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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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明治時代・怪盗ファンタジー小説 (物語の核心部分・抜粋)
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JUGEMテーマ:時代小説

 

・アイディアはあるものの、通しで書く時間的余裕が無さそうな明治時代怪盗モノ小説の途中部分です。
 
冒頭部分途中部分明治東京名所デート部分が既にUP済みです。)
 
・そのまま全没にするのはもったいないので、アイディアができている部分のみリサイクルしています。
 
・今回は物語の核心に迫る部分がちょこちょこ書いてあります。
 
・めぼしいシーンのみ抜き出して書いているので、段落と段落がつながっていません。
 


 

「不運だったな、旭。まさかこの場にもう一人、お前を狙う人間がいるとは思わなかったろう?――私にとっては、大変に幸運な偶然だったが、な」
「あ……あ……きよみち……さん……?」
 旭が呆然と名を呼ぶ。その名に、青流は旭を捕える男の正体を知った。
(雪ヶ崎清道……!?この男が病気療養中の旭の父親……!?)
「清道さん……お元気、なのですね?お身体はもう、よろしいのですね……?」
 羽交い締めにされているというのに、清道を見つめる旭の目は歓喜に満ちていた。頬も紅潮し、普段の旭なら決して浮かべることのない、まるで久々に想い人に会えた乙女のような顔になっていた。
 一方、それを見下ろす清道は苦虫を噛み潰したような渋い顔で吐き捨てる。
「紅のような言い方をするな……。と言っても無理か。お前は間違いなく紅の“人形”なのだからな」
「人形……?」
(さっきから、何言ってんだ、この男。紅って、確か旭の母親の名前だよな?月織部の姫だったとかいう……)
「清道さん、どうかお考えを改めてください。月織部への復讐などやめて、私と一緒に穏やかに暮らしましょう。おじい様だって、話せばきっと分かって……」
「何を言っているのだ?お前と穏やかに暮らす?紅でもない、ただの人形のお前と暮らして、私が幸せだとでも思うのか?私が求めていたのは、紅ただ一人。それが喪われた今、復讐以外に何を望めと言うのだ?」
「紅ならここにいます!姿かたちは変わっても、私の心と思い出は、変わらずここに遺っています!そのために私は命を懸けて……」
 旭は必死に訴えかける。だが清道は冷たく拒絶した。
「お前は紅ではない。紅の紡いだただの人形。そこに紅の記憶を写しただけのモノに過ぎん」
「そんな……私は、あなたに“子”を遺して差し上げたくて……」
「私の血を引いてもいない子を紡いで死なれるより、私は紅自身に一日でも長く生きていて欲しかったよ。……だが、今、お前という存在がここにいることには感謝しているのだ」
「清道……さん……?」
「私一人では、どう足掻いても月織部一族を滅ぼすことはできんからな。歴代最高の月織姫の力を受け継いだ、お前という存在が必要だ。手を貸してくれるだろう?お前は私の所有物なのだから」

 



「……みっともない姿を見せてしまったな。あの人の前に出ると、僕は僕でいられなくなる」
「どういうことなんだ、さっきの。わけが分からないことだらけだったが……あの人、お前の父親じゃないのか?お前は、雪ヶ崎旭じゃないのか?あの人と話している時のお前、まるで……」
(まるで、あの男に恋してるみたいに見えた……)
 そう思いはしたものの、何となく口にできず、青流はただ戸惑った瞳で旭を見つめる。旭は苦笑して口を開いた。
「僕は人間じゃない。月織姫・紅の生みだした月の光の人形だ」
「は!?お前、何言って……」
「僕を生み出した『母』――紅姫は、生来身体の弱い人間だった。とても追っ手を振り切っての逃亡に耐えられるような身体ではなかった。だから、駆落ちの最中に倒れて……その死の間際に僕を織ったんだ。ただ一人遺していく清道様のために。清道様が自分の後を追って命を絶つことの無いよう、自分の代わりに清道様を愛し、支える『娘』として……」
 旭は一旦言葉を切り、ぎゅっと目を閉じた。脳裏に声が蘇る。『旭』としての一番最初の記憶。生みだしたばかりの旭をその腕に抱き、死にゆく紅が清道に向け告げた、最期の言葉。

 ――清道さん……ご覧になって……。私たちの『娘』です。目元は私に、鼻筋はあなたに似ているでしょう……?あなたの望み通り、一番初めは……女の子。約束通り、ちゃんと清道さんの子……生んであげられて……良かっ……た。
 
