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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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終末へと至る世界で逃避行中の少女に片想いした××××(プロローグ)
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JUGEMテーマ:SF/Sci-Fi/空想科学

 

 薄暗いフロアの中に、ぽつんぽつんと幾つかの常夜灯が点っている。

 
 天井に一定間隔で並ぶ、丸くて青白い灯り。非常口を示す緑と白の四角い灯り。

 それらが、この階の暗闇を照らす光の全てだった。

 
 窓の無いこのフロアは昼夜を問わず暗い。

 かつてはこの暗闇を切り取ってくれていた無数の蛍光灯も今は闇に沈み、フロアには物の輪郭がかろうじて分かるくらいのわずかの光しかない。

 
 僕は、その暗がりの中にひっそりと立ち尽くしていた。置き捨てられたマネキンのように。

 何をするでもなく、ただ見開かれた瞳に薄暗いフロアの様を映している。

 
 かつてこの“博物館”で案内役を務めていた僕に警備の役目が割り当てられてから、もう随分な年月がたつ。

 人のあまり入らなくなった博物館に案内役などもう不要。

 以前はここを訪れる子どもたちに愛想を振りまいていた僕も、今は誰もいないフロアの片隅にぽつんと佇むだけ。

 人と話すことすら久しく無く、僕の内ではかつて自分に向けられていた子どもたちの笑顔や、交わした言葉……そういったものが渦を巻いて、くすぶって、制御できずに何度も何度も脳裏に浮かぶのだった。

 
 いつもと同じ、博物館が闇に沈む閉館後のフロア内。

 僕は今日も頭の中にかつての日々の記憶を繰り返し浮かべながら孤独な時間に耐えていた。

 

 僕の頭の中では少しも褪せたり霞んだりしない、あまりにも鮮明に脳裏に浮かぶ子どもたちの無邪気な笑顔。

 しかし、幸せな回想は突然の異変によって強制的に中断させられた。

 

 まず、最初の異変は停電だった。

 唐突に、ただでさえ少ない照明が一斉に落ちた。

 

 僕は一瞬戸惑った後、すぐに警備室に連絡を試みたが、通信回線も停電の影響か、利用不能だった。

 次の行動を思案する間もなく、再び唐突に照明が復旧する。警備室とも連絡がつながり、どうやら何の異変もないらしいことが分かり、僕はただの停電だったのだろうとさして気にも留めなかった。

 
 しかし――照明が復旧してしばらくたって、僕の“耳”が奇妙な物音を拾った。

 明らかに、人の足音と分かる物音。

 この時間に見回りは来ないはずだったし、昼間でさえ人のいないこのビルで、閉館後にフロアをうろつく人間などいないはずだった。

 

 ――侵入者か……と、僕は警備室に通報する準備を整えて相手の出方を窺った。

 足音はこちらに向かって近づいてくる。妙に軽やかな靴音。そして――。

 
 ふっ、と再び照明が落ちた。フロアが闇に包まれる。

 僕は困惑した。このままでは警備室に連絡がとれない……。

 
「わきゃっ!?」

 
 足音の聞こえていた方から、小さな悲鳴が聞こえた。

 この停電は侵入者にとっても予想外だったらしい。

 

 高い、子どものような声。その声が、彼の脳裏の記憶を、揺さぶった。

 
 しばらくの間、相手は身動きひとつしなかった。

 戸惑うように、小さな衣擦れの音だけが聞こえていた。

 

 が、時間がたっても照明は復旧しない。

 やがて、躊躇うように不安定なリズムで再び足音が響きだした。

 その足音は、ひどくゆっくりと彼の方に近づいてくる。――――そして……。

 
 ごっ、と鈍い音が響くと同時にまたあの悲鳴があがった。

 今度は先程よりも派手に。

 
「ぅきゃあぁああぁ!?」

 
 音の聞こえた位置から察するに壁に頭をぶつけたらしい。

 しかし騒ぎはそれだけには止まらず、直後に物の倒れる音、更に硝子の割れる大音響がフロア中に響いた。

 
「ああぁあああぁあぁ……っ」

 
 脱力したような声が聞こえてくる。

 壁にぶつかるだけでは済まず、手近にあった展示品をひっくり返しでもしたのだろう。

 『目で見るだけでなく手で触れられる展示物』というこの博物館のコンセプトが仇になったか……。

 何を壊されたかは分からないが、音から察するにもう展示品としての用を成さないだろう。

 
「あうぅ〜。マズッたよぅ〜」

 
周りには誰もいないだろうに侵入者はそんなぼやきを漏らす。

 
「ゴメンなさい。わざとじゃなかったんだよ?」

 
 更にひとり言を続けて侵入者は壊してしまった展示物を拾い上げようと身を屈めたようだった。

 金属片を拾い集めているような音が聞こえる。

 

 硝子の破片もあるだろうに、こんな照明の落ちた中で床を手探りするのは危ないのではないか、と相手が侵入者であるにも関わらず僕はそう考えてしまった。

 案の定、すぐに短い悲鳴があがる。

 
「きゃっ」

 
 今まで聞いたものより鋭い、しかし変わらず高い声。やはり、子どものようだ、と僕は思った。

 
 子どもかもしれない……その考えは、僕の思考回路をひどく動揺させた。

 相手は侵入者。電気が復旧すればすぐにでも通報して捕まえてもらわねばならない相手なのに……。

 

