見えてきたんだ。
私たちの目には、ただの打ち上げ花火に見えても、あの中には実は、私たちには知覚できない無数の命が、一瞬で生まれては消えていってるんじゃないのか……なんて。

あるいは私たちのこの宇宙自体、実は途方もなく巨大な花火の一部で、この宇宙の外には今の私たちみたいに、この宇宙の誕生から消滅までを、花火のように眺めている何者かがいるんじゃないのか、なんてね。


一生が長いか短いか、なんて、きっと相対的なものでさ、私たちがセミの一生を短く儚いものと思うように、百年の人生だって、千年万年の途方もなく長い寿命の生命体から見たら、ほんの刹那の瞬きなんだろうね。

花火みたいなこの宇宙の中で、ほんの一瞬のきらめきのような一生を、懸命に生きてる。
――そう思ったら、なんだかこの人生が、ひどく儚く物悲しく思えて、恐くなっちゃったんだ。


ね、手を繋いでもいい?

……確かに暑いけど、手汗なんて気にしないよ。
今は、そういう気分なんだ。


何かを成し遂げても、どんな夢を叶えられても、結局最後は死んで無になっちゃうなら、意味なんて無いんじゃないか――そんな風に思ってた時期もあるよ。

でも、それは違うよね。意味ならちゃんとある。

だって、ほんの一瞬だけ光って、咲いて、次の瞬間には消えていく――こんな儚いシロモノを、今、こんなにも多くの人がわざわざ見に集まって、そのひとつひとつに声を上げたり、見惚れたり、感動したりしてる。

花火なんて、燃え尽きたら形も何も残らないのに。
――それでもこんなにたくさんの人が集まるのは、形が残らなくても残る 何か ( ・・ ) があるからだよね。

……ううん。
たとえ人の心や記憶に刻まれたその“何か”さえ、途方もない時の流れの中で消え去ってしまったとしても、無駄なことなんて、きっと無い。


あの一瞬の光の花も、身体の芯まで響く音も、この生ぬるく澱んだ夜の空気も、繋ぎ合ったこの手の熱さも……今日のこの一瞬の中にはこんなに確かに存在しているのに、明日になったらもうどこにもなくなってしまう。 
いつか、私の記憶の中からさえ消えてしまうかも知れない。

でも――それでも、私は、今日、ここに来たんだ。

今の、この一瞬を味わうために。
今日ここでしか味わえない何かを、感じるために。


きっとこの世界は、限り有るものだから価値が無いだとか、存在が儚いから意味が無いなんて、そんな単純なものじゃないんだろうね。

だって、私、今この儚い一瞬だけで『今まで生きてきて良かった』って、思ってる。
『今日ここで、この夜を味わえただけでも、生きてきた甲斐があった』なんて、思ってる。

……花火が綺麗だから、だけじゃないよ。


ねぇ、あのセミたちだってさ『人間に憐れまれる謂れなんて無い』って思ってるかも知れないよ。
地上に出てからはほんの数週間しかない命だって、その一生を懸けて全力で、本気の恋ができるなら、下手な人間より幸せなのかも知れない。


単に生命を次の世代へ繋ぐだけなら必要ないものの気がするのに、どうして私たちの中には恋なんていうプログラムが仕組まれているんだろうね。
不思議で、素敵で、ちょっぴり切ない。

きっと、今までも、これからも、この花火みたいな宇宙の中で、数えきれないほどの恋が、生まれては消えていく。

その儚さを思えば思うほど、余計に、今ここに在る何かを確かめたくなるんだ。


……ねぇ。花火が終わっても、まだ一緒にいたいって言ったら、困る?
こんな夜は、一人になりたくない気分なんだ。

永遠なんかじゃなくても、この夜の間だけにしか存在しないものだとしても、今、ここに在るものを確かめていたい。
溺れてしまってもいいから、この儚くて寂しい、花火みたいな宇宙や命のことを、忘れさせていて欲しい。
……誰でもいいわけじゃ、ないよ。


こんな気持ちになるのも、仕組まれたプログラムに踊らされてるだけなのかな?

