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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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終末へと至る世界で逃避行中の少女に恋をした機械人形(エピローグ)
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JUGEMテーマ:SF/Sci-Fi/空想科学

 

・以前UPした「終末へと至る世界で逃避行中の少女に片想いした××××(プロローグ)」のエピローグです。

・とりあえずプロローグとエピローグだけで、間はありません。

・内容はこんな感じ。
     ↓ 
・「心を持つロボット」を目指して作られたロボットRB−3は、開発者には「結局心を持つには至らなかった」と見放され、博物館の案内役として払い下げられた。

・その博物館も閉鎖され、RB−3は誰も来ないフロアにぽつんと残されていた。

・そこに突如侵入者が…。侵入者は他人の感情を読み取る特殊能力を持つ少女・サラシェ。
(かつてはその能力により“神秘の占い姫”として活動していた。)

・彼女はその能力により、RB−3に心があることに気づく。

・サラシェはRB−3を仲間の所へ連れて行き、「ルビ」と名付けて旅に同行させることにする。

・世界は終末戦争の最中。戦争で生じた粉塵が厚い雲となって空を覆い、気温が低下し続けている。

・サラシェはその能力により軍に目をつけられ追われていた。

・サラシェの仲間は血の繋がった叔父・ユージンと、かつてサラシェの能力により心を救われた数人の男たち。

・旅の目的地は森の奥深くの山小屋。そこで身を潜める予定だったが、途中追っ手に見つかり、仲間たちは次々に銃弾に倒れていった。

・サラシェとユージンと、被弾したルビだけで何とか山小屋には辿り着いたが……→エピローグに続く。

 


 

『……こコは……どこなノでしょう……』
 僕は状況が何らつかめないまま高い木の天井を見上げた。口から出る音声は時々引き攣れたように音程を狂わせていた。
「おう。良かった。ちゃんと直ったみたいだな」
 ユージンが所々油で黒く汚れた顔を覗き込ませる。
『僕モ撃たれたノではないですカ?』
「音声がちとおかしいか。でも、記憶のバックアップはちゃんとしてるみたいだな」
 ユージンは真剣な表情で僕の瞳を覗き込んだ後、改めて質問に答えた。
「ああ。お前は撃たれたよ。で、俺が直してやったんだ。傷ついたのが替えのきくパーツばかりで助かったぞ」
『何故僕を直しタのですか?』
「二人きりじゃ、どうにも空気が重くてな。お前が直ればあいつも少しは元気になるだろうと思って……」
『二人きリとハ……』
「俺と、サラシェだ。とうとう俺達だけになっちまった」
 その言葉に、僕は弾かれたように身を起こした。
『サラシェは無事ですか?……追っ手は大丈夫だっタノですか!?』
「ああ。無事だ。……礼を言わなきゃならないな。サラシェが無事なのはお前のおかげだ。半信半疑だったが、俺も信じるよ。お前に心があるっていうのを」
 ユージンはどこか疲れたような顔で笑った。

 
 辺りを見回すと、そこはログハウス風の建物の中だった。床や家具は埃を被り、窓硝子は白く濁っている。もう久しく人の住んでいないような、廃屋。
『ここは、どこですか?サラしェはどこですか?』
「ここは俺達が行こうとしてた山小屋だよ。着いたんだ。……サラシェは……部屋に閉じこもってる。……慰めてやってくれないか?俺が行くと、あいつに俺の分の悲しみまで感じ取らせてしまうからな……」
ユージンは扉の一つを指し示して僕の背中を押した。