 話をしなければならない。
 ――そんな必要などないはずなのに、何故か僕はそう思っていた。

 話をしなければ。笑顔を向けてもらわなければならない。

 

 ――その思考が、“欲求”と呼ばれるものであることに、この時の僕は気づいていなかった。

 
「――誰ッ!?」

 
 ふいに、侵入者が声をあげた。

 僕は戸惑う。

 こちらの存在に気づかれたのだろうか。今まで物音ひとつ立てなかったはずなのに。

 
「誰か……いるの……っ?」

 
 声は掛けてくるが、動き出す気配はない。暗闇の中動き回ることの危険性を悟ったのだろうか。

 
 僕は答えない。

 警備室に連絡も取れない今の状況で相手に見つかるのが得策とも思えなかったし、何よりも、こんな時にどう反応したら良いのか、僕には分からなかった。

 
「そこに……いるんでしょう?答えて」

 
 言葉遣いから察するに、相手は少女のようだった。

 少女は僕の返事を待ってじっと立ち尽くす。

 
 答えのない沈黙の刻がしばらく流れた後、消えた時と同じ唐突さで、照明が復旧した。

 かろうじて視界の利くようになったフロアの中を、少女が僕の方へ向けてゆっくり歩み寄ってくる。

 僕は定められたマニュアルの通りに警備室へ緊急連絡を飛ばすと、近づいてくる少女に対処しようと身構えた。

 
「……あなたは、誰?ここで何をしているの?」

 
 少女は僕のすぐ目の前まで歩いてきて、そう問いかけた。

 停電時よりはましとはいえ、薄暗い照明のせいで輪郭くらいしか分からない。

 

 相手からも、こちらの姿はあまりよく見えていないに違いない。

 薄闇に浮かぶシルエットは柔らかな曲線を描く小さな身体。まだ十代半ばくらいだろう、少女……。

 
 彼女は無言で僕の返事を待った。

 しかし、僕が一言も発さないでいると、おそるおそる指先を伸ばしてきた。

 ためらうように、僕の頬に触れてくる。

 
「――――――っ!?」

 
 その指先が僕の頬に触れるなり、少女はびくりとして指を引っ込めた。

 きっと、その感触が、あまりに硬く、冷たかったから驚いたのだろう。

 
「…………うそ。……あなた、人間じゃないの……?」

 
 その震えた声での問いに、僕は答えなかった。

 どう返答したら良いのか、その回答パターンが僕の中には存在しなかった。

 
「……うそ、でしょう?……ロボット…なの……?」

 
 指に触れた感触から、少女は僕の正体を悟ったらしい。

 相手を人間と思い込んでいたらしい少女の動揺は、僕にも充分理解できることだった。

 ――しかし、その後少女の口から飛び出した言葉は僕の思考回路を大いに掻き乱した。

 
「ロボットなのに……、あなた、何で心があるのよっ!?」

 
  ――リースヴェナ第二文化ビル産業技術史博物館。
 僕は、かつてはここを訪れる人々に館内を案内するナビゲーターを、現在は侵入者をセンサーで感知して警備室に通報するセキュリティシステムの一端を務める、自律思考型ロボット――『感情を持つロボット』を創ることを目的として実験的に作られた試作機のひとつであった……。

記事続き

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・タイトルでネタバレするとアレだったので詳しい内容を伏せていましたが、実はこんな感じの設定。
  ↓
・偶然心を持った機械人形と、他人の感情が読める少女の、終末世界の淡い恋物語(プロローグ)

 

・今回はプロローグ的な部分のみ。一応エピローグも考えてはあります。

 

・プロローグ部分に“終末感”があまり無いのは、主人公のロボットが世界情勢を教えられていないためです。

 

・タイトルをつけるなら「眠れる森の機械人形」。

 

・AIの「予め作られたプログラムに従っているだけの言動」と「心があるがゆえの言動」との違いを、果たして人間は見極めることができるのだろうか?それは「心を読む特殊能力」でも無ければ分からないものだったりするのでは…?という疑問から生まれた物語。

 

・“終末へ向かう世界の中で芽生える刹那の淡い恋の物語”ってシチュエーション、けっこう好きです。

 

・学生時代に書いたモノなので、今読むと描写が冗長な感じですね…。

(当時は「頭に浮かんだシーンを全て文字に書き起こさないと気が済まない」くらいな勢いで詳細描写するのがクセでした。)

 

・そして何げに「叙述トリック」の練習でもあるという…。

 

・主人公:RB3(アールビー・スリー。愛称:ルビー)…「心を持つロボット」を目指して開発された試作機の第3号。開発チームには「結局心は生まれなかった」と判断され産業技術史博物館に払い下げられた。

 

・ヒロイン:サラシェ…「他人の感情を読み取る特殊能力」を持つ少女。「思考」が読めるわけではなく「感情」が読めるだけ。その能力により、ルビーに「心がある」と見抜く。その能力を軍部に狙われ、叔父たちとともに逃亡中。

 

・舞台:核戦争真っ最中の近未来の地球…世界中が戦火に巻き込まれた結果「核の冬」と呼ばれる現象が起こり、世界全体が一時的な氷河期に入りつつある。

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