コンテンツ
ヘッダ

言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

管理人が妄想したシーンやシチュエーションをショート・ストーリー(?)にしたもの。
ジャンルはファンタジー・恋愛などなど。

カレンダー

<< February 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 >>

ボディ
メインコンテンツ

記事

タイトル
タイトル
画家の恋人
記事本文

JUGEMテーマ:恋愛小説

 

 『今回は惜しかったね。次はきっと賞、獲れるよ。がんばって』……なんて、気軽に言える雰囲気じゃないね。

 
あんたがどれだけ真剣にこの作品に取り組んで、この賞に賭けてきたか、ずっと見てきたから、私も悔しいよ。

 
芸術なんてものは、いつの時代も評価する人の感性次第で、私みたいな素人がどれだけあんたの作品をすごいと思っていても、選者の目には留まらなかったりする。

 
難しい芸術論なんて私にはサッパリだけど、あんたのこの絵が、大賞に選ばれたあの作品より劣っているなんて、私にはどうしても思えないんだ。

 
……たぶん、恋人の欲目なんて入ってないよ。

 
そもそも好きな絵のタッチも画題も、観る人それぞれ違うだろうに、優劣なんて存在するんだろうか。

 
もしそれがあるとしても、そんな優劣を自分の個人的な好みに左右されずに見極められる目を、あんたの作品を選ばなかったあの人たちは、ちゃんと持っていたんだろうか?

 
ゴッホみたいに生前はてんで評価されなかった人もいるし、江戸時代の浮世絵だって、芸術として認められたのは後世、海外に渡ってからだったよね。

同時代の人の“物を見る目”なんて、だいたい皆そんなもんだと私は思うんだよ。

 
作者の肩書だとか、お偉いさんのお墨付きだとか、どれだけ有名な賞を獲ったかだとかで評価や見る目をコロコロ変えて、自分の目で、自分の心でちゃんと作品と向き合ってる人なんて、きっとそんなに多くないような気がするんだ。

 
だけど、そんな周りに流されただけの、うわべだけの評価なんて、そのうちにだんだん剥がれ落ちて、忘れ去られて、結局最後は単純な個人個人の好き嫌いの感情が、作品を淘汰していく。

 
どんなにすごい賞を獲っても忘れられていく作品がある一方で、発表された当時は美術的評価なんてちっともされていなかったモノたちが、今なお愛され続けているように……。

本当に本当の名作ってやつは、一時の流行や画壇の評価なんかに左右されず、多くの名も無き人々に愛されて、百年後も、千年後も残り続ける――そんな作品だと、私は思うよ。

 
まぁそれだと結局、作者が生きてる間に真の評価を知ることはできないって、そういう結論になっちゃうわけだけど。

 
あんた、前に言ってたよね?
『“努力は必ず報われる”っていうのは間違いで、それは単に成功者が、報われるまで努力を止めなかったというだけの話だ』って。 

 
あんたは、まだ努力を止める気は無いんだろう?
私も、止めて欲しくはないよ。

あんたは、こんな時点(ところ)で終わるべき人じゃない。
あんたのその努力と執念は、いつか報われて花開くべきだ。

 
他の誰が認めなくても、私だけはそう信じてるよ。

 
無理に背中を押す気は無いけど、放っておいたって、あんたはまた立ち上がるだろう?

 
……そういう人だから、ずっとその背中を見ていたいって、思っちゃうんだよ。

 

いつ報われるかも分からない、茨の道とも荒野の道ともつかないこの道を、あんたはどこまで行くんだろうね?

 
私は、ドキュメンタリーとかによく出てくる、献身的に偉人を支えた良妻賢母みたいに、あんたを助けてあげられる自信は無いよ。

 
元々ズボラだし、家事も上手とは言えないし、あんたのために自分の人生を投げ捨てられるかって訊かれると『うう〜ん』って悩んじゃうと思うし。

 
だけどね、それでもあんたの一番の理解者で、一番のファンでありたいって気持ちは、ウソじゃない。
あんたの夢が叶う、そのことが、私の夢でもあるんだよ。

 
私は信じてるんだ。
いつかあんたの作品が評価されるようになって、個展とかも開かれるようになって、たくさんの人が、あんたの絵を観に押しかける――そこで私は言ってやるんだ。

