コンテンツ
ヘッダ

言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

カレンダー

<< May 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

ボディ
メインコンテンツ

記事

タイトル
タイトル
明治時代・怪盗ファンタジー小説(途中・東京名所デート編)
記事本文

JUGEMテーマ:時代小説

 

以前ちょこっと書いた明治時代の怪盗モノ小説の抜粋です。

・通しでちゃんとした形で出すには、かなりの推敲&練り直しが必要なため、とりあえず途中途中の何シーンかだけちょこちょこ出しています。

(そのため、ビミョウに段落と段落がつながっていなかったりします。)

 

・旭は普段は男装していて対外的には「御曹司(男)」ということになっていますが、正真正銘女の子です。
 


 

 ちょうど先日旭と出会った辺りに差し掛かった所で、あまりにも先日と似通った光景を目にしてしまい、青流は思わずその場にへたり込みたい衝動に襲われた。
 あまりにも見覚えのあるその人影は、だが先日のことで学んだのか、今日は塀の上から下ろした縄梯子を伝い器用に地面に下りてくる。このまま見なかった振りをしたいが、そうもいかない。何故こんな場面にばかり出くわしてしまうのか。
「ん?青流じゃないか。もしかして僕に会いに来てくれたのか?」
 その人影――旭は青流の姿に気づくなり目を輝かせ、弾むような足取りで近寄ってくる。
「いや、あんたじゃなくて師匠に用があって来たんだが……つーか、あんたはまた何をやってんだ」
「何って、見ての通りだが。屋敷を抜け出して東京の名所でも見物に行こうかと思ってな。それより、霧峰なら不在だ。今日は夕暮れになるまで帰って来ないと思うぞ」
 平然と返された答えに青流はしばし言葉を失った。
「名所見物って……あんた、今まで屋敷の外へ出たことなんて無いんだろう?」
「そうだが、人の話で東京十五区内のことはいろいろ聞いているし、名所に関する書物もだいぶ読んだ。だからまぁ、何とかなるだろう」
「何とかって……!あんたって人はどうしてそう、頭はいいくせに適当なんだ!?」
「どうしてと言うなら、理詰めで考えてばかりでは人生面白くないからだろう」
「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくてな……」
 反論しようとはするものの、何と言っていいのか思いつかず、青流は焦ったように頭をがしがし掻きむしった。
「ああ、もう、とにかく!一人でふらふら屋敷の外へ出て行くんじゃねぇよ!師匠も屋敷の人達も皆心配すんだろ!?」
「大丈夫。書き置きは残してきたし、暗くなる前に帰って来る」
「そういう問題じゃねぇ!」
 思わず怒鳴りつけると、旭はにわかに顔を曇らせた。
「……我侭だということは分かっている。だが、帝都が今、こんなにも目まぐるしく変わっているというのに、僕だけが外のことを何も知らず、屋敷の内に閉じ込められたまま生きていくなど耐えられない」
 青流の視線の先、固く握り締められた旭の小さな拳が震えている。
 このまま旭を行かせたら……そのことが霧峰に知られたらどんな目に遭わされるか分からない。だがこんな言葉を聞かされて、それでも冷厳に徹することなど出来ない。青流は諦めたように吐息をついた。
「……分かった。ここで会ったのも縁だろう。その東京見物とやらにつき合ってやる。だから世間知らずがほいほい一人で出歩くんじゃねぇよ」
 
「……で、何処へ行くつもりなんだ?あんた」
 問いに、旭は考え込むように視線を宙へ飛ばし、指を折りながら名所の名を挙げていく。
「まずは辰ノ口の勧工場だろう。ついでに建設中の鹿鳴館も見ていきたいし、湯島の書籍館にも行ってみたいな。それと、先月の二十日上野に博物館と動物園が開業しただろう。そこへも行ってみたいし、後はできれば不忍池の弁天様と、泉岳寺の赤穂義士の墓所と、新橋停車場と……」
「……あんた、それ、一日で全て回る気か?」
「ああ。無理か?」
 きょとんとした顔で問い返され、青流は脱力した。
「外側だけ見てさっさと次へ行くなら何とかなるかも知れんが、あんた、どうせ中も見て回るつもりだろう?だったらもう少し絞れ。でないと夜までにここに帰って来るなんて到底無理だ」
「まあ、よく考えてみればそれもそうだな。うーむ、何処にしようか……」
 
