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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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初恋が実らない理由
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JUGEMテーマ:小話

 

 俺って、 ( ) い彼氏じゃなかったよな。 
告白もデートの約束も、ほとんど君に任せきりで。

 
だから、こういう結末になったのは、ごく自然で当たり前で、仕方のないことなんだろうけど……。


君が何で俺を好きになってくれたのか、実は未だによく分からないんだ。

 
俺は口も上手くないし、面白味のある人間でもない。

 
クラスの人気者たちを、教室の隅からそっと羨ましがってる――そんな人間だって自覚していたからね。

 
正直、俺のことを好きになってくれる女子なんて、いないんじゃないかとさえ思っていたよ。

 
だから、君に『好き』だと言われた時は半信半疑で、『ひょっとして罰ゲームかドッキリなんじゃ…?』と疑ったりもした。

 
だけど、君の緊張に震える声や、不安そうな目が、コレを現実だと訴えかけてきて……すごく、ドキドキしたのを覚えている。


嬉しくて、そのまま流されるように君とつき合いだしたけど……思えば俺は、誰かとつき合う覚悟なんて、全然できていなかったんだ。

 

初めての彼女という存在に舞い上がった俺は、恋愛漫画の ひな形 ( テンプレ ) をなぞるように“恋人らしい”シチュエーションを実行するのに夢中で、君が何を望んでいるのかなんて、考えることもできなかった。


俺のキャラにも合わなければ君のシュミにも合っていないデート・コースはものの見事に空回って、互いをギクシャクさせるばかりだったよな。

 
おまけに俺は、彼氏らしくカッコつけられない自分に勝手に凹んでテンション下がりまくりで、一生懸命会話を続けようとしてくれた君の話にも半分上の空だった。

 
俺は“楽しい”どころじゃなかったけど、きっと君は俺以上に、あのデートを楽しめなかっただろうね。

 
……そんな風に、君の気持ちに思いを馳せられるようになったのさえ、実は今頃になって、やっとのことなんだ。


あの頃の俺は何となく、人間関係っていうのは一度形ができ上がれば、よほどのことがない限り、ずっとそのまま続いていくものだと思っていた。

 
だけど、違うんだな。

 
どんなに立派に形を整えてコンクリートで岸を固めても、流れる水が無くなれば、そこが川でなくなるように、日々の会話だとか、デートの回数だとか、そういうものが少なくなればなるほど、関係は曖昧(あいまい)になっていく。


気づいていたのに――いや、途中でやっと気づけたのに、俺はそれでも動けなかった。

 
君との心の距離が離れていくほどに、何を言ったらいいのか分からなくなった。

 
君の反応が恐くて、自分から動くことができなかった。
――そんな不安や恐さなんて、きっと君も同じだっただろうに。


恋愛ってやつは、告白したりされたりして彼氏彼女になれれば、それで終わりのハッピーエンドじゃないんだな。

 
そこからつき合いを持続させていくには、それ相応の労力が要る。
俺はその労力を、きっと君だけに負わせていたんだ。

 
告白が君からだったことを理由にして。自分のコミュ力が低いことを言い訳にして――。

 
そうして君が一人背負ったソレに押しつぶされて、疲れ果てて、俺とのつき合いをやめたくなったのも、当然の結果だったんだろうな。


あの日、あの時――告白してきたのが君じゃなかったとしても、俺はつき合っていたかも知れない。

 
あの時、あの瞬間まで、俺にとっての君はそれくらいの存在でしかなかった。でも、今は違う。

 
俺のことを初めて好きになってくれたのは、君だった。

 
家族でもない異性と、あんなに長く、いろいろなことを話したのは、君が初めてだった。

 
初めてデートしたのも、初めて、恋人として手を繋いだのも……。

 
君の手に触れる、たったそれだけのことに、何度も何度も飽きるんじゃないかってくらいに躊躇(ためら)って、緊張して、東京タワーからバンジーするくらいの勇気が必要だったんだ。

 
あんなに心臓が震えたのも、甘酸っぱいような、くすぐったいような不思議な気持ちになったのも、全部、君が初めてだったんだ。


君と言葉を交わすたび、君とふれ合うたび、どんどん君が特別な人間になっていった。

 
クラスの他の女子たちとは明らかに違う、他の誰にも代えられない、俺にとってのたった一人……そんな存在がいるってだけで、何だか俺の人生自体が、今までとはまるで違って思えたんだ。