 
『この人、今でこそこんなに評価されてますけど、昔はコンクールで落選続きだったんですよ。それが後にこんな風になるなんて……。過去に審査された方々には、この才能を見抜く目が無かったんですかね」って……。

 
いつか絶対そんな日が来るって、私は信じてるんだよ。
だから……いつか来る、その時まで、ちゃんとずっと、そばにいさせてよね。

記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
光の宝玉に選ばれ、やがて大陸を救う“光の女王”となる少女の話(途中まで)
記事本文

JUGEMテーマ:オリジナル創作

 

 

 彼女は既に虫の息だった。
 白かったドレスは赤い花を散らしたようにところどころ血に染まり、顔からはすっかり血の気が失せている。
 もう助からないということを彼女自身も悟っていた。だが、それでも最後の力を振りしぼり、必死に地を這っていく。その目の前には、小さな川が流れていた。
 何とか川辺にたどり着いた彼女は、震える手で懐から何かを取り出した。それは、手のひら大の透明な珠。日の光を浴びて虹色に輝くそれに一瞬目を留め、彼女は小さく呟いた。
「どうか……新しき主の元へ……」
 傾けられた手のひらから珠がこぼれ落ちる。それは、とぽん、と音を立て川の水に沈んでいった。彼女はそれを見届けると、静かに目を閉じる。それが、彼女の最後の動作だった。
 彼女の手から離れた珠は、川底にたどり着くと淡く光を放った。その表面が一瞬、金色の光により描かれた文字とも文様ともつかぬもので埋め尽くされる。やがて、珠はゆっくりと川底を転がりだした。水の流れに逆らい、下流から上流へと……。まるで彼女の最後の願い通り、主を探してさまようように……。

 

 

「……光の宝玉姫が身罷られました」
 亜麻色の髪に顔のほとんどを隠した少女が感情の籠もらぬ声で告げる。同時にじゃり、と重い鎖の音が鳴った。
「ほう?死んだか。で、光玉はどうなった?」
 男は手の中で鎖を弄びながら問う。
「分かりません。……主を持たぬ宝玉の行方は私にも視ることができないのです」
 少女が言った途端、男は無言で鎖を引いた。少女が悲鳴を上げて床に転げる。その足首には長い鎖をつないだ足枷がはめられていた。
「……本当だろうな?」
「本当……です。嘘など申しません」
「まあ良い。信じてやろう。……今のところは、な」
 どこか含みのある声音で言い、男は薄く笑う。少女はうつむき、手に持った珠をぎゅっと握りしめた。
(お願い。だれか、守って。この世界を……)
 その声にならぬ願いに応えるように、少女の手にした珠に、一瞬針の先のように小さな金色の光が瞬いた。

 

 

「エルダー!そっちへ行ったわ!捕まえて!」
 少女が大声で叫ぶ。直後、激しい水音と少年の歓声が響いた。
「やった!捕まえた!アンゼリカ!早く桶を!」
 声を受け、川原に待機していた別の少女が木桶を手に少年に駆け寄る。
 少年は両腕に抱えていたものを急いで桶の中に放した。すぐに元気良く桶の水の中で泳ぎだしたそれは、一匹の鮎。一人が魚を追い込み、もう一人が手づかみでそれを捕らえる。少女たちは先ほどからそうやって必死に魚を捕まえていた。
 とは言えそれは彼女たち自身の食糧とするためではない。川に棲む魚も、森に棲む鳥や獣も、全てその地を納める領主のもの。領民が勝手に捕らえて食らうことは許されない。それがこの時代の常識だった。少女たちが捕らえているのも全て領主に捧げるための魚。
 そうやって魚を捕らえる代わりに村長からわずかの食糧を分けてもらうのが、彼女達にとって自らの食い扶持を稼ぐ数少ない手段の一つだった。
「もう一匹いた!構えて!エルダー!」
 少女はすぐにまた別の魚を見つけ、浅い川の中を裸足で駆けだす。灰茶色のおさげ髪が肩の上で跳ねた。彼女の名はマリア、十四歳。三人姉弟の長女であり、家族を支える大黒柱でもある。弟のエルダーは十一歳、妹アンゼリカはまだ七歳。両親はすでに亡く、頼れる親類縁者も知らない三人きりの家族だ。
 再び川原に戻り姉たちの様子を見守っていたアンゼリカは、ふと足元に目を留めた。そこには川辺の石と石の間に引っかかるようにして透明な珠が転がっていた。
 日の光を受け虹色の光沢を放つその珠を、アンゼリカは何の気なしに拾い上げる。その瞬間、珠の表面に金色の光で文字のようなものが浮かんだ。
「きれーい……」
「アンゼリカ!何やってるんだ!早く桶!」
 エルダーの叫びにアンゼリカはハッと我に返り、とっさに珠をエプロンのポケットにしまった。
「ごめんなさい!エルダー兄さま」
 再び桶を手に走り出す彼女のポケットの中で、珠に浮かんでいた光の文字は静かに消えていった。

