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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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花火の中の一生
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浴衣ってね、見た目ほど涼しくはないんだ。
着付けするのにコツも要るし、キレイに着るの、結構大変なんだよ。

でも、初めてのわりには上手く着られてるでしょう?
帯だってね、今時よくあるワンタッチのやつじゃなくて、自分で結んでみたかったから、調べて、練習したの。
思ってたよりナナメになっちゃったけど……これでも頑張ったんだから、笑ったりしないでよね。


花火、もう始まっちゃったね。
確かに、ちょっと遠いけど、ここからでも充分だよ。
人でいっぱいだから、これ以上前には進めないし……。

あ、今ちょうど打ち上がった。

……綺麗だね。

弾けて、光って、消えていく……。 
こんなに一瞬で、あっと言う間に消えちゃうのに、どうしてこんなにも沢山の人がこれに惹かれて集まって来るんだろうね。


本当言うとね、昔は花火って、ちょっと苦手だったんだ。
物悲しく思ったり、恐くなったりして。

……そうだよね。
自分でも独特の感覚だとは思うんだけど……。


花火って、ほら、ぱぁんと弾けて、無数の星がきらめきながら、どんどん広がっていって、最後にはすぅっと消えちゃうでしょう?
似てると思わない?この宇宙に。

大爆発 ( ビックバン ) から始まって、どんどんどんどん膨らんで。
最後がどうなってしまうのかは、私にはちょっと分からないけど。


そう思っていたらね、あの打ち上げ花火のひとつひとつが、小さな宇宙に見えてきたんだ。
私たちの目には、ただの打ち上げ花火に見えても、あの中には実は、私たちには知覚できない無数の命が、一瞬で生まれては消えていってるんじゃないのか……なんて。

あるいは私たちのこの宇宙自体、実は途方もなく巨大な花火の一部で、この宇宙の外には今の私たちみたいに、この宇宙の誕生から消滅までを、花火のように眺めている何者かがいるんじゃないのか、なんてね。


一生が長いか短いか、なんて、きっと相対的なものでさ、私たちがセミの一生を短く儚いものと思うように、百年の人生だって、千年万年の途方もなく長い寿命の生命体から見たら、ほんの刹那の瞬きなんだろうね。

花火みたいなこの宇宙の中で、ほんの一瞬のきらめきのような一生を、懸命に生きてる。
――そう思ったら、なんだかこの人生が、ひどく儚く物悲しく思えて、恐くなっちゃったんだ。


ね、手を繋いでもいい?

……確かに暑いけど、手汗なんて気にしないよ。
今は、そういう気分なんだ。


何かを成し遂げても、どんな夢を叶えられても、結局最後は死んで無になっちゃうなら、意味なんて無いんじゃないか――そんな風に思ってた時期もあるよ。

でも、それは違うよね。意味ならちゃんとある。

だって、ほんの一瞬だけ光って、咲いて、次の瞬間には消えていく――こんな儚いシロモノを、今、こんなにも多くの人がわざわざ見に集まって、そのひとつひとつに声を上げたり、見惚れたり、感動したりしてる。

花火なんて、燃え尽きたら形も何も残らないのに。
――それでもこんなにたくさんの人が集まるのは、形が残らなくても残る 何か ( ・・ ) があるからだよね。

……ううん。
たとえ人の心や記憶に刻まれたその“何か”さえ、途方もない時の流れの中で消え去ってしまったとしても、無駄なことなんて、きっと無い。


あの一瞬の光の花も、身体の芯まで響く音も、この生ぬるく澱んだ夜の空気も、繋ぎ合ったこの手の熱さも……今日のこの一瞬の中にはこんなに確かに存在しているのに、明日になったらもうどこにもなくなってしまう。 
いつか、私の記憶の中からさえ消えてしまうかも知れない。

でも――それでも、私は、今日、ここに来たんだ。

今の、この一瞬を味わうために。
今日ここでしか味わえない何かを、感じるために。


きっとこの世界は、限り有るものだから価値が無いだとか、存在が儚いから意味が無いなんて、そんな単純なものじゃないんだろうね。

だって、私、今この儚い一瞬だけで『今まで生きてきて良かった』って、思ってる。
『今日ここで、この夜を味わえただけでも、生きてきた甲斐があった』なんて、思ってる。

……花火が綺麗だから、だけじゃないよ。


ねぇ、あのセミたちだってさ『人間に憐れまれる謂れなんて無い』って思ってるかも知れないよ。
地上に出てからはほんの数週間しかない命だって、その一生を懸けて全力で、本気の恋ができるなら、下手な人間より幸せなのかも知れない。


単に生命を次の世代へ繋ぐだけなら必要ないものの気がするのに、どうして私たちの中には恋なんていうプログラムが仕組まれているんだろうね。
不思議で、素敵で、ちょっぴり切ない。