――それでも、いいよ。
それでも私は、この気持ちに出逢えて良かったって、思うから。


ねぇ、たぶん最期の瞬間に振り返れば、百年の人生だって、あっと言う間のあっけないものに思えるんだろうね。
でも――それでも『この世界に生まれて来て良かった』って、そう思えるほどの“何か”は、きっと在るよ。
私はもう、それを知っているのかも知れない。


ねぇ、一秒でも長く、そばにいてね。
永遠じゃなくてもいいから、できる限り長く、一緒にいてね。
花火みたいに広がり続ける、儚い、この宇宙の中で……。

 

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乙女商人のサクセス・ストーリー…のプロローグ
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JUGEMテーマ:オリジナル創作

 

「ねぇ、私、おかしくないわよね?変な恰好になっていたりしないわよね?」
同じ問いをしつこいくらいに繰り返し、ローゼリットはそわそわと落ち着きなく鏡の前を歩き回る。答えを求められたメイドは苦笑しながら太鼓判を押す。
「大丈夫です、お嬢様。御招待客のどの御令嬢にも負けない完璧なドレスです」
「そんなことは分かっているわ。問題はドレスじゃないの。中身なのよ」
メイドを返答に困らせる一言を言い放ち、ローゼリットは既に整えられた前髪の微調整を始める。
「今更何をなさっておいでなのです。そろそろおいでくださいませんとパーティーを始められませんよ」
皮肉とも呆れともつかぬ声に振り向くと、そこにはローゼリットのよく見知った顔があった。
「ウォルフレッド、どうしてここにいるの?私、入室を許可した覚えはないのだけれど」
ローゼリットはささやかな抵抗とばかりに突き放すが、ウォルフレッドは意にも介さない。
「それはそれは失礼致しました。まさかお嬢様がこの時間に未だグズグズと控えの間にいらっしゃるとは思いもしなかったものですから」
あからさまな皮肉を返され、ローゼリットは拗ねたように頬をふくらませた。
「だって、どうしたってこのドレスが似合う気がしないのですもの。こんな恰好でパーティーに出たら、皆に笑われてしまいそうだわ」
「そのようなことを悩んでいらしたのですか。典型的な被害妄想ですね。スノゥフリッツ家の御令嬢であるあなたを笑い者にする勇気のある人間などいませんよ。この国で当家の援助を全く受けずに暮らしている者が一体どれほどいると思っているのです?」
「でも、それとこれとは話が別でしょう?私、知っているのよ。皆、表向きはお父様に感謝しているけれど、裏ではうちのことを『成金』と蔑んでいるのでしょう?」
その瞬間、ウォルフレッドの双眸が眼鏡の奥で冷たく光った。
「『成金』ですか。どんな王侯貴族も元をたどれば“ただの人”でしょうに。そんなに面白くないものなのでしょうかね、ただの人間が自分たちよりも上の立場に成り上がるのは」
その毒舌の容赦の無さに、ローゼリットの方があわててしまう。
「言葉が過ぎるわ、ウォルフレッド。誰かに聞き咎められでもしたら、ただでは済まないわよ」
「おっと。私としたことが、ついつい口が滑ってしまったようですね。ですが、ここにいらっしゃるお二方は私の他愛のない戯言を誰かに告げ口なさるような方ではございませんでしょう?」
ウォルフレッドはそう言って、取ってつけたような微笑みを浮かべた。その笑顔にローゼリットは呆れ、メイドの方は呆けたように見惚れる。
「さて、お嬢様。会場入りする御覚悟は決まりましたか?早くいらしてくださらないと、予定より一刻以上も早くお着きになってしまわれたあなたの婚約者様が、暇を持て余して何を始められるか分からないのですが」
「レオン……じゃなくて、殿下がもういらしてるの!?ウォルフレッドったら、それを先に行って頂戴!」
ローゼリットはつい先ほどまで前髪ひとつに散々迷って時間をかけていたことも忘れ、弾丸のように部屋を飛び出して行った。その背を見送り、ウォルフレッド『やれやれ』とでも言いたげに吐息する。
「お嬢様も御苦労なことだ。あの歳でもう未来の御夫君のお守をしなければならないとは」
そんなウォルフレッドに、メイドがおそるおそるといった感じで声を掛ける。
「あの、ウォルフレッド様。このようなこと、あなたがなさらずともよろしいのでは?お嬢様をお呼びするためだけにわざわざこちらへ足をお運びになるなんて……。あなたはお屋敷の使用人ではなく、スノゥフリッツ商会の番頭(ヘッド・クラーク)ですのに」
その問いに、ウォルフレッドは振り向くこともなく皮肉な笑みで答えを返す。
「使用人だよ、私は。屋敷ではなく商会に籍を置いているというだけの、な」