 

 

 たっぷりの水と今日獲れた鮎の入った三つの木桶をひとつずつ手に持ち、姉弟は村の道を歩いていく。季節はもうそろそろ夏も終わり秋に入ろうかという頃。村人たちは夏畑に実ったエンドウ豆やカラス麦の収穫とこれから種を蒔く冬畑の準備で忙しそうに動き回っていた。
「あら、そばかす娘じゃない。またフィドルの所に媚びを売りに行くの?」
 雑草だらけの休耕地を鋤き返し冬畑の準備をしていた少女が手を止め、マリアの方へ歩み寄ってくる。マリアは顔色も変えずに言い返した。
「残念。不正解よ。私の媚びは誰かに売れるほど安くないの。あんたと違ってね」
「何ですって?」
「媚びを売りたいのはあんたの方でしょう?こんな所で無駄口叩いてる暇があるなら、さっさと仕事を終わらせてフィドルの家へ行ったらいいじゃない」
 少女はぐっと言葉に詰まる。フィドルはこの村の村長の一人息子だ。特別整った容姿ではないが、優しげな顔立ちと温厚な性格を持ち、村の少女たちには極めて人気が高かった。だが村長の家はただの村娘にとっては少々ハードルが高い。マリアたちのように特別の用でもない限りそうそう近づける場所ではなかった。
「言っておくけど、あんたの顔じゃいくらフィドルに近づいたってムダなんだからね。そこの所、よくわきまえておきなさいよ!」
 少女は悔しまぎれにそう言い捨てると、畑の中へと駆け戻っていった。少女の背中を見送り、マリアは小さくつぶやく。
「分かってるわよ。元からそんなつもりないし」
 マリアは自分の容姿を十分自覚していた。
 ただでさえ十人並みな容姿だというのにろくなものを食べないせいで手足は棒切れのように細く、身体には女らしい丸みもない。肌は白いがそのせいで日に焼けると顔中にそばかすが浮く。髪は灰色がかった茶色でツヤも無く、おまけにひどいくせっ毛で、上手くまとめ髪にすることもできずに、いつも何だかボサッとしている。
「……わたし、あの人きらい。いつも姉さまのこと悪く言うんですもの」
 アンゼリカの言葉にマリアは苦笑した。
「仕方ないわよ。私たちはしょせん『よそ者』だもの。おまけにしょっちゅう村長の家に入り浸ってるし。玉の輿を狙ってる娘たちからしたら面白くないんでしょう」
 マリア達姉弟はこの村の出身ではない。幼い頃、母親とともに戦火を逃れてあちこちをさまよい歩いた末、この村にたどり着いたのだ。村へ来る前の記憶はあまりにもおぼろげで、マリア達からしてみれば夢のようにしか思えない。だが『この村の生まれではない』という事実はマリア達姉弟の上に重くのしかかっていた。現に今、マリア達は自分の農地も家も持たず、村長の厚意にすがって何とか暮らしを立てている状態だった。
「やあ、マリア。そろそろ来る頃だと思っていたよ」
 村長の息子フィドルはマリア達の訪問を知ると目を輝かせて出迎えた。
「フィドルお兄ちゃん、こんにちは!」
 マリアより先にアンゼリカが満面の笑みで挨拶する。フィドルは実の妹を見るように目を細めて微笑みかけた。
「こんにちは、アンゼリカ。今日も美人さんだね」
 その言葉にアンゼリカは頬を染めてはにかむ。
「はい、お約束の鮎七匹よ。これだけ獲るの苦労したんだから、少しくらいおまけ付けてよね」
「君は相変わらず愛想のカケラもないね。もう少しアンゼリカを見習って笑顔にしてればいいのに」
「愛想が無くて悪かったわね。でもアンゼリカと違って不器量な私が笑ったところで、誰も喜ばないでしょ」
「そんな風に自分を貶めるもんじゃないよ。確かにアンゼリカやエルダーとはタイプの違う顔立ちだけど、君の瞳には他の人間にはない強い輝きがある。それは君だけの、君にしか無い魅力だ」
 真剣に諭されて、マリアは毒気を抜かれた気分になる。フィドルのこういう冗談もロクに通じなさそうな生真面目さが、苦手でもあり、でも、時々ありがたくもある。
「……ありがと。そういうこと言ってくれんの、あんただけだわ。お世辞でも嬉しい」
「…………お世辞なんかじゃ、ないんだけどね……」