 僕はわずかに開いた扉を押し開けてそっと中に入る。部屋の中は薄暗く、物の輪郭くらいしか見えない。
『サラシェ……』
 呼びかけると、シルエットの一つがぴく、と動いた。
「……ルビ?」
 ひどくか細い、震えた声。躊躇うように、信じられないというように、サラシェは僕の名を呼んだ。
『はい。ルビは直りました。またサラシェとお話ができます』
「嘘……」
『嘘ではありません。よく見てミて下さイ』
 シルエットがそろそろと近づいてくる。居間から漏れる薄明かりにサラシェの顔が浮かび上がった。涙こそ流れていないものの、その顔は泣き出しそうに歪んでいた。
「ルビ……ルビ……っ!!」
 サラシェは僕の鋼鉄の体に縋りつくように抱きついた。
「皆……皆死んじゃった……!私のせいで……私が、いたから……!」
 サラシェの身体はひどく震えていた。何かをこらえるように。何かに耐えているように……。
『サラシェのせいではありません。皆、誘拐犯として手配されているとロカが言っていタではないですか』
「ロカ……」
 サラシェはその名を呟いてぐっと唇を噛みしめると、泣き笑いの顔で僕を見た。
「でも、私が無理矢理にでもあの人の所へ行って、捕まってれば皆あんな無茶はしなくて済んだはずなのに。……何もかも、私が悪いの。私が……一人で逃げるのが恐くて、皆に甘えて、巻き込んだから……っ!」
 サラシェのその表情は相変わらず僕の 心に痛かった ( 電脳を乱した ) 。笑って欲しい。けれど『笑ってくれ』と言ったところで無理をしたような歪んだ笑みしか返らないだろうことは予測できた。だから、僕は違う言葉を口にした。
『サラシェは何故泣かないのですか?人は悲しいことがあっタ時には泣くものです』
 サラシェの顔が強張った。凍りついたように僕を見つめ……長い沈黙の後に、やっと、小さな声でサラシェは答えを返した。
「……私が泣くと……皆が悲しむもの。ただでさえ暗い皆の心が、余計暗く、哀しくなるもの。……だから……だから、笑ってなきゃならないの。それくらいしか、私にはできないから……。皆の絶望を 一時 ( いっとき ) でも忘れさせて、あげたかった。少しでも、明るい気持ちにさせてあげたかった。……ううん、本当は私も、忘れていたかった。本当は、恐くて、恐くてたまらないってこと……!」
 その声は、だんだん泣き声じみたものに変わっていった。それでも、涙は零れない。
『泣いて下さい、サラシェ。泣くのを我慢しているサラシェの顔の方が僕には……悲しいです』
 電脳の中に生じたその反応が本当に悲しみと呼ばれるものであるのか、僕には分からなかった。それでも、僕はその言葉を口にした。ただ、サラシェに我慢をやめて欲しくて。
 サラシェは身を離してじっと僕の瞳を覗き込んで……くしゃくしゃの笑顔になった。その頬を涙が滑り落ちる。
「本当だ。悲しんでくれるんだね、ルビ。ありがとう……」
 嗚咽混じりに礼を言った後、サラシェは爆発したように泣き出した。その泣き声を聞きながら、僕はかつて博物館で聞いた子供の泣き声を思い出していた。
『思いきり泣ケば、きっとマた笑えるようになります』
 博物館で走って転んで泣き出した子供も、すぐにまた笑顔を取り戻していたから。また、笑顔を向けてもらえるように。僕は優しい言葉を紡ぎながら、サラシェの涙が収まるまでずっと胸を貸していた……。

 

