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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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踊り場の踊り子に捧げるモノローグ
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JUGEMテーマ:自作小説

 

 マンガやアニメだとよくある、生徒が出入り自由な屋上って、現実の学校でどのくらいあるんだろう?
実際、ウチの学校はカギがかかってて出られないし。

 
――だからこそ、屋上へ通じるこの階段は、普段誰にも使われなくて、ちょうどここの掃除担当だった君の、秘密の踊り場だったわけだけど。
 
最初にそれを見た時は、正直面食らったよ。
文字通り踊り場で踊っている人間がいるなんて。

 
だけど君のその踊りは、どんなプリマのバレエより、どんなメダリストのフィギュアスケートより、ずっとずっと美しく見えて‥‥そのことにも驚いたんだ。
それが完全独学の、見よう見真似の踊りだと知った時には、さらにその数倍驚いたけど……。
 
僕に見られていると気づいた時の、君の慌てふためき(テンパリ)ようは、すごかったね。

 
思わず笑いをこらえるのに必死になってしまったけど……今思えば、あの時僕は、ただ単純に可笑しがっていただけじゃなく、君のその慌てぶりを『可愛い』なんて思っていた気がする。

 
だって、それから君のことが頭から離れなくなってしまったんだから。
 
近づいてみると、君は思っていた以上に不思議な子だった。
ただ無邪気なだけかと思えば、時々恐ろしいくらいシビアに現実を見つめている。

 
まるで、この世界のことを何も知らない代わりに常識にも何ものにも縛られていなかった幼い頃の心のまま、身体だけが成長したような――そんな人間に見えたよ。

 
同じものを見ていても、僕と君とでは感じることが全然違っていて……そんな君の目に映る世界を――きっと僕が見ているより、ずっときらきらして綺麗に見えているであろう世界を、僕も知りたいと思ったんだ。
 
だけどこの世界は、君のような異質な個性を、そう易々と受け入れてくれる所じゃなかった。
同年代の女子の中でちょっと“浮いていた”君は、クラスの女子のリーダー格に目をつけられて、(いじ)めのターゲットにされてしまった。
 
小中学校交流会での朗読劇では“シンデレラのイジワルな継母や義姉”の役を皆嫌がっていたくせに、現実ではびっくりするほどあっさりと、自ら虐め役に回ってみせる彼女たちの思考回路が、僕にはさっぱり理解できない。

 
しかも彼女たちのやり口は随分と陰湿で巧妙で……僕は笑って誤魔化す君がそんな目に遭っていただなんて、しばらく全く気づけずにいたんだ。
 
やっと気づいてからも、僕は君をロクに助けることもできやしなかった。

 
僕が気づいて口出しすれば、彼女たちはバツが悪そうにその時だけは退いていったけど……結局僕の目の届かない所で虐めは続いていた。それどころか、“男子に庇ってもらえる女子”は余計に嫉妬を買って、ますます虐めがエスカレートするばかりだって……君から聞いて、僕は愕然としたよ。
 
僕は、どうすれば君を助けられたんだろう。

 
「逆効果にしかならないから、もう余計なことしないで」と言われて、僕は君に拒絶されたように感じてしまった。
僕が君のためにしてきたこと全てを、その君自身に全否定されたような気がして……。

 
僕はその心の痛みに耐えかねて、思わず君から距離をとってしまった。
……情けないヤツだと、本当、自分でもそう思うよ。
 
君が学校へ来なくなった時は、正直ホッとしてしまったのも事実だ。
君が傷つく姿をこれ以上見なくて済むと思ったのと、君と顔を合わせるのが恐かったのと、君を救えない無力な自分にこれ以上絶望したくなかったのと……今思えば、ただ現実逃避していただけなのかも知れないけど。
 
だけど、君が教室にいない日が二日続き、三日続き……数えるのも忘れてしまうほど増えていくにつれ、何だか喉が渇いてたまらないような、もどかしいほどに何かに飢えている自分に気づいたよ。

 
こんなどうにもならない状況になって、ようやく僕は気づいたんだ。
僕にとって君が、どれほどの存在なのかということに。
 
きっと今この瞬間も、一番辛いのは僕じゃなくて君の方だ。
未だに君を救う方法一つ見つけられない僕に、嘆く資格なんて、きっと無い。

 
だけど、どうしようもなく思ってしまうんだ。君に会いたい、と。
君に学校で嫌な目に遭って欲しくないっていう、その気持ちも紛れもなく真実なのに。

 
矛盾だらけで思考の逃げ場がどこにも無い、八方塞がりのこの想いを、僕は今も捨てることも投げ出すこともできずに抱え込み続けている。
 
今日もまた、気づけばこの階段を上っている。
ここに君がいないことなんて、分かりきっているのに。

 
君のいないこの踊り場は、物音ひとつ無く静まりかえっていて、まるでこの空間だけ、学校という世界から切り離されてしまっているみたいだ。

 
だからかな。教室に来なくなった君とも、ここでなら会えるような、そんな気がしてしまうのは。
……ばからしい妄想だと、自分でも分かってはいるのだけど。
 
思えばおかしな話なのかも知れないな。

 
病気を克服する方法なら、数えきれないほどの人間が研究して多くの成果を出しているのに、虐めを根絶する方法なんて、そもそも真面目に研究している人間がいるのかどうかすら知らない。
多くの人間が苦しんで、時には命を落とす人さえいるって所は、病気と何も変わらないのにね。

