管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。
<< March 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
JUGEMテーマ:<オリジナル小説>
・片恋のシャーラ(プロトタイプ版)の第28弾です(詳しい説明は第1弾に書いてあります)。
他のページはコチラ→「片恋のシャーラ(プロトタイプ版)1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/29/30/31/32(終)」
(下部にある「カテゴリー別・小説一覧」からも他ページに跳べます。※他の小説も混じった「もくじ」になっています。)
気づけば、シャーラは闇の中に漂っていた。
(ここは……!?私、まさか、本当に死んでしまったの!?)
シャーラは青ざめて、辺りを見渡す。
シャーラの両手の中には、未だ光の宝玉が握られていた。
だが、今までと違うのは、その宝玉から
その光は、真っ直ぐ前方を指している。そして、その光の先にいるのは……。
「……カウリオ?」
名を
そこは、よく手入れされた立派な庭園。白い花をいっぱいにつけた梨の木の下に、一人の少女が立っている。
その髪は、少女の頭上で風に揺れる花と、同じ色。瞳は、どこまでも深く澄んだ蒼。
まだ幼いその少女は、夢のように美しかった。
まるで、そこに咲く白い花が人の姿をとって現れたのかと疑うほどに。
『……あなた、だぁれ?どうして泣いているの?』
幼い少女の声に答えるのは、涙に震える幼い少年の声。
『きみは、だれ?花の精?』
その瞬間、景色が揺らいだ。まるでロウソクの火を吹き消したかのように、世界が再び闇に包まれる。
「……やめろ。
カウリオは、今までにない
シャーラははっと気づいた。
(まさか……さっきの光景は、カウリオの記憶!?ここは、カウリオの精神世界なの?)
愕然として、自分の手元に目を移せば、宝玉から伸びる白金の光は何かの形をとっている。
それは――竜。白金の身体を持つ竜が、カウリオの身に
「やめろ!奪うな!俺の心はセラフィーヌのものだ!」
カウリオが叫んだ直後、白金の竜が彼の肉を喰い千切った。
その身から血が噴き出し、辺り一面を染める。だが、その色は赤ではなかった。カラフルな色の洪水……。
それは、まるで光を灯すかのように、闇の世界に色をつける。宙に
『ねぇリオ。この花の名前、何と言うか知っている?』
景色は再び同じ庭。だが、季節も年も、先ほど見たものとは違うらしい。
少女はだいぶ大人びて、初夏の装いに身を包んでいた。
そして、目の前で風に揺れているのも、先ほどとは違う花。ひどく見覚えのある、その花は……。
『この花、貴婦人の耳飾りって呼ばれているのですって。ほら、見て。こうすると、本当に耳飾りみたいでしょう?』
言って、少女は摘んだ花を自分の耳たぶに添えてみせる。
シャーラは、かつてのカウリオの言葉を思い出していた。
……一緒の家に暮らしていた従妹が花に詳しくて、私もいつの間にか覚えてしまっていたのですよ。
『花の名前なんか覚えたって、何の意味があるんだ。花なんか食えるわけでもないし、飾って眺める以外、何の役にも立たないじゃないか』
『まあ!意地悪ね。リオったら』
怒ったように頬を膨らませてみせる少女。
だがシャーラは少年が――カウリオが本当は、彼女に
記憶は情景だけでなく、その時彼が覚えた感情までをも、シャーラに伝えてきていたから……。
再び、景色が掻き消える。カウリオは変わらず、竜に身を
「やめろ。奪うな!忘れさせないでくれ!俺の想いを……!」
その叫びに、シャーラは悟った。
竜が喰い千切っているのは、カウリオの
記憶の中にある想いさえも奪い取り、竜は彼の心の全てを支配しようとしている。
あの竜は――光の宝玉の力が具現化したものなのだ。
再び、竜がカウリオの肉を喰い千切る。彼の記憶が洪水のように押し寄せて来て、シャーラは
めまぐるしく現れては消える光景。その全てに、カウリオのセラフィーヌに対する想いが溢れていた。
(……駄目。やめて。これを奪ってはいけない。こんなに深くセラ姉さまのことを想っているのに……それを、竜神の力で無理矢理に奪い取るなんて、そんなことが許されるはずがない!)
「もうやめて!」
シャーラは光の宝玉を強く握り、声を上げた。
だが、白金の竜は止まらない。新たな血潮が、暗闇の世界にまたカウリオの記憶を描き出す。
・「ブラックホール・プリンセス」のスピンオフとして考えていた物語ですが、本編である「ブラックホール・プリンセス」の世界設定が変わってしまったため、そのままの形では書けなくなってしまいました(なので「プロトタイプ版」と銘打っています)。
・プロトタイプから設定・固有名詞を練り直した「ブラッシュアップ版」は「愛され聖女は片恋を厭う」というタイトルで「野いちご」さんおよび「ベリーズカフェ」さんにて完結済です。
野いちご版はコチラ→「愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)」
ベリーズカフェ版はコチラ→「愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)」
・以前このブログにUPした「暗黒聖女と年下騎士」と同じ世界観になっています。
・『貴婦人の耳飾り(レディース・イヤードロップス)』ことフューシャの花は、「片恋のシャーラ7」でも出て来ています。実在する花ですがフューシャより「フクシア」という呼び方の方が有名かも知れません。
・ちなみに『貴婦人の耳飾り(レディース・イヤードロップス)=フューシャの花』は、サイトの方に載せている「夢の降る島(の第1話・夢見の島の眠れる女神)」の「夢見の娘」の衣装としても登場させています。
(ちなみに「夢の降る島」は4年連続で専門学校の授業課題に使っていただいています。→関連記事(別ブログ)今年も専門学校の授業課題で「夢の降る島」が使われました!(2022)1)