 東京府勧工場――通称『辰ノ口の勧工場』は皇居の東、かつての大名屋敷跡がそっくりそのまま荒地となって放置された丸の内に建っている。
 洋風の建物の中には長い中央通路を挟んで売り場が並ぶ。そこはいわば後の百貨店の草分け的存在。当時は珍しい大型商業施設であり、その人気はなかなかのものだった。
 入り口で渡された竹の皮の草履に履き替え、二人は買い物客の人ごみの中へ足を踏み出す。
 見たことのない品々に目を奪われ気の向くままに売り場から売り場へふらふら渡り歩く旭と、二人並んで名所を歩くことに言いようの無い気恥ずかしさを覚えてまともに旭の方を見ることすらできない青流。二人は当然のごとく、入場して数分後にはあっさりとはぐれていた。
「あ、旭ーっ!旭ーっ!何処にいるんだっ!?」
 顔面蒼白で旭の名を呼びながら、青流は買い物客でごった返す中央通路を人ごみを掻き分けて歩き回る。
(や、やべぇ!お屋敷を連れ出した挙句こんな雑踏の中で見失ったなんてことになったら、師匠に殺されるっ!いや、それ以前に世間知らずな旭が親切顔で近づいてくる人攫いにあっさり騙されてかどわかされて、どこぞへ売っ払われたりなんかしたら……!)
 その想像に、ますます顔から血の気が引いた。
「あ、あ、あ、旭ーっ!」
「ああ、青流。ここだ、ここ」
 悲鳴じみた呼び声に、あまりにも呑気な声が返る。振り向くと休憩所の赤い毛氈を敷いた床机に腰掛け、のんびりとしる粉をすすっている旭の姿があった。しかもその横には既に空になったしる粉の椀が二つ重ねて置かれている。
「な、な、何やってんだ!あんたはっ!」
「ここでしる粉を食べながら青流を待っていた。はぐれた時は動かずにじっとしているのが鉄則と言うだろう?」
「だからって……人が必死で探してたってのにあんたは一人でしる粉食ってたのかよ!?」
「すまなかった。そろそろ昼時だし、腹が減ってしまってな。青流も食べて行くか?しる粉でも鮨でも奢るぞ」

 早めの昼食を終え、勧工場を出る。
 空へ向かって大きく伸びをする旭の横顔を眺めながら、青流はふと思い出した。
(そう言えば俺、こいつのこと嫌ってたんじゃなかったっけ)
 あの夜に出会うまで、まさか自分と旭がこんな風に一緒に出歩くことになるなど想像したこともなかった。出会うまでは、同じ空気も吸いたくないというくらいに毛嫌いしていたはずなのに。
 それまで抱いていた嫉妬も劣等感も何もかも、あの夜の旭の姿を見た瞬間に全て吹き飛ばされて消えてしまった。あの夜の、月光に照らされ金色に輝く旭の姿を見た瞬間から……。
 見つめる視線の先、陽に透けた旭の髪が一瞬金色に光って見えて、青流はどきりと心臓を震わせた。あの夜の旭には、あの日以来会っていない。
 今こうして目に映る黒髪黒目の旭の姿も、青流の胸を揺さぶる。だがあの夜の旭は今の姿の比でないほど、格別に美しかった。
 金色に輝く髪、碧に光る瞳が、まるで夢の中の情景のようで。声を立てずに泣いていた静かな横顔がひどく儚げで……。
 そこまで思い出して、青流はあの日抱いた疑問が未だ解かれていないことにようやく気づいた。あの夜、旭は何故泣いていたのだろう。
「お前、なんで泣いてたんだ」
 気がつくと声に出ていた。旭は一瞬無言で青流の顔を見つめ返した後、深々と溜息をついた。
「唐突に何を訊くかと思ったら……。やはりあの夜、見ていたのか。趣味が悪いな」
「あ、いや、すまん。けど、べつに覗こうとか思ってたわけじゃ……」
「まぁ、そのことは構わないが。泣いていた理由、か。改めて訊かれると難しいな……と言うより、恥ずかしい、かな」
「恥ずかしいって、何でだ?」
「あの時は、ただ気づいたら泣いていたんだ。一人で月を見ていたらいろいろと物思いが止まらなくてな。女々しいだろう?」
「いや、べつにそんなことは思わねぇが……。何か、泣きたくなるような悩みでもあるのかよ、あんた」
 あの静かな泣き顔の理由を、どうしても解き明かしたくて青流は尚も問いを重ねる。旭は青流の顔を真っ直ぐ見つめ、ぽつりと答えを返した。
「僕は本来なら月に在るべきものだから、いずれは月へと還らねばならない宿命なんだ」
 青流は一瞬ぽかんと旭の顔を見つめた後、からかわれたことに気づき眉を吊り上げた。
「あんた、俺が『竹取物語』も知らないと思ってんのかよ」
 怒ったような声で問うと、旭は何も答えずにただ曖昧な顔で微笑んだ。その笑顔に何かを感じ、何を問いたいのかもよく分からぬまま口を開こうとしたその時だった。
 どん、と。空が破裂したかと思うような轟音が辺りに響き渡った。
「わっ!な、何だ?」
 さすがにうろたえて、旭が天を仰ぐ。
「ああ。『ドン』だ。正午を報せる空砲だよ。こんな近くで聞くのは初めてか?」
「そうか。正午の号砲か。もうそんな時刻なんだな」
 
