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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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明治時代・怪盗ファンタジー小説(途中・怪盗シーン編)
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JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー

 

・以前、数シーンだけUPした明治時代怪盗モノ小説のワンシーン(初アクション(?)シーン)です。
冒頭部分途中部分東京名所デート部分物語の核心部分を既にUP済み。)

・アイディアはあるものの、通しで書く時間的余裕が無さそうなので、めぼしいシーンのみ抜き出して書いています。

・旭は普段は男装していて対外的には「御曹司(男)」ということになっていますが、正真正銘女の子です。

 


 

 数日後の夜。青流は大勢の警官に追われ必死で逃げていた。
依頼されていた盗み自体には成功したものの逃走経路の地図に不備があり、抜け道を通っている途中、よりにもよって警官の詰所の真ん前に出てしまったのだ。

 これは間違いなく、先日青流が旭を連れ出したことに対する霧峰の報復だ。……霧峰がそういう男だということを青流はすっかり忘れ果てていた。
(つーか、やばい!このままじゃ逃げ切れないかもしれん。師匠!あんた、くだらん嫉妬だとか自分で言っときながら、嫌がらせはきっちりして来るのかよ!?)
 なまじ盗み自体は成功してしまったものだから、札束の入った重い布袋が邪魔になる。
 霧峰はおそらく、青流ならぎりぎり逃げ切れるだろうと踏んでこんな悪戯を仕組んできたのだろうが、それは過大評価だと訴えたい。事実青流は家屋の屋根に上ったはいいものの、四方の路上を警官達に埋め尽くされ完全に逃げ場を失くしていた。
(やべぇ……本当に逃げ場が無ぇ……。師匠……恨むぞ)
 屋根瓦の上に両手をつき、絶望に項垂れていると、ふいに頭上から声が降ってきた。
「大丈夫か?青流」
 顔を上げて、絶句する。それは、まるで空から天女が降りてきたかと錯覚するような光景だった。
 闇の中、まるでそれ自体が光を放つように白く輝いて見える肌。風に泳ぐ金の髪。向けられた瞳は翠玉の碧。
 音も気配も無く忽然と現れた旭は、あの出会いの夜と同じ夢のように美しい姿で青流の前に立っていた。状況も忘れてその姿に惚けた後、青流はふっと我に返り叫ぶ。
「あんた……っ、何でここにいる!?」
「何故って、青流を助けるために決まっているじゃないか。『烏小僧』が出たと、うちの周りでも大騒ぎだったからな」
 旭は平然と言い、屋根瓦の上を危なげなく、足音一つさせずに青流に歩み寄ってくる。改めてその姿をよく見るなり、青流は喉の奥から絶叫した。
「ぎゃーっ!何だ、その格好はっ!」
 旭は今までに目にしたことのないような突飛な衣装を身につけていた。

 細い脚を覆うのは鮮やかな蒼色の、裾の異様に短い袴。上に着けた白っぽい色の単衣も袖が短く、肘から下は完全に露出している。肩には袴と同色の頭巾の付いた、外套にしてはやけに短い、胸の下辺りまでしか丈のない外衣。そして頭の天辺には鉢巻状に白い幅広の布が巻きつけてあった。
「何って、盗人装束だ。縫に言ってこっそり仕立ててもらったんだ」
「何で仕立てるんだそんな物!縫さんは何も疑問には思わなかったのか!?」
「さあ。僕は縫ではないから分かりかねるが」
「って、そうじゃないっ!それも確かに疑問だが、そうじゃない!お前、何だ!?その袴の短さはっ!」
「これか?」
 言って旭はぴらりと裾をつまんで見せた。袴とは言うものの、その丈は袴にしてはあまりにも短い。膝丈よりもさらに短く、ちょっとつまんだだけで太腿が見えてしまうほどの短さだ。
「ぎゃーっ!めくるなっ!お前っ!脚がっ!脚が見えてるぞ!?」
「それは見えるだろう。この丈なら」
「なんでそんな短い丈にしてるんだーっ!?」
「だって、長いと動きづらいじゃないか。慣れている青流ならともかく、僕では裾のひらひらした長い袴で屋根の上を飛び跳ねたりできない。だから思いきり短くしてくれと縫に頼んだんだ」
「ばかっ!お前はそこまでして屋根の上を飛び跳ねたりしなくていいんだ!」
「しかし動きづらい格好ではどの道警官達から逃げきれないだろう」
「それもそうだが……。って、いやそれよりっ、そんな格好で飛んだり跳ねたりしたら、見えるっ!袴の中が見えちまうだろう!?」
 頬を赤らめて目を逸らす青流とは対照的に、旭は平然と言い放つ。
「大丈夫。下帯なら着けている」
「乙女が男性用下着を身につけるなーっ!」
「女じゃないと言っているだろう。それに仮に女だったとして、だったら何も身に着けるなと言うのか?」
「い、いや、それは……っ」
「だったらいいだろう。この国ではまだ婦人用下着など普及していないのだし」
「だからってなぁ……」
「で、どうだ?この装束は。盗人らしく見えるか?」
 言って旭は青流の前でくるりと一回転して見せる。青流はその姿を上から下まで眺めて深々と溜息をついた。
「駄目だな。なってない。お前、盗人は闇に紛れて目立たず行動するのが基本なんだぞ。なのに何なんだ、その頭に巻いた白い鉢巻は。そんなのがひらひらしてたら目立って仕方ないだろう」
「駄目か?やはり帝都の闇夜を疾風のように駆け抜ける盗賊だったら衣装の一部を風にたなびかせていないと駄目だと思うんだが……」
「……何だ、その思い込みは」
「青流だっていつもその黒外套を風になびかせているじゃないか。それは格好良いと思うからそうしているんだろう?」
「う……っ」
 確かに自分でも多少は格好良いと思っていた青流だが、その手の問いを改めて訊かれると非常に気恥ずかしい。
「ち、違うッ!これは闇に身を紛れさせるという重要な役割がだな……」
「まぁそれは良いとして、悠長に話をしている余裕は無いみたいだな。見ろ、下は警官でいっぱいだ。梯子をかけられてここに上って来られたら終わりだ」
 青流はそこでやっと己の置かれた状況を思い出した。
 見下ろすと、警官達は新たに現れた盗賊――旭を指差し、口々に何かを言っている。
(あぁああぁ……。よりにもよってこんな危険な場所に旭を……。どうすればいいんだ。ここで旭が警官に捕まったりなんかしたら、師匠に殺されかねない。いや、そもそも俺が連れて来たわけじゃないんだが……)
 八方塞がりな状況に、青流は頭を抱えた。旭は面白そうに警官達で埋め尽くされた路地を見渡した後、青流の方へ顔を向け悪戯っぽく笑う。
「助けてあげようか、青流」
「……は?」
「逃げ場が無いんだろう?僕なら君を助けてあげられる」
「何言ってんだ。こんな状況でどうやって……」
 言いかけ、ふっと青流の頭に疑問が湧いた。
(そう言えば、旭……どうやってここへ来たんだ?)
「まあ、見ていろ」
 旭は不敵に笑うと屋根の天辺へと歩いていった。屋根の上には白く月光が降り注いでいる。遮るものの無い場所で全身に光を浴び、旭はそっと目を閉じる。そして一つ息を吸い込むと、両手で大きく宙を掻いた。
 その指先の軌跡を描くように、そこだけ月の光の濃度が変わる。何も無かった宙空に、白金の曲線が現れる。

