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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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明治時代・怪盗ファンタジー小説(途中・怪盗アクション後エピソード)
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JUGEMテーマ:時代小説

 

・以前、数シーンだけUPした明治時代の怪盗モノ小説のワンシーンです。
冒頭部分途中部分東京名所デート部分怪盗シーン編物語の核心部分を既にUP済み。)

・通しでちゃんとした形で出すには、かなりの推敲練り直しが必要なため、とりあえず途中途中の何シーンかだけちょこちょこ出しています。

・旭は普段は男装していて対外的には「御曹司(男)」ということになっていますが、正真正銘女の子です。
 


 
 その後、深夜のうちに窓からこっそり雪ヶ崎邸へと戻った旭は、翌日になって雄道の呼び出しを受けていた。
「旭。今日の新聞を読んだか?」
「いえ、まだ。何か面白い記事でも載ってましたか?」
「……白々しいことを申すでない。見ろ。今日の新聞はどれも『新たな盗賊』の話題で持ちきりだ」
 雄道が卓子の上に投げ出した新聞を旭は手に取り目を通す。
「『月下の翼』か。なかなか洒落た名を付ける新聞もあるものですね」
「感想を聞いておるわけではない」
「では何をお聞きになりたいのですか?」
 堂々と白を切ると雄道は深々と溜息をついた。
「これはお前のことだろう。誤魔化したところで無駄だ。背に金色の翼など、お前くらいしか考えられん」
「何を仰いますか。新聞の記事など元よりあまり当てにはならぬもの。ご存命の方の死亡記事が平気で載るような有様なのですから。これだって荒唐無稽な噂話の類でしょう」
「新聞だけならばお前の言を信じてやっても良かったが、あいにくだったな。昨夜は蒼七郎が烏の様子を見守っておったのでな」
「……霧峰が。どうして、そんな。いつもなら烏小僧が何処で盗みをしていようが屋敷で書物に埋もれているのに」
「よく分からぬが、昨夜は何か気懸かりなことがあったようでな」
「……本当に霧峰が見ていたのですか?おじい様、僕を引っ掛けようとしているわけではないですよね?」
「本当だとも。お前のしていた面妖な格好についてまで事細かに語っておったわ。脚が腿まで見えておったとか。全く嘆かわしい。蒼七郎も泣いておったぞ」
 首を振って嘆く雄道に旭は困ったようにこめかみを掻いた。
「霧峰が見ていたのでは仕方ありませんね。そうです。昨夜の『新たな盗賊』は僕ですよ」
 すっかり開き直ったようなその態度に雄道は顔を覆う。
「お前という子は……どういうつもりなのだ。自分の置かれておる立場をきちんと理解してはおらんのか?」
「理解はしております。おじい様が僕のためを思って外へ出さずにいることも、分かっております。……ですが、もう幼子ではないのですから、いつまでも厳重に守っていて下さらずとも大丈夫ですよ。もう自分の身くらい自分で守れます。いつまでも僕を屋敷の中に閉じ込めていられないことくらい、おじい様もお分かりのはずでしょう?」
「……そうだな。それは、分かっておるのだ。だが、まだ早い。まだ良いではないか」
 雄道は顔を覆ったまま、呻くように言葉を発する。
「……お前がこうやって羽目を外すようになったのはあの小僧と出会ってからだな。……あの小僧が羨ましいのか、旭」
「羨ましいだなんて、そんな……。青流には青流の、他人には分からぬ苦しみがあるというのに」
「全く。何かと言っては大人を振り回して困らせるくせに……。肝心な所ではいつもそうやって、他人の心ばかり気にかけて……。困った子だ。お前は、本当に」
 困った子だと言いながら、雄道のその口元は優しく緩められている。
「だが、烏小僧の真似事はいかんぞ。あれは危険な仕事だからな。お前に万一のことがあったら、亡き紅姫に申し訳が立たん」
 雄道の口から出たその名に、旭は一瞬ぴくりと眉を上げた。だが、すぐに何もなかったかのように深く頭を下げる。
「申し訳ありませんでした」
「うむ。外へ出たいのなら今度わしが上野の動物園にでも連れて行ってやるから。今はまだ屋敷の中でおとなしくしていなさい」
「はい……」
 もう一度頭を下げ、部屋を出て行こうと扉に手を掛け……旭は何かを思い出したようにふっと振り返った。
「おじい様……。ここニ、三年でおじい様が買収してきた工場や鉱山は、ほとんどが皆、烏小僧に財を奪われ経営が立ち行かなくなり、戸を鎖るに至った会社のものばかりですよね」
「ん……?そうだったか?確かにそうだったかもしれんが。困っている者達を助けるのは人として当然の行いではないか」
「………………」
 旭は何も言わなかった。ただ、雄道に見えぬよう扉に顔を向け、きゅっと唇を噛みしめた。
 