ローゼリットの婚約者は会場の大広間に入る前に見つかった。
中庭で十数羽の兎たちと戯れていた彼は、ローゼリットに気づくと屈託のない笑みを見せた。
「ローゼリット!久しぶりだね」
「レオ……じゃなくて……殿下!何をなさっておいでなのですか!?あぁ……もうっ、そんな恰好で動物と触れ合ったりして……御衣装に毛がつくではありませんか!」
「『レオン』でいいよ、ロゼ。ここには僕と君しかいないみたいだし」
「そんなことより御自分の恰好の方を気にしてください!もうパーティーが始まるまで時間が無いのですよ!?」
「あぁ、そうか。じゃあ急がないとだね。僕も早く『未来の義父上』にお会いしたいし」
「だから、その前に兎の毛をお取りになってください!そんな姿を他の方々に見られでもしたら、また何を言われるか分かりませんよ!」
なかなか噛み合わない会話にイライラしながら、ローゼリットは彼の手を取り立ち上がらせる。
ローゼリットより二つ年上の彼は、彼女がまだ赤子のうちに定められた将来の結婚相手だった。名はレオニウス・ゴルド・リプレブルーエン。ブルーエン王国の国王と平民出身の第五王妃との間に生まれた、王位継承権第11位の王子である。
ローゼリットが彼をメイドたちの控室へ引っ張って行くと、中にいたメイドの一人が悲鳴を上げた。
「殿下!またそんなに動物の毛をお付けになって……今度は何をなさったのですか!?」
「……また(・・)?」
ローゼリットが問うような眼差しを向けると、レオニウスは無邪気に事情を説明しだす。
「離宮を出て来る時、ウチのコたちに飛びつかれてね。頭の良いコたちだから、服装や皆の態度だけで、僕がどこかへ出掛けるのを察したんだろうね。皆して『行かないで』って引きとめるから、大変だったよ。仕方がないから小さいコたちは馬車に乗せてギリギリまで一緒に連れて来たし」
「え……?」
ローゼリットが凍りついたように動きを止めた。
「何を、どこまで連れて来たとおっしゃいました?」
「うん。だから、ウチの小さいワンコたちを、馬車に乗せてこの屋敷まで……」
ローゼリットはレオニウスの言葉を最後まで聞くこともなく顔面を怒りで真っ赤にして叫んだ。
「この屋敷に、犬を!?何っってことをしてくれたの!私が大の犬嫌いだってこと、あなたも知ってるでしょう!?」
「お嬢様!敬語!敬語を忘れてます!」
メイドがあわててたしなめるが、ローゼリットの耳には入らない。
「だいたい、パーティーに小犬連れで来るなんてどういうことなのよ!?離宮の人たちは何をしていたの!?誰もあなたを止めなかったの!?」
いきり立つローゼリットを不思議そうに眺め、レオニウスはのんびりと口を開く。
「そんなに怒らなくても、犬たちはちゃんと君の目の届かない所に預けてあるから大丈夫だよ。それより、いいのかい?急がないとパーティーが始まってしまうんだろう?」
あまりに緊張感の無い物言いに、怒っていた自分が馬鹿らしくなり、ローゼリットは大きな溜め息をついて何とか心を落ち着かせた。
「そうだったわね。もういいわ。さっさと身だしなみを整えて行きましょう。今日は大事なお父様の壮行会なのですもの」