「もう屋敷に戻るか?」
「……そうだな。書き置きを残してきたとは言え、家中の者達が僕を探さぬはずがないし、そろそろ戻るべきなのかもしれないな……」
 そうは言うものの、旭はなかなか動き出さない。訝しく思ってその横顔を見つめていると、旭は唐突にぱっと振り向いた。
「最後にどうしても一つだけ、寄りたい場所があるんだが。いいか?」
「ま、ここまでつき合ったんだから構わねぇけど。どこに行きたいんだ?」
「銀座だ」
 告げられた地名に青流は一瞬息を止めた後、何かを堪えるような顔で拳を握り締めた。

「はー……。話に聞いていた通り、まるで異国のような街並みだな」
 横一列に並んだ円柱の上にバルコニーの設けられた、まるで西洋の街並みをそっくりそのまま持って来たかのような洋風建築の群れ。歩道の柳並木の下を、旭は物珍しげに建物を見上げながら歩いていく。その数歩後を、青流はなるべく建物を目に入れないように俯きがちに歩いていた。
「煉瓦街と言うから赤いのかと思っていたが、実際は違うんだな。表面に塗ってあるのは何だ?漆喰か?」
 青流は旭の問いを聞かなかった振りでやり過ごした。夜、仕事の都合上どうしても通らねばならない時以外には極力近づかぬようにしている場所だ。昼の日の光の下で改めてこの街を見るのは初めてのことだった。よくできた模型のように整然と並んだ美しい街並みは記憶の中にあるかつてのこの町とはあまりに違い過ぎていて、自分の家がどの辺りにあったのかさえ、今の青流には分からない。
「青流、木村屋がどの辺りにあるか知らないか?銀座に来たからにはやはり名物の餡ぱんを買って行きたいのだが」
 無邪気な顔で振り返り、青流の様子がおかしいことに気づいた旭はすぐに笑みを引っ込め、気遣わしげに問う。
「どうした?青流。先刻から口数が少ないが」
「……嫌いなんだよ。銀座」
 昏い声で呟かれた一言に、旭は目を見開く。
「何故だ?お前、こういう目新しいものは好きなんじゃないのか?」
「まあ、目新しいのは好きだけどさ。でも銀座は昔とあまりにも違い過ぎてて何か気に食わねぇ」
「昔?煉瓦街ができる前のことか?」
「……銀座の大火の前だよ。俺、銀座に住んでたはずなんだ」
 返ってきた答えに、旭は小さく息を呑んだ。
「家は大火の時に焼けた。父ちゃんと母ちゃんもその時に」
「……そうか」
「母ちゃん、商売道具を持ち出そうとしてるうちに逃げ遅れたみたいでさ。父ちゃんは、その母ちゃんを助けようと火ん中飛び込んでって……そのまんま帰って来なかった」
 何故こんな話をしているのか分からなかった。旭は黙って話を聞いている。青流は吐き出すようにして言葉を続けた。
「父ちゃんと母ちゃんの命と、あれだけ沢山の家を焼いて……それなのにこの街は平然と立ち直って、何もかも忘れたみたいにこんな綺麗な街になって……。まるで、大火のおかげで今のこの街があるみたいで……まるで、あの大火がこの街が生まれ変わるための運命だったみたいで。だから、嫌いなんだよ」
 ふいに、ぽんぽんと頭を優しく叩かれた。顔を上げると、旭が神妙な顔で青流の頭に手を伸ばしていた。慰めるように、柔らかく、そっと何度も髪に触れてくる。その優しい手の感触にふいに記憶の中の別の手の感触が重なって、青流は愕然と目を見開いた。大きさはまるで違うのに不思議と似ている気のするそれは、あの日炎の中に失われたもの。あの日以来、こんな風に誰かに優しく頭を叩かれたことなど一度も無かった。一度も無かったということさえ、この瞬間まで青流は気づいていなかった……。
 半ば呆然とその感触を受け止めながら、青流は心のどこかで「ああ、そうか」と納得した。誰かに、こんな風に優しくしてもらいたかったのかもしれない。家が焼けて一人ぼっちになって以来ずっと、優しさを求められるような状況にはなくて。けれど、それでも心の奥底では、常に求めていたのかもしれない。優しさを。自分に触れてくれる、誰かの手のぬくもりを。
 止むことなく触れ続ける手のひらの優しい感触に、じわりと目頭が熱くなった。だが、そのじわりとした熱いものが涙に変わる前に、青流は大きく息を吸い込み、吹っ切るように顔を上げる。
「そんな気ぃ遣うなって。もう今更どうしようもない昔のことなんだからさ。それより、木村屋に行きたいんだったな?行ったことは無ぇが、確か四丁目にあるって聞いたぞ」
 殊更明るい声を出し、歩き出す。銀座へ行きたいと告げられた時から胸に巣食っていた痛みは、いつの間にか薄れていた。目に映る街並みも、今までとは少し違って見える。
 こんな些細なことで気持ちの変わってしまう自分が、青流にはひどく不思議に思えた。だがそれは決して不快なものではなく、胸をじんわり温かくするような、どこか心地良さを伴った感覚。それを噛みしめるように青流はもう一度、大きく息を吸い込んだ。