 雄道との話を終え廊下に出ると、今度は霧峰が待ち構えていた。
「長かったですね。でも今回ばかりは私も旭様のお味方はできませんよ。外の者には関わるなと申し上げてきたはずです。それなのによりにもよって盗人である青流と共に夜の帝都を飛び回るなどとんでもないことです」
「霧峰。お前、あの子に何をさせている?」
 霧峰の言葉を無視して問うと、霧峰は一瞬間を置き苦笑した。
「……『あの子』ですか。青流が聞いたら激怒しますよ。自分ではもう一人前の大人の男のつもりでいるんですから」
「誤魔化すな。青流に三塚家での盗みを指示したのはお前だな?」
 その問いに、霧峰はしばし沈黙した。頭の中で考えを巡らせた後、誤魔化しきれることではないと思ったのか吐息を一つついて口を開く。
「……さすがですね。もうお気づきになられましたか」
「前々からおかしいと思っていたからな。商業上うちと競い合う家があると、必ずと言っていいほど烏小僧に財を盗まれて潰れていく。ずっと、確かめたいと思っていたんだ。……昨夜青流に会って確信した。お前、何ということをさせているんだ。あんな、まだ大人にもなりきれていないような少年に」
「危険な行為だというのは青流も承知の上ですよ。それに、あの子は元々『義賊になりたい』と言って私の弟子になったんです。望みが叶って青流も満足のはずですよ」
「義賊……?雪ヶ崎の邪魔になる家を潰すための企みが、か?」
「盗んだ金はちゃんと貧民窟にばらまいているではありませんか。それにあの子が盗んだものは決して綺麗な金などではありませんよ。他者を陥れ、弱者を踏みつけにするなど、今のこの時代に成り上がった家のどれもが、多かれ少なかれやっていることです」
「そういう問題ではないだろう。他家がどうであろうと、それが雪ヶ崎が悪事を働いて良い理由にはならない。……青流は、自分のやっていることが間違っていると、とうに気づいているぞ。それでもあの子に盗みを続けさせるのか」
 霧峰はしばらく沈黙し、静かに口を開いた。
「間違っていようと何だろうと、今のあの子には必要なんですよ。誰かから『必要とされる』ということが。例え本当に必要とされているのは青流自身ではなく青流の盗んで来る金の方なのだとしても。自分の行為により誰かが救われ、その救った誰かから感謝される。今はまだ、そうやって他人に自分を肯定してもらうことでしか己の生きる意義を見出せないんです。いつか、己の命を懸けても良いと思えるほどの何かと出会うことができたなら、そういうものに頼る必要もなくなるのでしょうけどね」
「……とか何とか言いながら、本当は単に一石二鳥だとでも思っていたのだろう。青流が『烏小僧』になって雪ヶ崎の競争相手から財を盗めば、義賊になりたいという青流の望みも叶うし、雪ヶ崎の利益にもなる。実際は義賊などではないわけだが……」
 旭は一旦言葉を切り溜息をついた。
「お前は時たま損得勘定にばかり頭を回して人の情を考えに入れないことがあるからな。そんなことを続けていると、そのうちあの子に嫌われるぞ」
「仕方がありませんよ。元々私は誰かに好かれるような人間ではありませんから」
「……僕の前でそんな哀しいことを堂々と言うな。僕がお前を嫌っているとでも思うのか」
「旭様……」
「青流だって同じだと思うぞ。……お前だって青流のことを可愛いと思っているのだろう?先刻の言葉、よほど青流のことを真剣に思いやっていないと出てこない言葉のように思えたが」
「……それでも私は、雄道様やあなたのためなら青流のことを平気で切り捨てます。そういう男ですよ、私は」
 旭はしばらく無言だった。が、やがてぽつりと呟く。
「いいじゃないか。他人の感謝に支えられる生き方でも」
「はい?」
「大切なもののためなら他人の感謝も肯定も、他に何も要らないなんてそんな生き方は哀し過ぎるだろう?望むのなら、何一つ棄てず、全て持っていればいいじゃないか」
 真摯な眼差しに、霧峰は一瞬目を見開いた後、どこか苦笑いのような顔で微笑む。
「そういうお考えもあるのでしょうね。ですが私は不器用ですので己の選んだ生き方しか出来ません。それに、例えそう望んでとしても、どちらか一方だけしか選べないという局面は必ずあるものです。あなたにもございますでしょう?そういう局面に立たされた時、他の何を棄てても選び取りたいというものが……」
 霧峰の言葉に旭は何も答えられず目を伏せる。そんな旭をどこか哀しげな瞳で見つめた後、霧峰は話を変えた。
「……それで。私の仕業だとお気づきになった上で、あなたはどうなさるんですか?」
 どこか笑いを含んだようなその問いに、旭は目を伏せたままきゅっと唇を噛む。
「……どうもしない。出来ないだろう。僕がやめろと言ったところでお前が聞くとは思えない。それに、もし今この不正を暴けたとしても……うちが潰れれば、うちで働く全ての人間が職を失くし路頭に迷う」
「その通りです。よくお分かりですね」
「……お前もおじい様も……どうしてそこまでして雪ヶ崎を大きくしたいんだ。このままでも充分じゃないか。たとえ今の時点で全ての事業から手を引いたとしても、おじい様が生きている間くらいは金に困ることはないだろう?」
「金が問題ではないのですよ。大きくしていかなければ、さらに大きなものに潰されていくだけです。強くなければ生き残れない。時代はそういう風に動いているのですから」
「……確かにそうかもしれない。強者が弱者を屠って生きていく――この世は修羅なのかもしれない。けれど、それだけではないだろう?世の中を形作っているのは人なのだから。もっと、優しい所もあっていいはずだろう?人の心に優しさが在れば、世の中だって優しくなるはずだ」
「ええ。そうですね。あなたのように優しい方が世を動かしていくのなら、きっとこの世も優しく美しいものに変わる。私も、そんな世の中を見てみたいと思っていますよ。ですから……もっと齢を重ねられて、雪ヶ崎をお継ぎになられたら、あなたがそういう世の中をお創り下さい。そのお心のままに、優しい世の中を。その時あなたを阻む障害が無いよう、私と雄道様が道を整えておきますから」
 優しい声で告げられ、旭は目を見開いた。
「……違う。僕はそんなこと、望んでいない」
 だがいくら否定しても霧峰はただ笑うばかり。旭は、泣くのを堪えるように眉を寄せ、足早にその場を去った。