 
大きな事件が起きた時だけ大騒ぎして、でも使えそうな解決策は何一つ出ないまま、そのうちに忘れていく。
もっとも僕だって、君のことがなかったら今ほど真剣に考えていたとは思えないから、赤の他人の無関心さを咎められる義理なんて無いんだろうけど……。
 
今日も僕は独りここで君をこの場所に取り戻す方法を探している。

 
考えても考えても、答えどころか糸口ひとつ見つけられなくても。
あの時守れなかった君への償いのように、ただ君だけのためにこの頭を動かしている。
そうしているとそのうちに、あの日ここで踊っていた君の幻が、踊り場の風景に重なって浮かんでくるような気がするんだ。
 
……もう、チャイムが鳴ってる。そろそろ戻らなくては。

 
重い足取りで階段を下り、途中まで来たところで、僕はいつも足を止める。
そうしていつも、振り返ってしまうんだ。
何度見たところで君がいるはずもない踊り場を、それでもまた、振り返ってしまう。
 
明日もたぶん、君は来ないだろう。
そして僕はまた、ここへ来てしまうのだろう。

 
君にとっては辛いこの学校(ばしょ)で、『会いたい』なんて無責任に願う(・・)ことはできない。
ただ僕は、待って(・・・)いる。

 
明けない夜が無いように、覚めない悪夢が無いように、いつかこの状況が破られる日を。

 君とまた当たり前に会える日を。

 
奇跡を夢見る子どものように、無力に、他力本願に、ただひたすら待ち続けているんだ。

 

記事続き

 


 

・この現代恋愛SSシリーズは、いつもはこのSSブログに先に載せてからピクシブ小説さんに投稿するのですが、パソコンが故障したため、こちらには載せず、まずはタブレットからピクシブ小説さんに先行公開しました。

 

・タブレットだと打てない文字もあったりするので、pixiv小説版ではいつもとビミョウに文章表記が異なります。
(…(3点リーダー)と‥(2点リーダー)の違いだとか…。)

 

・後で修正はしましたが、タブレットからだと全角スペースが打てないのが特に参りました。
(自動で半角スペースになってしまうので、スペースと認識されなくて文章の頭が詰まってしまったり…。)

 

・「いじめ」という言葉は、ひらがなだと何となく軽いイメージがして個人的にはビミョウに嫌いです…。
 漢字で書くと「虐め」「苛め」で、すごく酷いことだというイメージになる気がするのですが…。
(何せ「虐待」の「虐」の字だったり、「苛酷」「苛む」の「苛」だったりしますし…。)
 ただ、漢字にしてしまうと画数が多くて難しいので、子どもが書けなくなってしまうという問題が発生してしまうのかも知れませんが…。
(本来は人命に関わるほどに重い問題が、文字イメージのせいで“子ども同士のいさかい”“子どもの問題”みたいな受け止められ方をしてしまうのだとしたら、それはイヤだなぁと思うのです…。)

 

・このシリーズは一応全てフィクションですが“この世界のどこかで実際に起こっていても不思議ではないシチュエーション”を描きたい、と思いながら書いています。

 

・「虐めをする人は、なぜ自ら世界の嫌われ役に回るのだろう?」という疑問については、最近は、虐めをする側に“虐めているという自覚”や“悪意の自覚”あるいは“虐めをすることへの羞恥心”が無いことが問題なのかな…?とも思っています。
 もしかしたら道徳を教科化し、モラルを“知識”として育てるよりも、情緒・情操を育てた方が良いのかも…とか思ったりもします。

 

・虐めについて研究する人間は存在するようですが、それが今現実に苦しんでいる子どもの元に、実際に役立つ形で“降りて”いっているという実感は、少なくとも学生当時の自分は持っていませんでした。

 

・虐めの対策に関しては、自治体や公共機関も相談窓口を設けたりと、いろいろ取り組んでいるようです。
 最近では被害者本人がお年玉で探偵(興信所)を雇って、虐めの実態を明らかにする、ということもあるようですね(←以前見たTV番組で得た情報)。

 

・ちなみに、参考までに、自分が過去に実際に行って効果のあった対策は、別ブログにもまとめてありますが(「虐め(いじめ)対処の実例〜小学生の時〜」)自分が実際にされたことを、担任の先生に提出する自習用ノートに詳細にまとめ(図解入り)、いかにも「ノートを提出しただけです」という感じでさらっと出した、というものです。

 

 

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