 

 

「フィドルお兄ちゃんって、マリア姉さまのことが好きなのかなぁ?」
 洗濯物を畳みながらアンゼリカがつぶやく。マリアは針を手に繕い物をしながら、けらけらと笑った。
「何言ってんのアンゼリカ。そんなわけないでしょう。フィドルだったら村の女の子よりどりみどりなのに、わざわざ私みたいな十人並み以下の女を相手にしたりしないわよ」
「でもフィドルお兄ちゃん、姉さまの前でだけ態度がちがうのに……」
「……肝心の姉さんがこれじゃ、フィドル兄ちゃんも報われないなぁ。……アンゼリカ、大丈夫だよ。姉さんの方には全くその気がないから。アンゼリカが大人になる頃にはフィドル兄ちゃんも諦めてるって。チャンスは絶対来るさ」
「って、まさかアンゼリカ、あなた、フィドルのことが好きなの……」
 驚いて顔を上げた瞬間、マリアは思わず持っていた針で自分の指を思いきり突き刺してしまった。
「痛ッ!」
「大丈夫?姉さん。何やってるんだよ」
 指先に見る間に赤い血の玉が盛り上がる。だがマリアはそれには構わず必死な表情でアンゼリカにつめ寄った。
「ダメよ、アンゼリカ!あなたは私と違って容姿に恵まれてるんだから、こんな田舎の村長の息子の嫁なんかで終わっちゃダメ!あなたの顔だったら領主様に見初められて奥方に迎えられることだって夢じゃないんだから!」
「でも、わたし結婚するならフィドルお兄ちゃんのお嫁さんがいい」
「お願いよ、アンゼリカ。あなたが絶世の美女に育って、玉の輿に乗って、おとぎ話のお姫さまみたいに幸せになるのを見るのが私の夢で生きがいなんだから!」
「自分に叶えられない夢を妹に押しつけるのはやめた方がいいよ、姉さん。それに領主の奥方なんかそんないいもんじゃないよ。血なまぐさい槍試合を観戦しなきゃいけなかったり、狩に同行しなきゃいけなかったり、いざという時には領地を守るために兵を指揮して戦わなきゃならないんだよ?アンゼリカには絶対無理だって」
「他人事みたいに言ってるけどね、あなたにも私は期待してるのよ、エルダー。あなたの顔ならそのうちきっと、貴族の姫君だって落とせるわ。身分的に結婚は無理でしょうけど、取り入って上手いこと良い職や地位を手に入れられれば……」
「姉さん、黒い……。腹黒いよ……。僕、そんな下心と謀略にまみれた人生送りたくないよ……」
 アンゼリカは上の姉弟ふたりの会話がさっぱり理解できないらしく、きょとんとした顔で見つめていた。が、ふと思い出したようにエプロンのポケットから例の珠を取り出した。
「そうだ、マリア姉さま。今日、川ですごくきれいなものを拾ったの」
「え!?何、ソレ、綺麗。何だかとても高価そうね……」
 マリアが目をきらきら――否、ぎらぎらさせて珠を受け取る。その時、指先から流れる血の一滴が珠に触れた。瞬間、珠の表面がまぶしいほどの光の文字で埋め尽くされた。
「な、何!?」
 それはこの大陸のいかなる国の文字とも異なるものだった。
<血液の接触を確認。血液認証を開始します>
<登録済みの血統情報と照合中>
<……一致しました。よってマリア――を当端末の新しい管理者として登録致します>
 表示されたその情報を、三人が理解することはなかった。
「うわぁー……きれーい」
「ちょっ、姉さん!アンゼリカ!それ、何かヤバそうじゃない!?離れた方がいいよ!」
 エルダーが叫ぶ。だがマリアの目は珠に釘付けになってしまっていた。
『――光の……に、なって』
 頭の中に、声が聞こえる。今にも絶えそうにか細い、女の声だ。
『私の代わりに、この国を救って。新しい、光の……』
 一瞬、脳内に川辺に倒れ伏す白いドレスの女の姿が浮かぶ。
「……何?今の……」

