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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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若殿と幼馴染と鎮守神の和風ファンタジー・ラブコメ小説
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「時。お前に伝えねばならぬことがある」
 いつになく真面目な父の声に、時子は居住まいを正す。
「如何なるお話でございましょうか、父上」
「実はな、お前に縁談が持ち上がっておる」
 時子はわずかに眉を上げたが平静な態度を崩さなかった。時子の家は代々、国の家老職を務める家柄。いつかはこの話が出ることを、物心ついた頃から覚悟していた。
「それで、相手はどちらの家の御方なのでしょう?」
「それが、な……」
 父は珍しくひどく言いづらそうに言い淀む。娘の顔色を窺うように幾度も言いかけては止め、言いかけては止めを繰り返した後、ようやく意を決したように口を開く。
「我が国の若殿様なのだ」
 その瞬間、時子は固まった。父の言葉を頭がまるで受け付けてくれなかった。
 たっぷりの間を置いてやっと出てきた言葉は、政略のための結婚を幼い頃から受け入れていた名家の娘とは到底思えぬ悲鳴じみた叫びだった。
「じょおぉだんじゃありませんよっ!」
「……うむ。私も、冗談であれば良かったと、そう思うておるぞ」
「何故です!?何故私が、あの大うつ……若殿と夫婦にならねばならぬのですか!?」
「幼き頃より若殿の御側仕えを務めてきたお前であれば、あの若殿をお支えし、この国を良き方向へ導いていけるであろうという、殿のお考えでな……」
「要は若の御守をこの先もずっと私に押し付けようということですよね!?」
「いや、まぁ、その……な」
「私がこの十年以上、若の御側でどれほど大変な目に遭ってきたか、分かった上で仰っているのですか!?もうこれ以上は御免です!それに、今さら若とだなんて……あの若が御承知するはずがありません」
「……いや、若殿は存外乗り気でいらっしゃったぞ。『それはなかなか面白いな』と仰って」
 その言葉に、時子は開いた口がふさがらなかった。震える拳を握りしめ、時子はすっくと立ち上がる。
「私、今からお城に上がります。若に真意を伺って参ります!」

 

 

 時子が鬼の形相で“真意”を問い質すと、次期国主であるはずの若殿は、城下の子どもとほとんど変わらない汚れや破れ目だらけの着物でけらけらと笑った。
「ああ、その話な。聞いたぞ。あれは笑えるな。おぬし、そういえば女子であったのだなぁ。親父殿から話を聞くまですっかり忘れておったわ」
「忘れないでください!と言うより、意味が分かりませんから!若と初めに会ったときから私はちゃんと女だったでしょう!?」
「確かに昔は一応ちゃんと女子に見えていたがな。今はぱっと見どちらか分からぬぞ。おぬし何ゆえそのように男前に育ってしまったのだ?」
 目の前の時子を頭から膝まで一通り眺め、若殿は不思議そうに小首を傾げる。
「……誰のせいでこうなったと思ってるんです」
 時子は苦虫を噛み潰したような顔でつぶやく。
 若殿の言う通り、時子の姿は一見、女には見えないものだった。髪は頭の高い所で一つに束ねて馬の尾のように長く垂らし、着物も女物ではなく、名家の若君が着るようなすっきりとした袴姿だ。知らぬ者が今の時子と若殿を見たならば、まず間違いなく時子の方をこの国の“若殿”だと思うだろう。
 時子がこのような姿をしているのは、ひらひらした女物の着物では、到底この若殿の側に付いていられないため。そしてさらに言うなら、本来であれば若殿と歳の近い少年が務めるはずの側仕えを時子が女の身で務めているのは、この国で時子以外にこの若殿についていける者がいなかったためである。
「それで、私との縁組の件は、若の方からきっちりお断りいただけるのですよね?」
「断る?何ゆえだ?」
「何ゆえって、ありえないでしょう。先ほども仰っていたように、若、私のことを女子として見ていないではありませんか」
「わしはべつに構わぬぞ。嫁を娶るならば、わしに理解ある女子と昔から決めておったし、おぬしほどわしのことを理解しておる女子はおらぬだろうからな」
 特に何も考えていなさそうな顔であっけらかんと告げられたその言葉に、時子は憤怒した。
「『べつに構わない』なんていう適当な理由で嫁にされてたまるかぁあ〜っ!」
 

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