「おい、二人とも、ちょっとこっちへ来てくれ」
 サラシェの嗚咽が収まった頃、ユージンが部屋の外から声を掛けてきた。サラシェは白目まで赤く染まった目をこすって立ち上がる。
 ユージンは下へと続く階段に足をかけていた。ここは一階だから地下室への階段ということになる。
『下に何かあるのですか?』
 階段を慎重に下りながら僕は問う。ログハウス風の一階部分と異なり地下室はコンクリート製の頑丈な倉庫になっていた。そして、そこには……。
「何、これ?」
「冷凍睡眠装置、だ」
 サラシェの問いにユージンは端的に答えを返す。
 冷凍睡眠装置――文字通り人間を眠らせたまま冷凍し、通常なら老いて死んでしまうような長い時間を生きさせるそれは、二年前に隣国の大学教授が理論を発表し、実際にそれに基づいて試作機が作られた。一週間、一ヶ月単位の動物実験には成功しているが、年単位の実験はまだ行われていない。……まだ完璧に成果が実証されたとは言い難いその試作機を、研究費を集めるために数台複製して売り出したところ、人一人一生遊んで暮らせるほどの高額な値にも関わらず完売した……というのが僕の記憶にある情報だ。実物を目にするのは僕も初めてだった。
「なんで、それがここにあるの!?」
「安心しろ。盗んだわけじゃない。買ったんだ。お前の占いで儲けた金でな」
 ユージンは淡々と言いながら装置を起動させていく。
「……何をする気……?」
「……例え、追っ手や戦火から逃れられたとしても……気温の低下から逃れることはできない。あの雲は、当分は晴れない。そして地球全域冬に閉ざされる。凍死を免れたとしても食糧不足で死ぬだろうな」
「……だから……何をする気なの?」
 ユージンは装置をいじる手を止め、感情の読めない顔でサラシェを見つめた。
「眠っていろ。世界が元に戻るまで、な」
「眠るって……この機械、一人用じゃないの!?」
 泣きじゃくった名残で赤く染まっていたサラシェの頬がすぅっと青ざめていく。
「そうだ。お前が生き残るんだ。……そのために俺達はここまで来たんだから」
「嫌ッ!!」
 サラシェは首を振って後ずさる。
「私一人で生き延びて……ユージンも……誰もいない世界でどうしろって言うの!?」
 くすり、とユージンは笑った。苦い笑みだった。
「そう言われると思っていたよ。だがな、これは皆の遺志でもあるんだ。……すまなかったな、サラシェ。考えてみれば当たり前だよな。恐くないわけ、ないよな。でも、お前、知らないだろう?お前の存在に俺達がどれだけ救われてきたか」
 頬に微笑を浮かべたまま、ユージンが一歩、また一歩とサラシェに歩み寄っていく。サラシェは大きく目を見開いて瞬きもせずに立ち尽くす。
「逃れられない死が差し迫ってくる世界で、お前だけがそれを忘れさせてくれた。お前を守って、ここへ送り届ける目的があるうちは、皆絶望の未来なんて考えずに済んでいたんだ。これからも……お前が数百年先の未来で笑っていてくれると思えば、俺はこの人生を悔いずに済む」
「嫌……ッ!こんな、こんな別れ方、やだよ!眠るなら、ユージンが!!」
「……俺はもうくたびれたんだよ。誰もいない未来で生き延びる気力なんて無いのさ」
「そんなの、私だって……!」
「……一人じゃないさ。この装置は人の手でしか解凍させられないんだ。だから、一人きりで目覚めることなんてない。お前なら知らない人間とだってまた新たな関係を作れるさ」
 ユージンは諭すようにそう言うと……ポケットから素早くハンカチを取り出した。何か薬品の染みこんだそのハンカチでサラシェの口元を覆う。
「…………ッ!!」
 サラシェは必死に抵抗した。しかし子供の細腕では大人の男に敵うはずもない。サラシェは朦朧とした瞳で僕を見つめ、手を伸ばした。助けを求めるように。くぐもった声が僕の名を呼ぼうとして……明確な言葉にもならず、そのままサラシェは意識を手放した。
 ユージンは力の抜けたサラシェの身体を軽々と抱え上げ、装置の中に横たえる。その寝顔を、ユージンは目に焼き付けるように見つめ続けた。
「ルビ、お前もよく見ておくといい。ロックをかければこれから少なくとも二百年は誰の手が触れてもサラシェは目覚めないからな」
 サラシェから目を離さぬままユージンは言う。僕はその言葉に従ってサラシェの寝顔を覗き込んだ。これが別れなのだと思うと、僕の 思考回路 ( こころ ) は複雑に揺れた。

 別れたくなどない。しかし、ここで眠りにつかせなければ、サラシェはやがて死んでしまうだろう。ほぼ百パーセントに近い確率で。
 サラシェが死んでしまう未来と、サラシェが生き延びて数百年後の世界で再び笑う未来。 電脳 ( あたま ) の中で 想像 ( シミュレート ) して、僕は自分を納得させた。サラシェの死を眼にする未来は、選べなかった。