 

 

記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
腹黒策士を気取る天然少女と、振り回されっぱなしの幼馴染少年
記事本文

JUGEMテーマ:ショート・ショート

 

 思えば、可愛げのない小学生だったと思う。

 

「やっぱ、なるなら腹黒策士よね!」
「私はリーダーよりも、それを陰で操る参謀役がやりたいの!」

 

 齢10歳未満にしてそんなこと言う女子、今の私なら完全にドン引きしてる。
 でも、そんな私の、他人とはちょっと違う感覚を、いつもニコニコ受け入れてくれて懲りずに(恋愛的な意味ではなくて→)つき合ってくれたのが、流星だった。

 

 幼い頃はただ都合の良い子分のように思ってきたけど……ある日、気づいてしまった。

 彼に対するこの想いが、私の初恋なのだと。

 

 気づいてしまった以上はしかたない。
 “腹黒策士”の名にかけて、流星を絡め取るため、自分史上最高の策略をめぐらせる。

 
 失敗は許されない。手に入れるか、失うか、ふたつにひとつだ。

 それでも、どうしても欲しいんだ。今のままの関係じゃ――幼馴染なんかじゃ、足りない。

 
 他の友達と同列に扱うんじゃなく、もっと、心のすべてを私に向けてくれないと。

 

 ――でも、具体的に、何をどうしたらいいんだろう。

 
 まずは私を恋愛対象として見てもらうことが前提。
 できれば異性としての魅力を感じてもらえれば――つまり“萌え”てもらえれば上々。
 だけど、今まで散々腹黒策士を気取ってきたこの私が、いきなり萌えキャラのような言動をとっても、流星を不審がらせるだけだろう。

 

 ごくごく自然な態度で、それでいてさりげなく流星が萌えるような言動をとる――はっきり言って相当な修行が必要だ。
 そもそも、流星の萌えツボが分からない。
 ……ここはとりあえず、「ギャップ萌え」だとか「萌え袖」だとか、世間一般的な「萌え」を少しずつ、不自然でない程度に盛ってみるか。

 


 

 最近、幼馴染の天真の様子がおかしい。

 

 ひとり何かを企んでニヤニヤしているのはいつも通りなのだが……、何だか最近妙に女の子っぽくなったと言うか……。
(まぁ、そもそも元々女子なんだが……。あいつ、女子とか男子とかいう垣根を超越して“神楽坂 天真”以外の何者でもないしなぁ……)

 

 その上、何と言うか……俺に対しての態度がナゾ過ぎるのだ。

 

 お化け屋敷に自分から誘ってきたかと思えば、超棒読みセリフで『きゃーこわーい。私じつはこういうのにがてなのよねー』などと『なら何で自分からそこに誘ってるんだよ!?』と言いたくなるような態度をとってきたり……

 
 サイズが合わないのか、腕部分がダボっと長くなった服の袖を、俺の前でやけにバタバタ振ってみせたり……

 

 あいつが俺のことを好きで、俺に好意を持たれたくてあんなことをしている……なんてわけ、ないよなぁ……。

 
 これまでも、あいつの脈ありげな態度にいちいち期待してきたが、いつも、ただの天然だったり何かの罠だったもんなぁ……。

 

 昔からあいつの、頭がいいくせに肝心なところで天然な性格や、悪だくみに振り回されっぱなしで、なのに懲りずに(恋愛的な意味ではなくて→)つき合ってきたのは、いわゆる『惚れた弱み』というヤツなのだが……あいつはおそらく俺の気持ちになど、未だにこれっぽっちも気づいていない。