ローゼリットの父、グリンフィルド・スノゥフリッツは、十代の頃から商いの世界で頭角を現し始め、持ち前の行動力と商才で一代にしてブルーエン王国一の豪商に昇りつめた男だ。その財力はブルーエン王国のみならず、その近隣諸国や貿易相手国にも影響を及ぼすほどであり、彼の周囲には常に、その恩恵に与ろうという人々が群がって来る。
「相変わらず、すごい人出ね。ルゥバードを置いてきて正解だったわ」
部屋で寝ている病弱な弟のことを思い、ローゼリットは密かに安堵の息を洩らす。
「ああ、ルゥはまた寝込んでいるのかい?道理で姿が見えないと思った。……大丈夫なのか?君たちのお母上も御病弱だったようだし、もし良かったら王宮の御典医に診てもらえるよう取り計らうけど」
「……そうね。必要なようだったらお願いするわ。たぶん、大丈夫だと思うけれど……」
言葉を濁し、ローゼリットは物思わしげに溜め息をつく。
八つ年下の弟・ルゥバードのことは、昔から彼女の心配の種の一つだった。母の命と引き換えに生まれてきたルゥバードは、容姿も身体の弱さも母親にそっくりで、幼い頃から何かといっては熱を出し、床に伏せっていた。ローゼリットは亡き母と留守がちな父に代わり、この弟に精一杯の愛情を注いできたのだ。
「かかりつけのお医者様は、身体よりも精神的なものが原因なのではないかとおっしゃるの。あの子は一度もお母様の胸に抱かれたことがないし、お父様もお仕事で忙しいでしょう?この上、私までもがいなくなってしまったらと思うと……考えるのが恐いわ」
「なるほど。じゃあルゥが一人立ちするまで、君はうちにお嫁に来れないね」
さらりと言われ、ローゼリットは一瞬きょとんとした後、激しくうろたえた。
「い、いきなり何を言ってるのよ」
「何って、僕、何かおかしなことを言ったかい?」
「おかしな……と言うか、その……意味が分かって言っているの?それ」
目を逸らしボソボソとつぶやいた言葉は、レオニウスには届かなかった。
「あ!『未来の義父上』がいらっしゃった!御挨拶に伺わなくては……。じゃあ、ロゼ。また後で」
今しがた会場入りしたグリンフィルドに気を取られ、レオニウスははしゃいだ声を上げながらローゼリットのそばから去って行ってしまった。その瞳はきらきら輝き、頬は紅潮して、今の彼は普段のどこか浮世離れした雰囲気が嘘のように、年相応の少年らしく見える。ローゼリットの心中は複雑だった。
「レオンったら……。本当は私と結婚したいわけじゃなくて、ただ単にお父様の義理の息子になりたいだけなのではないでしょうね」
「そのお考えは案外、的を射たものかも知れませんね。殿下はあの通り、うちの旦那様のことを実の父君のように慕ってらっしゃいますし」