 旭とその日の思い出と餡ぱんのことで頭がいっぱいになっていた青流はまるで思い出しもしなかった。自分がそもそも何のために今日雪ヶ崎邸まで赴いたのか。何を伝えようと思っていたのか。
 そのことに青流が気づいたのは、翌日の昼になってからだった。
 大慌てで再び雪ヶ崎邸に駆けつけ、だが塀の外に旭の姿も霧峰の姿も見つけられず結局その日はねぐらの一つにしている廃寺に戻る。が、扉を開くなり先客の気配に気づき身を強張らせた。
「誰だッ!?」
「……私だ。随分遅かったのだな。待ちくたびれたぞ」
「し、師匠っ!?」
 床に腰を下ろしていた霧峰はゆっくりと立ち上がり歩み寄ると、青流の頭を軽く小突いた。
「師匠と呼ぶなと何度も言ったはずだが?」
「そ、そんなことより!俺、師匠に言わなきゃならないことが……」
「ほぉう?私もお前に訊きたいことが山のようにあるのだが」
 その、身を震わせるような低い声に、初めて青流は霧峰の機嫌の悪さに気づいた。
「師……じゃない。霧峰さん。あんた、何をそんなに怒って……」
「ほう?分からないのか?身に覚えが無いとでも?昨日、お前誰と何処へ行っていた?」
 その問いに、青流は一瞬で硬直した。
「し、師匠……。昨日のこと……知って……」
「……やはりお前だったか。旭様は一人で行ったと言い張ってらっしゃったが……あの方がお一人で麻布区の外へなど行けるはずがないからな」
 深々と溜息をつかれ、青流は鎌をかけられていたことを悟る。
「な……っ!師匠、俺を引っ掛けたのかよ!?」
「こんなものに引っ掛かるお前が悪い。もう少し用心して喋るようにしておかないと、もし警察に捕まりでもした時に困るぞ」
 気色ばんだ青流を諌めるように殊更厳しい声で言い、霧峰は一旦言葉を切って鋭い眼差しを向けてきた。
「それにしても、どういうつもりだ青流。旭様を外へ連れ出すなど。……あの方がお前に頼んだのだということは察しがつく。だが、お前は知っていたはずだな?私があの方を外へ出さないようにしていたことを」
「だって……可哀想じゃねぇか。ずっと屋敷の中に閉じ込めっ放しなんてよ」
「仕方がないではないか。そうしていなければあの方自身が危険なのだから」
「は?危険?何でだ?」
 霧峰はその問いに答えなかった。代わりに再び溜息をつき、何かを考え込むように目を閉じて片手で眼鏡を押し上げる。
「……全く、旭様が万一屋敷を抜け出しでもしたら事だと思い見張らせはしたが……やはりお前に屋敷の見張りなど頼むのではなかった。お前と旭様を会わせたくなどなかったのに」
 以前も聞いた台詞を再び聞かされ、忘れていたはずの劣等感が再び青流の中で目を覚ました。
「ああ。そうだよな。旭は俺なんかと違って綺麗だし頭も良いし優しいもんな。師匠が俺なんかより旭を大事にするのは当然だよな。俺みたいなのを近づけたくもないって思うのも当たり前だよな」
「……そういうことではない。お前は何故そう己を卑下する。だいたい私も元はお前と同じような身の上だぞ?」
「でも、今じゃ立派なお医者じゃねぇか。俺なんか……」
「そうやって己を卑下したところで誰も慰めてはくれんぞ」
 厳しいままの声で発せられたその言葉に、青流はくっと唇を噛んだ。
「……んなこと分かってるよ」
「だいたい旭様と比べてどうする。お前、私と旭様を同列に並べて比べられるか?」
「それは……」
 考えようとして、青流はすぐに首を横に振った。比べられるわけがない。霧峰と旭とではあまりにも種類が違い過ぎる。自分との関係も、覚える感情も。
「……分かっただろう。お前と旭様とではあまりにも違い過ぎる。……全く、少し相手の立場になって考えてみれば分かることをそんなにいちいち悩むな。時間の無駄だ」
 呆れたように溜息をつかれ、青流は口を尖らせた。
「それは分かったけどよ。だったら何で旭に近づくなって言うんだ?」
 問いに、霧峰はしばし沈黙した。答えたくなさそうに、探るように青流の顔を見、青流が話を変える気がないのを見てとると、諦めたようにやっと口を開いた。
「……くだらん嫉妬だ。出会ってから十年近く、手塩にかけてお育てして、やっとここまでの信頼を得られたというのに、突然現れたお前などにあっさりと懐かれて嬉しいとでも思うか?」
 青流に顔を見られたくないように外方を向き、ぼそりと呟く。その様に、知らず青流の頬が緩んだ。
「何だ……。そういうことか。……ははは。そっか。妬いてたのか、師匠」
「嗤うな。それより、お前の話したかったことというのは何だ?」
 不機嫌な声で問われて、青流はやっと己が話すべきことを思い出した。
 