 
 こっちは結構分かりやすく態度に出しているつもりなんだが……あいつ、頭いいくせにヘンに鈍いからな。

 

 幼馴染とは言え、こんなにも長い間、俺とのつき合いをいつでも優先してくれているのだから、全くの“脈無し”ではないはずだ。
 ここらでいっそ、告白でもしてみるべきなのだろうか……。
(……でも天真のことだからな……「うん。私もあんた好きー」とか、テンプレな“ラブとライク勘違い”の挙句、軽く流されそうで恐い……。)

 

記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
悪友で腐れ縁で、今日から俺のヨメな相棒へ
記事本文

JUGEMテーマ:超短編小説

 

 

 「お前、ヨメのもらい手なくなるぞ」って言ったら「じゃあ、あんたにもらわれてあげるからいいよ」なんて、冗談で返されたことがあったよな。 
 あの時はそれが本当になるなんて1ミリも思っちゃいなかったのにさ。人生、何がどう転ぶか本当に分からないもんだ。

 

 

 “なれそめ”なんて聞かれてもさ、正直お互い覚えちゃいないよな。
 気づけばご近所同士、男も女もなく、いつも一緒につるんでてさ。

 
 そういう幼馴染的な女子のこと、フツウは『妹みたい』って表現するんだろうが、お前って奴はとてもそんな可愛らしいモンに収まっちゃいなかったよな。
 良くて『弟』悪くて『悪友』。あの頃のお前を女子として意識したことなんか、誓って一度も無かったよ。

 

 サバサバして、ノリが良くて、何でも面白がってくれるお前は、下手な男子よりもつるみやすくて、気づけばいつも一緒に行動してたよな。

 

 
 中学生になってからは“つき合ってる”て誤解もよくあったけど、そのたびに二人で笑って一蹴してたっけ。

 
 似た者同士の俺とお前の間で、恋だの愛だのなんてうすら寒い気がして、その可能性を考えることすらしなかったよな。
 俺だけじゃなく、きっと、お前も。

 

 お互い高校生にもなれば、それぞれにいろいろあって、互いの恋人に遠慮して距離を置いてたこともあったっけ。

 
 お前とつき合うなんて奇特な男もいるもんだと、当時は思ってたもんだけど、お前のそういうサッパリした気性が、案外一部の男子にウケてたんだってな。

 
 俺も女心がサッパリ理解できなくて、彼女といるよりお前といる方がラクだと思ってたくらいだから、何となく分かる気がするよ。

 

 

 お前を女として意識したのは、いつだったかな……。

 
 いつも一緒にいたはずだったのに、いつの間にか互いの知らないつき合いや時間が増えて……。
 知らない間にお前が開けてたピアスにびっくりしたりして……。

 
 ピアスだけじゃなく、かかとの高い靴も、短いままだけど垢抜けた髪型も……いつの間にか、俺の知らないお前が増えてた。
 俺の知らない間にお前が通り抜けてきた、いくつもの恋がお前を変えてきたんだと気づいた時、何とも言えない気分になったよ。

 
 言っとくけど、たぶん嫉妬とかじゃないからな。たぶん、だけど…………。

 

 

 俺の戸惑いがお前にも伝わったのか、お互いヘンにぎこちなくなった時期もあったよな。

 
 お前の方でも俺のことを意識してるのが何となく分かって……妙にくすぐったい気分だった。
 いい雰囲気になりかけたことも何度かあったけど……これが恋になるって確信が持てなくて、なかなか一歩が踏み出せなかったな。

 
 だって、今さらお前と、なんて……どんな顔して何をどう言えばいいのか、マジで分からなかったんだよ。

 

 

 「いっそのこと俺らもう、つき合うか?」なんて軽いノリのメッセージだったのは謝るよ。
 あれでも実は相当に悩んで迷いまくった挙句の文章だったんだぜ。

 
 あの後の既読スルーによる数分間の放置プレイはマジ、地獄かと思ったよ。
 さらにそこから直接部屋に乗り込んで来られてのダメ出しの嵐だったからな。

 
 OKはもらえたものの、結婚したら尻に敷かれる予感しかなくて、早くも後悔しかけたよ。
 ま、今はそれも“一つの幸せの形”なのかも知れないと、もう半ば諦めの境地でいるけどな。