いつの間にそこにいたのか、背後からふいに声を掛けられ、ローゼリットはビクリと身をすくめる。
「ウォルフレッド。乙女の一人言を盗み聞きするなんて趣味が悪いわ」
「失礼。たまたま通りかかったら聞こえてしまったものですから。それで、お嬢様の方はどうお考えなのですか?本気で殿下のお妃になりたいと思っていらっしゃるのですか?」
ウォルフレッドの問いに、ローゼリットはしばし無言になる。
「……分からないわ。物心ついた頃から決まっていたことだし、当たり前のこと過ぎて実感が無いのよ。正直、これで本当にいいのかと思うこともあるわ。だって私、殿下のこと、放っておけない男友達くらいにしか思えないのだもの」
「後悔なさいませんよう、よくよくお考えになった方がよろしいですよ。ご婚約と言っても、旦那様と国王陛下との間で交わされた他愛の無い口約束なのでしょう?……おや、その御婚約者様がお貴族の御令嬢に囲まれてらっしゃいますよ。いかがなさいます?」
「放っておいて良いわよ。下手に邪魔しようものなら恨まれてしまうわ。それにどうせ、どんなアプローチをしても殿下にはまるで通じないのだから」
「あぁ。殿下は今時珍しい純粋無垢なお方ですからねぇ」
レオニウスは貴族の令嬢たちに周りを取り囲まれ、何事か話しかけられている。令嬢たちは皆、熱を帯びた瞳でレオニウスを見つめているが、レオニウスは相変わらずのほほんとした様子で、令嬢たちの視線の意味も、そもそもなぜ話しかけられているのかさえ、まるで分かっていないようだった。
「……まぁ、見た目は申し分ないのよね。熱を上げる御令嬢がたくさんいるのも頷けるわ。あれで、もう少し頼りがいのある性格で、なおかつ一般常識をわきまえてくだされば、言うことはないのだけど」
まるで“絵物語から抜け出してきた王子様”そのままのレオニウスの容姿を遠目に眺めながら、ローゼリットはしみじみと呟く。
「それはいささか難しいご注文ですね。仮にも王族であらせられる殿下に我々一般庶民の常識を御理解いただくのは至難の業でしょうし、それにあの(・・)旦那様の御令嬢であるあなたの目から見て『頼りがいのある』男など、そうはいませんでしょう?」
「……そうなのよね。私って結局、男の方を見る目の基準が、うちのお父様なのよ。でも、あのお父様と肩を並べらえれる男の方なんて、そうそういるはずないものね……」
ぼんやりと呟くローゼリットは、気づいていなかった。すぐそばで彼女を見つめるウォルフレッドの瞳の色に。
もしこの時、彼女が少しでも振り向いて、彼が自分へ向ける眼差しに気づいていたなら、この先訪れる運命を、回避することができたかも知れないというのに……。