きっと、今までも、これからも、この花火みたいな宇宙の中で、数えきれないほどの恋が、生まれては消えていく。

その儚さを思えば思うほど、余計に、今ここに在る何かを確かめたくなるんだ。


……ねぇ。花火が終わっても、まだ一緒にいたいって言ったら、困る?
こんな夜は、一人になりたくない気分なんだ。

永遠なんかじゃなくても、この夜の間だけにしか存在しないものだとしても、今、ここに在るものを確かめていたい。
溺れてしまってもいいから、この儚くて寂しい、花火みたいな宇宙や命のことを、忘れさせていて欲しい。
……誰でもいいわけじゃ、ないよ。


こんな気持ちになるのも、仕組まれたプログラムに踊らされてるだけなのかな?

――それでも、いいよ。
それでも私は、この気持ちに出逢えて良かったって、思うから。


ねぇ、たぶん最期の瞬間に振り返れば、百年の人生だって、あっと言う間のあっけないものに思えるんだろうね。
でも――それでも『この世界に生まれて来て良かった』って、そう思えるほどの“何か”は、きっと在るよ。
私はもう、それを知っているのかも知れない。


ねぇ、一秒でも長く、そばにいてね。
永遠じゃなくてもいいから、できる限り長く、一緒にいてね。
花火みたいに広がり続ける、儚い、この宇宙の中で……。

 

記事続き

 


 

 

「純恋結晶」シリーズ第11弾。ラストから2番目のSSです。

pixiv小説版を出した時に“宇宙っぽい表紙”を使うために、こんな話になりました。

念のため書いておきますが、このSSは情熱に任せた一夜のラブ・アフェアを推奨しているわけでは決してありません。
後になって悔やまないためにも、読者の皆様(男性・女性どちらも)は一時の感情に流されず、よく考えた上で行動に及んでください。

ピクシブ既存表紙フルコンプまでは、これで残り1つになります。

・真冬なのに季節感をまるで無視した花火の話でスミマセン…。

・でも「花火と言えば夏」なのは日本独特のことで、海外では「花火と言えば冬」という国もあるそうな…。
まぁ、今回のSSは思いっきり「浴衣で夏の花火大会を見に来ている」シチュエーションなので結局季節感無視なのは変わらないのですが…。

・ちなみに、ちょうど今の季節に合った冬のSSには、同じく純恋結晶シリーズの「愛にあふれたこの世界で、君と」がありますので、興味をお持ちの方はそちらも是非どうぞ。

・「蝉の命は七日間」だとか「一週間」というのをよく聞きますが、実際には地中で過ごす幼虫期間もありますし、成虫になってからも意外と長く生きる個体もいるらしいです。
このSSでは最早一般化していると言っていい「セミの儚いイメージ」を残しつつ、リアルな蝉の生態にもフワッと軽く触れる感じで書いています(「地上に出てからは…」という辺りとか)。

・語り口調は現代の言文一致体を目指していますので、ちょっとくだけているかも知れません。

・今回のSSに限らず、純恋結晶シリーズでは、リアリティーのある語り口調と、小説として「くだけ過ぎない」ギリギリのラインを探って書いています。

・今回は「相手の“人称”を一切出さない」という無駄にナゾな試みをやっているので、ちょっと執筆難易度が上がってしまいました。その分、話の内容が「分かりづらく」なってしまっていたらスミマセン…。

・相手の人称のレパートリーが尽きてきたので「いっそのこと、全く出さないのはどうだろう?」と思いついてしまったのです。

…そういう思いつきによる実験的作品がやたら多いのも津籠作品の特徴の一つ…。

・…と言うか、そもそも内容的にも難易度高めSSだったんですけどね…。
今持っているスキルでのベストは尽くしましたが、100点満点の出来かと言われると難しいところです…。

・花火を見ると何だか物悲しくなったり人生のアレコレが頭を過るのは、どうやら作者だけの感覚ではないらしい…ということに、Mr.Childrenさんの「HANABI」を聴いた時、気づきました。「全く同じ」ものかどうかは分かりませんが…。

・純恋結晶シリーズはあと1作で終了します。
ただし、このSSブログの次回更新がソレになるとは限りません。
(また没ネタのリサイクルなど入れていくかも知れませんので。)

・ラストの1作は、今回のSS以上に難易度が高いかも知れません…。
文章量的には今回のSSよりだいぶ少なくなる予定なのですが…。

・実は純恋結晶シリーズが終わった後の次のSSシリーズも構想中です。
次はヒストリカルドラマティック恋愛SSになる予定。
それと、恋愛に縛られない青春SSも書いてみたいな…と。
まだ予定は未定状態ですが…。
 

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