 

記事続き


・前々回UPした明治時代・怪盗モノ小説(怪盗シーン編)の続きです。
 
・まだ“長編癖(=小説を書こうとするとどうしても長くなってしまう症状)”の抜けていなかった頃のものなので、今の小説より読みづらいかも知れません。その辺りはスミマセン。

怪盗モノの難しいところは、盗みというものが紛れもなく犯罪である以上「そこにどうやって正当性(?)を持たせるか」という問題が常につきまとうことだと、個人的には思っています。 
(だから盗む相手が悪人だったり、盗む品が親の形見や呪いのアイテム等やむにやまれぬ事情がある…といった事情が描かれたりするのだと思っています。)
しかしながら、主人公サイドが「絶対的に正義」というのも、自分の趣味に合わないので、悩ましいところです。

・旭の台詞にもありますが、明治時代新聞は取材が甘く、ちゃんとウラを取れていない“いい加減”な記事も多々あったようです。

・今回UPしたコレで、一応この「明治時代・怪盗ファンタジー小説」のシーン抜粋はだいたい全て出し尽くしたかな、と思います。

・津籠は小説のアイディアを出す時に「思いついたシーンをまず書き始める」ということをよくやるので、この物語に限らず、シーンのみ存在しているストーリーは結構あります。

・できれば全部ちゃんと「小説」の形にできたら良いのですが、時間的に難しいですね…。

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