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秘密の恋は、胸の奥に隠したまま
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 初めから叶わないことが前提だなんて、ひどい恋もあったものだ。
もっとも、『初恋は叶わない』ものと、どうやら相場は決まっているらしいが。

そもそも恋する相手を自分で選べるなら、これまでにこんな苦労を味わうこともなかっただろうに。
人生なんて、本当、自分では(まま)ならない、厄介なものだ。


初めて会ったのは……俺がまだ小学生の時、か。
最初は確か、戸惑うばかりだった気がするな。家の中に見知らぬ女の人がいる違和感に。
初めて会って、いきなり数ヶ月後に家族になる、なんて言われても、実感も()かないし、どう受け止めていいのか分からなかったよ。

ただ、綺麗な人だとは思った。
顔かたちがどうこうじゃなくて、その真っ直ぐに伸びた髪の柔らかな(つや)だとか、クリーム色のこざっぱりしたスーツに包まれた、ピンとした背筋だとか、見ているだけで安心するような落ち着いた微笑みだとかが……。

 
何だか、今までに出会ったことのない、理想の大人の姿のように見えて。

ぎこちない態度の俺にも、あなたは優しくしてくれていたな。
『くん』付けで名前を呼んで、綺麗に微笑んでくれて。

嬉しくて、どこか気恥ずかしくて、どぎまぎしっ放しだったのを覚えている。
あなたの目に、当時の俺はどう見えていたんだろうな。


子どもだったあの頃は、まだ良かったな。
ただ戸惑うだけで済んでいたんだから。

 
一番苦しかったのは、やっぱり中学生になって、あなたへの想いを自覚してからだった気がする。
それが許されない想いだなんてこと、さすがに分かりきっていたし。

だけど、本当に一番怖かったのは、モラルでも世間の目でもなく、あなたにこの気持ちを知られることだった。

夫に対して何の不満も無い人妻が、俺みたいなガキにそういう目を向けてくれるはずなんてないことを、俺はちゃんと分かっていたし、何の期待も希望も抱いてはいなかった。

 
だから、あなたへの想いがバレて『気持ちの悪い子』と思われたり、距離を置かれたりすることだけを、ただひたすらに恐れていた。

あの頃は、正直、あなたと目を合わせることさえ恐かったよ。
 
町を出て遠くの学校を選んだのは、捨てようにも捨てられないあなたへの恋心を、物理的に距離を置くことで(あきら)めようと思ったからだった。
当たり前に近くの学校を受けると思っていた親父を説得するのには、かなり骨が折れたけど……。

でも俺の目論見(もくろみ)は、半分以上は成功していたと思う。
あなたの姿が目に入らない遠くの学校で、部活にも入って、毎日遅くまで必死に練習していれば、自然とあなたを想わずにいる時間も長くなっていった。

あなたへの想いは気の迷いだったのだと思い込もうとして、軽い気持ちで女子とつき合ってみたりもした。
だけど、たまに地元へ帰って、あなたと会うと、否応なしに思い知らされてしまうんだ。

俺が恋だと思い込もうとしていたアレは、恋なんかじゃない。
あなたと一緒にいる時と、“彼女”と一緒にいる時では、胸の(うず)きから何から、まるで違うってことを。


だけど、それでも、この想いを明かす気は、さらさら湧いては来なかった。
それをしても得るものなんか一つも無く、何もかもを失うだけだってのは、思い悩むまでもなく分かりきっていたことだから。

――ただ単に、想いを告げる勇気も、未練を断ち切る覚悟も無かっただけだろうと、そう言う人もいるかも知れない。
だけど俺は、これで良かったと思っているんだ。

きっと、叶えるだけが恋じゃない。
想いを伝えるだけが恋じゃない。
胸の奥に大事に隠して、誰にも触れさせずにひっそりと守り続ける……そんな恋があってもいいだろう?


あなたと出逢ってから、既に数十年もの時が過ぎ、俺は何とかこの想いに折り合いをつけた。
あなたに対する想いとは種類が少し違っても、共に人生を過ごしていきたいと思うような女性にも出逢えたよ。

……でも、それでも……やっぱり初恋ってヤツは“別格”なのかも知れない。


最近、あなたは歳を気にするようになった。
俺が帰省するたびに「もうすっかり、おばあちゃんでしょ?」なんて自嘲するように言って、小ジワの増えた顔でおっとりと笑う。

 
俺が「そんなことないですよ。ちっとも変わらないですよ」なんて言っても、あなたはお世辞だと思って信じてはくれない。
……俺は結構、本気で言っているのにな。

あなたのことを、そんなにカンタンに“おばあさん”だとか“おばさん”だとか思えるなら、俺も少しはラクになれたのに。

どれだけ歳をとろうと、容姿が変わろうと、俺の中であなたはずっと、出逢ったあの日の印象のまま。
今でもふとした仕草や微笑みに、綺麗だなんて思ってしまうんだ。

 
本当、初恋ってヤツは自分でも儘ならない、幾つになっても性懲りもなく胸をくすぐってくる厄介なシロモノだ。


だけど、俺はひょっとすると、そんな厄介な物思いを味わうために、わざわざあなたに会いに来ているのかも知れない。

実らなかった夢や、手に入らなかった宝物を遠くに眺めて愛しむように、叶わなかったからこそ、今なお綺麗なままで胸の奥底に灯り続けるこの恋を、眩しく、哀しく、甘酸っぱくもほろ苦く味わうために……。

 

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