それなのに……俺は結局、この恋を守れなかった。


「初恋は実らない」ってジンクスの理由、今の俺には分かる気がするよ。
たぶん初めて恋をする頃には、皆まだいろいろ未熟過ぎて、その恋を実が結ばれるまで守ることができないんだ。


俺の初恋はこれまで、小学2年の時のことだと思ってきたけど、君を知った今となっては、あれは恋とも呼べない淡い憧れでしかなかったのだと思っている。

 
俺にとっての本当の初恋は、きっと君だ。

 
そしてこの初恋は、やっぱり実を結ぶことなく終わろうとしている。


ごめんな。サヨナラを切り出すのまで、君任せにしてしまった。
俺からは、どうしても言えなかったから。

ごめんな。結局俺はきっと、君を傷つけるばかりだった。

 
「もっと 早くに ( ・・・ ) 出逢えていたら…」って言葉がよくあるけど、俺は「もっと 遅くに ( ・・・ ) 君と逢えていたら」と思うよ。

 
こんなにコミュニケーション能力も精神も未熟な俺じゃなかったら……もっと人生経験を積んで、今よりもっと上手く人とつき合えるようになった俺だったら、君との恋を途中で散らせることもなく、ちゃんと成就できたかも知れないのに。


……サヨナラ。引き留めようとは思ってないよ。

 
引き留めたところで、俺はすぐには変われない。
きっとまだ当分は、君を悲しませる俺のままだ。

……なんて、物分かりの良いフリをしたって、本当は、引き留めて、拒絶されて、傷つくのが恐いだけなのかも知れないけど。


ごめんな。最後なのに、気の利いた言葉ひとつ、思いつけない。
辛そうな君を慰める言葉ひとつ、出て来ない。

 
人間 ( ひと ) はどれだけの歳月を重ねれば――どれほどの経験を積めば、相手を傷つけず、誰も悲しませずに恋ができるんだろう。


君は、信じてくれないかも知れない。
「私だけが、ただ一方的に好きだった」と思っているかも知れない。

 
だけど、俺はちゃんと好きだったよ。君のことが。
人生で、初めての恋だった。

 
……なんて、今さら言うこともできやしないけど。


きっと、俺は君をすぐには忘れられない。
君の新たな幸せを素直に願えるほど大人でもない。

 
だから今はただ、この恋が俺にとっても、君にとっても、ただ辛いだけの心のキズではなくなるように……いつか、ほろ苦く、懐かしく振り返れるような、そんな思い出に変わってくれればいいと、そんな風に祈っているんだ。

記事続き

 


 

 
・「純恋結晶(まるで純度の高い恋の結晶のような…)」シリーズの第8弾。

・今回は失恋モノです。

・「純恋結晶」シリーズは様々な恋愛シーンオムニバスで切り取っていくというコンセプトなので、恋の終わりも当然あります。

・ただ“純恋”なので、あまりドロドロしたものにならないよう気をつけましたが…どうでしょう。

・そもそも津籠作品には習作的実験的なものが多いのですが、「純恋結晶」は特にその傾向が強いです。

・男性視点と女性視点それぞれの一人称(あるいは二人称?)の練習というのもありますが、英語のIやYouにあたる部分の名称も、できるだけ様々なバリエーションを試しています。

・今回は「俺→君」ですね。

・「純恋結晶」もくじを見ていただくとその辺りも書いてあるのですが、今までに「私→あなた」「俺→あんた」「僕→君」「私→君」「俺→お前」「私→あんた」という組み合わせを試しています。

・まだ試していない組み合わせでいくと女性視点の「私→お前」が一番の難題ですね…。恋愛モノだとシチュエーションや関係性が思いつきません…。そういう性格の女子ということにするか、いっそのことファンタジー物ならできるかも知れませんが…。

・このシリーズは一応、ピクシブ小説さんで選べる既存の表紙画像をフルコンプするまでは続けるつもりでいるのですが、フルコンプ後の予定は未定ですね…。
(絵柄のついた表紙は残り1種類で、あとは無地のカラー表紙が数種類あるだけという状態ですし…。もう1周はなかなかキツイかと思うので…。)

・現在の「純恋結晶」は現代恋愛モノ・オンリーなので、スピンオフ的扱いで「純恋結晶ヒストリカル」とか「純恋結晶ファンタジー」あるいは恋愛要素ナシの青春モノなどもアリかも知れないとは思っていますが、果たして需要があるのかどうか…。

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