 それは、凝縮された月光の、糸。旭の指先に絡まり風にたなびく、細く、金色に光る、月の光を紡いで創られた糸だ。旭が両手を動かすたびにその数は増え、光る糸の束となって手のひらに溜まっていく。
 その光の糸を両手の指に絡ませ、旭はまるで舞を舞うかのように屋根の上を音も無く跳ねる。十本の指をあや取りでもするかのように複雑に動かしながら、糸同士を絡ませ、くぐらせ、何かの形を織り成していく。
 踊るように月糸を編む旭自身もまた、薄い光の膜をまとったように淡く光り輝いて見える。
 青流は呼吸さえも忘れてしまったかのように一切の身動きを止め、その光景に魅入っていた。
「出来た」
 旭は目を開け、再び不敵な笑みを見せた。青流は呆然と、織り上がったそれを見つめる。
「……翼?」
 それは、一対の翼。旭の背から伸びた、まるで白鷺の羽根のように優美で繊細な、白金に輝く大きな翼だ。
「では、逃げるぞ」
 言うなり旭は呆然と突っ立っている青流の脇の下に両手を差し入れ、胸に抱え上げるようにして屋根瓦を蹴った。
「ちょ……っ、な……っ!?ぎゃーっ!」
「暴れるな。落ちたら怪我をする」
 悲鳴を上げる青流に忠告し、旭は月光で織られた翼を羽ばたかせる。宙に吊り下げられたような状態の青流は顔面を蒼白にし、身を強張らせた。
 二人は呆然と空を仰ぐ警官達の頭上を易々と飛び越し、更に高く上昇した。しばらくしてこの状況に慣れてきた青流は、顔を上げて旭の翼を見、感嘆の吐息を漏らした。
「すっげぇな、それ……。人の背に翼なんて、まるで烏天狗だ」
その、青流からしたら褒め言葉のつもりだったであろう言葉に、旭の羽ばたきが一瞬止まる。
「ぎゃーっ!?」
 二人の身体は重力に従い急速に高度を落としかけ、だが旭が必死に羽ばたきし直したおかげでかろうじて墜落せずに済んだ。
「あ、危ねぇ……っ!何やってんだ、あんた」
「か、烏天狗って……。他にもっと言いようは無いのか?」
「他って……ああ!鳥女とかか?」
「……『天使』は出て来ないのか?」
「何だ、ソレ」
「……まあ、そうだな。そこらの庶民が西洋の宗教画など見たことあるわけが無いな」
 旭は羽ばたきは止めないまま、何かひどくがっかりした風に項垂れた。

 

記事続き

 

・今回は旭が初めて特殊能力を使うシーンです。
 
・まだ“長編癖(=小説を書こうとするとどうしても長くなってしまう症状)”の抜けていなかった頃のものなので、今の小説より読みづらいかも知れません。その辺りはスミマセン。
 
・旭の盗賊衣装はキュロット的な感じの袴を想像して書いているのですが、明治時代でソレを着せると、どうしても発生する問題が出て来るので、その辺りに対するフォローを全力でしています。
 
・本当は「物語の核心部分」より先にUPすべきだったのですが、以前書いたデータがなかなか見つからなかったので後になってしまいました。スミマセン…。
 
・青流は「“義賊”として資産家の財を盗み貧民窟に配ってはいるものの、実は盗みに入るのは雪ヶ崎家と敵対する家ばかり」なのですが、旭は青流の“怪盗”につき合ううちにそれを察知し、ひと悶着あります。
 

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