「月糸により生みだされたモノは、月が沈み朝日が昇れば消えゆく運命。たとえ月織姫であっても、月の光の届かぬ場所でも実体を保ち続ける月糸細工を生むなど、不可能なはずだった……。だが紅は、一縷の望みをかけ、己の命、想い、全てを籠めて月糸を織り上げた。そうして生まれた僕は朝が来ても消えることなく残り……僕の代わりに、紅の方が朝日に溶けてこの世から消え失せた……」
 青流の脳裏に、これまでの月織部一族との闘いが蘇る。月織部の刺客の生みだした月糸細工は確かに、朝日が昇ると皆、溶けるように消え失せていった。
「ただ一つ、誤算があったんだ。紅はただ、あの人への漠然とした“想い”だけを籠められれば良いと思っていた。だけど僕に織り込まれたのは、生まれてから死ぬまでの紅の記憶の全て。月織姫としての記憶も、あの人への恋心も、僕の中には全て、薄れることも色褪せることもなく織り込まれてしまった。紅に似せて創られても、記憶を受け継いでいても、決して紅本人ではない僕が、あの人に愛されることなどありはしないのに……」

 



「なぁ、青流。お前を腹心の友と見込んで頼みがあるんだが」
「なんだ?……っつーか、お前、そろそろ止めとけよ。酒、呑み慣れてないんだろ?」
 何となく言葉が怪しくなってきた旭の手から徳利を取り上げ、青流はその顔を心配そうに覗き込む。そんな青流を真剣な目で見つめ返し、旭はとんでもないことを言い出した。
「……僕の…心を……盗んでくれ……」
 一瞬何を言われたのか分からず呆気にとられた後、青流はすぐに耳まで真っ赤になった。
「はぁ!?何言って……お前っ、さては酔ってるな!?」
「こんなこと、素面で頼めるものか。お前、盗めないものは無いんだろう?だったら僕の心を盗んでみせろ。そうすれば僕の能力も頭脳も自ずとお前のものになるのだぞ。悪くない話だろう?」
「…………何故、そんなことを俺に頼む?」
 旭の心を量りかねて、青流はひとまず、浮かんだ問いを口にする。
「………………恋が、したいんだ」
「…………あ?」
「恋が、したいんだよ。“母上”の思い出に縛られた偽りの恋でなく、僕だけの真の恋が。そうすれば、僕はあの人の呪縛から逃れられる。己の恋を糧にして、生きていける……」
 その答えに、青流の胸がずきりと痛んだ。
(あの人への恋心から逃れるために別の恋がしたいなんて、そんな考え自体がもう、縛られてるようなもんじゃねぇか……)
「ばかか、お前。恋なんてしようと思ってするもんじゃねえだろ。まして、誰でもいいなんて」
(そんな『誰でもいい』で選ばれたんじゃ、俺が情けなさ過ぎるだろうがよ……)
 酒に潤んだ瞳から目を逸らして咎めると、旭はむっとしたように頬をふくらませた。
「誰でもいいなんてわけじゃ…な……」
 だが、その言葉は全てを言い終わらぬうちに途切れた。見ると、旭は机の上に顔を伏せ寝息を立てている。
「……あぁ、もう。慣れねぇ酒をこんな呑むから……」
 青流は盛大な溜め息をつき、眠る旭の背に羽織をかけてやる。
「……盗めるもんなら盗んでやりてぇよ。何せ、俺の心はもうとっくにお前に……」
 言いかけ、青流はハッと言葉を止め、旭の顔を間近から覗き込む。
「おい。本当に寝てるんだろうな?寝たふりして起きてないよな?」
 しつこいくらいに確認し、青流は旭の依頼に答えを返す。
「お前がそう望むなら、盗んでやるよ。お前が言ったんだからな。後で悔いたって知らねぇぞ」
 

記事続き

 

・旭の“母”の生家である月織部家は月の光を糸に紡ぎ、その糸であらゆるものを織り上げる特殊能力を持っています。
 
・旭は月の光の下では金髪碧眼の姿に変わりますが、それは実は月糸で織られたモノの特徴になっています。
 
・旭が普段は男装しているのは、祖父・雄道が清道ではなく旭に家を継がせたいと思っていることと、旭本人が清道への恋心を振り切るために“男”であろうとしているから、という理由があります。
 
・旭の“父”清道は、紅姫の死後に乱心し、雄道の命により静養名目で田舎の別邸に軟禁状態でしたが、紅を死に追いやった月織部家への復讐のため、いろいろと暗躍しています。
 

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