 装置の冷凍処理を終え、そのまま一晩を小屋で過ごすとユージンは旅支度を始めた。
『何処へ行くのですカ?』
 僕の問いに、ユージンは笑う。
「さて。何処がいいかなぁ。とりあえず、こことは全然違う場所、だな。……俺の足取りがこの森で消えたとなれば、奴らこの辺を捜索しちまうだろ?」
 わざと明るくそう言って、ユージンは小屋の戸を開けた。僕は今までもそうしてきたように、ユージンの後について小屋の外に出る。屋外は、以前よりも更に気温が下がっていた。
 僕に背を向けたまま、ユージンがふっと空を仰ぐ。梢の間に覗く灰白色の空から、ひら、と白いものが舞い降りてきた。手のひらに受け止めて、 ( ユージン ) は苦笑する。
「――とうとう、降ってきやがったかァ……」
 呆れるように、どこか嬉しげにそう呟いて、男は僕を振り返った。
「ルビ、ついて来なくていいぞ。お前はここでサラシェを守っていてくれ。……機械のお前なら、あいつをずっと守っていてやれるだろう?」
 僕は答えられなかった。
「……そうか、さすがに『ずっと』なんて曖昧な期間の約束はできないよな。……できる限りでいいんだ。あいつを、守ってくれ」
『――はい』

 

 その『できる限り』が 一月 ( ひとつき ) にも満たないであろうことを、僕は口にしなかった。
 博物館を出て以来、一度も充電をしていない。……動力に限界があった。
 僕の返事に頷いて、男は背を向け歩き出した。僕は戸口に座り込んで、その背を見送った。その背が森の木々に遮られ、見えなくなっても。
 ……その後、男がどんな道をたどったのか、僕は知らない。

 僕は男を見送ったそのままの姿勢で山小屋の戸口に座り続けた。このまま小屋への入口を塞ぐ障害物になるつもりだった。……やがて動けなくなる僕にできるのはそれくらいしかなかったから……。
 一人戸口に座り込んで映すともなしにその ( レンズ ) に森の風景を映す。その眼には、男を見送った頃から降り出した雪がちらちらと舞い踊っていた。

 
 ……そして、今も、山小屋の戸口に僕は座る。

 雪は、降り止むことなく積もっていく。うっすらと地面が白く雪を被り、それがどんどん厚くなり、やがて地面が見えなくなり……それでも、止まない。

 雪は僕の身体をも覆っていく。やがて、僕の身体は胸まで雪に埋もれた。雪の重みで、もはや手足は動かせない。体の中身も、今にも凍てついて停止してしまいそうだった。体から発せられる熱がかろうじてそれを防いでいるが、動力が切れればそれも失われ、僕は雪の中で凍結するだろう。

 
 僕は扉にもたれたまま、ずっと降り続く雪を見ていた。――もう、動力があとわずかしか保たないことは分かっていた。
雪は降り積む。森で流れた血の痕も、男の遺していった足跡も、サラシェの眠る廃屋も、木々も、僕も――みんな埋めて。まるで世界を閉ざすかのように。
 僕は眼にそれを映したまま……たったひとつだけ、最後の動作を行う。残り少ない動力を使って、たったひとつだけ出来ること……。
 僕は、僕の中に記憶されたサラシェの笑顔を電脳の中に再生させた。僕に向けられた彼女の笑顔……。本当の彼女は今、僕の後ろの廃屋の中に眠っている。しかし彼女がその目を開けて再び微笑むのは数百年後の未来だ。――数百年の眠りの後、彼女は目覚める。全ての終わった未来に――。

 

 雪は、真っ白に…、森を、…世界を眠らせていく。だけど……今は冷たく森を埋める雪も……、数百年後には、きっと……。

 僕は…だんだんと…処理速度の遅くなっていく…電脳の中で、……途切れ途切れに君の笑顔を思い出しながら…………思う……。

  

 きっと……君が…目覚めるころには……

この…雪も………溶ける……だろ――――――……―――――――――――――――――――――――――…―――…………。
 

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