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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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この気持ちを恋と呼んでも良いのなら、
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JUGEMテーマ:恋愛小説

 

 遠く離れた今になって、君のことばかり思い出すよ。
 もしかしてあれは、恋だったんじゃないか……なんて。
 
 “今更”な話かも知れないね。
 あの頃に、ちゃんと気づけていたら良かったのにね。
 
 この街は思っていた通り、圧倒的に人工物が多いよ。
 あの町にいた頃は、東西南北どこを向いても視界に山が映っていたのに、コンクリートとアスファルトに囲まれたこの街では、周りにどんな山や川があるのか、ここがどんな場所なのかすら、よく分からない。
  
 特に、地下鉄から繋がる迷路みたいな地下通路は最悪だよ。
 案内表示通りに進んでいるはずなのに、気づけば全然別の場所に出ていたりするんだもの。

 
 もう東京へ来て何ヶ月も経つのに、未だに、いつも使っているルート以外の道へは、恐くて入れない。
 最初のうちは何度もここで迷って遅刻しそうになったもの。

 
 一度なんて、あわてて走っていたら、通路で派手に転んじゃったこともあるよ。

 
 鞄の中身が床にばらばらこぼれて、履き慣れてないパンプスが片足だけすっぽ抜けて飛んで行っちゃった。
 人目を気にして、ひとりで焦って散らばったものを拾いながら……何だかちょっぴり泣きたくなったよ。

 
 ばかだよね。上京するって決めたのは、私なのに。
 
 君と居たあの町が、嫌いだったわけじゃないよ。
 むしろ、離れ難いくらいに好きだった。
 
 何でもない田んぼの中の道も、遮るもののない広い空も、その縁を囲むように青いグラデーションで重なった山々も。
  
 でも、それでも、東京の街や、そこでの暮らしを一生知ることなく、あの町の中だけで終わっていくのは、嫌だったんだ。
 自分の可能性を試してみたい――なんて、今にして思えば、世間知らずの無謀な思い上がりだったのかも知れないけど。
  
 町を離れる日、始発なのに見送ってくれたよね。
 まだ外は暗くて、ホームには私たち以外誰もいなくて、白い息を吐きながら、自販機で買ったホット・ミルクティーで指をあたためていたっけ。
  
 あの時、君は何かを言おうとして……でもたぶん、本当に言いたいことは口にしないまま、笑って「頑張れよ」って言ってくれたよね。
  
 私、気づいてたけど、訊けなかった。
 君のことはずっと、一番仲のいい男友達だと思っていたから。
 
 小学校の頃から一緒で、小さい頃にはヤンチャな遊びもいっぱいした、気心の知れた親友。
 恋人とかじゃないからこそ、気楽に何でも言えて、いつもそばにいて安心した。
  
 ……本当は、君が時々何かを言いたげに私を見ていること、知ってたよ。
 でも、気のせいだって自分に言い聞かせてた。
 
 君が私を好きかも知れない、なんて――そんなの自惚れだって。
 特に美人でも何でもない私が、誰かに恋されてるだなんて、そんなのただの勘違いだって。
 
 ……でも、本当は恐かったのかも知れない。
 
 もし君が告白してきたとしても、私はどう答えればいいのか分からなかったから。 
 君のことを恋人として好きになれるかどうかなんて、分からなかったから。
 
 関係が、変にこじれてしまうのが、恐かった。
  
 なのに、あの時聞けなかった君の言葉が……君が呑み込んで隠してしまった本音が、今でも胸にモヤモヤとくすぶっているんだ。
  
 だからかな。
 遠く離れた今になって、君のことばかり考えてしまうんだ。
 もしかしたら、これは恋なんじゃないか……なんて。
  
 面白いものを見つけた時、君にも教えてあげたいのに、スマホのメッセージだけじゃ上手く伝えられなくて、もどかしくなる。
 
 辛いことがあった時、『今となりに君がいてくれたらいいのにな』って、思ってしまう。
 通路で転んだ時だって、そばに君がいてくれたなら、きっと笑い話に変えられたのに。
  
 この気持ちは、恋なのかな。
 それとも単なる甘えとか、ホーム・シックとかなのかな。
 自分でも、よく分からない。
  
 ただ、心が重く沈んだ時、空を見上げて思うんだ。
 今もあの町で、縁をぐるっと山に切り取られた凸凹の空の下にいる君のことを。
 
 私がこの街で必死に生きてるように、君も今頃あの町で、君の選んだ道を頑張っているのかなって。
 そんな君の姿を思うだけで、心がふわりと軽くなるんだ。
 私も頑張ろうって、そう思えるんだ。
  
 この、パステルをぼかしたみたいに淡くて、ふわふわと優しいばかりの気持ちが、恋なのかどうかは分からない。
 でも、恋だったらいいのになって、思うよ。
  
 この気持ちを恋と呼んでも良いのなら、今度こそ訊ける気がするから。
  
 あの時、君が封印した言葉。
 あの夜明け前の駅で聞けなかった君の本当の言葉を、今、私は逃げずにちゃんと知りたいと思っているんだ。
 

 

記事続き

 

 

純恋結晶シリーズの第9弾です。

上京した女子と、故郷に残った男子の、両想い未満な淡い想いがモチーフ。

・このエピソードを練っている時、漠然と頭に流れていた歌が2曲ありまして、坂本真綾さんの「紅茶」と、奥華子さんの「恋つぼみ」です。
(ファンの方にはスミマセン…。)

・「紅茶」の方は一つの恋愛の終わりを歌ったものですので、厳密には違うのですが、道端で紅茶を飲んでいるイメージとか、時間を待っての別れのイメージが、何となく重なっています。

・「恋つぼみ」の方は、逆に旅立つ少女を見送る男性視点ですが、まだ「つぼみ」段階な花開くのを待っているイメージが何となく……。

 

 

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