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言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

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「選帝のアリス」RPGルート没シーン
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誰かを、ただ待つだけの時間というものは長いものだ。

 

特に、人と話すのが得意でない私の場合、たとえ相手が10歳にも満たない男の子であっても、何を話したら良いのか分からず、戸惑ってしまう。

 

しかも相手は暗い顔で膝を抱えているばかりで、どう考えても向こうからのコミュニケーションは期待できない。

ここは私が年上として、話のきっかけを作るべきなのだろうか……。

 

「あの……えっと……この山へは、その山菜を採りに……来たのかな?」

 

竹カゴいっぱいに入った山菜を見れば聞かなくても分かるのだが、ただ“会話”をするためだけに私はそう切り出す。

すると男の子は、まるで怒られたかのようにビクッと身震いした。

 

「ご、ごめんなさい!お山へは入っちゃいけねぇって、言われてたのに……」

 

「あ……ごめん、その……叱ってるわけじゃないんだよ?ただ、その……危険な山なのに、なんでわざわざ入って来たのかな……って……」

 

ただの“話のキッカケ”が“叱責”と受け取られるとは思っていなかったので、私はあわてる。

だが、フォローするつもりで重ねた言葉も、男の子の表情をますます暗くさせるばかりだった。

 

「命の危険があるってことは分かってるよ。でも、結界の外はもうタケノコも山菜も、大人たちがみんな採り尽くしちまって、何も無ぇんだ。モンスターに襲われても人は死ぬけど、食う物が無くなっちまったって、人は死ぬだろ?だったら同じだって、兄ちゃんが……」

 

男の子の語る現実は、私の想像を超えていた。

 

「食べる物も無いって……。あなたの村は、そんなに貧しいの……?」

 

「村も元々そんな裕福じゃねぇけど、ウチは父ちゃんいねぇから余計だな。貯めといた食糧も冬の間に食い尽くしちまったし、周りから分けてもらうのも、肩身が狭くなるばかりでな……。今日も、本当は結界の先ちょこっとだけ入って、パッと採って帰るつもりだったんだ。でも、入ってみたら、あんまり山菜がいっぱいあるもんで、つい夢中になって、こんな奥まで……」

 

男の子の声は、だんだんと涙声に変わっていった。

 

どうすべきか一瞬悩んで、私は男の子に寄り添い、そっとその頭を撫でた。

 

「……大変だったね。怖い目に遭ったね。大丈夫だよ。お兄さんはきっと無事だよ。大丈夫だよ……」

 

他に慰めの言葉を持たない私は、とにかくひたすら『大丈夫だよ』を繰り返し、男の子の頭を撫で続けた。

 

これが本当に慰めになっているのかは分からない。だけど、とにかく今は、私にできる精一杯のことをしたかった。

 

少しでも男の子の心が安らげばいいと願いつつ、私はノイルが戻るまで、ずっと彼の髪を撫で続けていた…。

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・pixivさんに投稿させていただいている乙女ゲーム風小説「選帝のアリス」の没シーンです。

 

・今回載せた部分は第4章「四月は選帝のハジマリ」の軍人系キャラ“ノイル”のルート「ノイルと春のモンスター・ハント」の9段落目の後に入るはずだった部分です。

 

・男の子の兄を探しに行ったノイルを山小屋で待っているシーンです。

 

・ストーリー・テンポの都合上、バッサリ切ったので、このシーンは本編には一切入っていません。

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