 

記事続き

・以前冒頭部分途中部分(ふたりの再会シーン)のみUPした明治時代怪盗モノ小説の続きです。
 
・まだ“長編癖(=小説を書こうとするとどうしても長くなってしまう症状)”の抜けていなかった頃のものなので、今の小説より読みづらいかも知れません。その辺りはスミマセン。
  
・旭は月夜の晩限定の特殊能力持ちで、月夜の晩・月光の下では金髪碧眼の姿になります。昼は黒髪黒眼で、男装すればギリギリ男子にも見える容姿に変わります。
 
・今回はふたりの「明治東京観光デート」シーン(と、その続きをちょこっと)の辺りを抜粋しています。
 
・実はこの話、それまで「資料を調べて小説を書く」ということを全くしたことがなかった自分が、初めてチャレンジした「どうしても資料調べが必要な小説(=時代小説)」でした。
 
・“資料調べ初心者”らしく「“資料調べ”で得た知識を余すところなく書き込みたい」感がスゴク出ています…。
 
明治時代東京の名所のアレコレとか…。)
 
・そして調べた知識のマニアックさが「当時から津籠は津籠だなぁ…」と自分でも思います…。

前後の記事
<< 明治時代・怪盗ファンタジー小説(途中部分のみ) | TOP | 在位九日の少女王の恋 〜A Tribute to Lady Jane Grey〜 >>
タイトル
タイトル
スポンサーサイト
記事本文
記事続き
フッター
コピーライト
This template is made by CYPHR. (C) 2020 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.