 

 

 ……にしても、ウェディング・ドレスってのは不思議なモンだな。
 お前だってことは分かってるのに、何だか別人みたいに清楚に見えるよ。

 
 ……「あ、さては見惚れてたっしょ?」って、お前な……。
 そういうこと言うから、こっちが素直にホメられなくなるんだろうが。

 
 まったく……。見た目はいつもの倍・綺麗でも、中身は相変わらず、お前以外の何者でもないな。
 けど、まぁ、そんなお前だから、肩の力を抜いて気楽にやっていけるんだろうけど。

 

 

 とにかく、まぁ今日からはよろしくな。“俺のヨメとして”……ってのも、何か微妙に違和感があるな。
 何でだろう?間違いなく事実のはずなんだが、ナゼかしっくり来ない。

 
 お前にピッタリ来るのは……うん、そうだな。
 これまでもそうだったように、俺の“人生の相棒”として、これからもどうか、よろしく頼むな。

 

記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
踊り場の踊り子に捧げるモノローグ
記事本文

JUGEMテーマ:自作小説

 

 マンガやアニメだとよくある、生徒が出入り自由な屋上って、現実の学校でどのくらいあるんだろう?
実際、ウチの学校はカギがかかってて出られないし。

 
――だからこそ、屋上へ通じるこの階段は、普段誰にも使われなくて、ちょうどここの掃除担当だった君の、秘密の踊り場だったわけだけど。
 
最初にそれを見た時は、正直面食らったよ。
文字通り踊り場で踊っている人間がいるなんて。

 
だけど君のその踊りは、どんなプリマのバレエより、どんなメダリストのフィギュアスケートより、ずっとずっと美しく見えて‥‥そのことにも驚いたんだ。
それが完全独学の、見よう見真似の踊りだと知った時には、さらにその数倍驚いたけど……。
 
僕に見られていると気づいた時の、君の慌てふためき(テンパリ)ようは、すごかったね。

 
思わず笑いをこらえるのに必死になってしまったけど……今思えば、あの時僕は、ただ単純に可笑しがっていただけじゃなく、君のその慌てぶりを『可愛い』なんて思っていた気がする。

 
だって、それから君のことが頭から離れなくなってしまったんだから。
 
近づいてみると、君は思っていた以上に不思議な子だった。
ただ無邪気なだけかと思えば、時々恐ろしいくらいシビアに現実を見つめている。

 
まるで、この世界のことを何も知らない代わりに常識にも何ものにも縛られていなかった幼い頃の心のまま、身体だけが成長したような――そんな人間に見えたよ。

 
同じものを見ていても、僕と君とでは感じることが全然違っていて……そんな君の目に映る世界を――きっと僕が見ているより、ずっときらきらして綺麗に見えているであろう世界を、僕も知りたいと思ったんだ。
 
だけどこの世界は、君のような異質な個性を、そう易々と受け入れてくれる所じゃなかった。
同年代の女子の中でちょっと“浮いていた”君は、クラスの女子のリーダー格に目をつけられて、(いじ)めのターゲットにされてしまった。
 
小中学校交流会での朗読劇では“シンデレラのイジワルな継母や義姉”の役を皆嫌がっていたくせに、現実ではびっくりするほどあっさりと、自ら虐め役に回ってみせる彼女たちの思考回路が、僕にはさっぱり理解できない。

 
しかも彼女たちのやり口は随分と陰湿で巧妙で……僕は笑って誤魔化す君がそんな目に遭っていただなんて、しばらく全く気づけずにいたんだ。
 
やっと気づいてからも、僕は君をロクに助けることもできやしなかった。

 
僕が気づいて口出しすれば、彼女たちはバツが悪そうにその時だけは退いていったけど……結局僕の目の届かない所で虐めは続いていた。それどころか、“男子に庇ってもらえる女子”は余計に嫉妬を買って、ますます虐めがエスカレートするばかりだって……君から聞いて、僕は愕然としたよ。
 
僕は、どうすれば君を助けられたんだろう。

 
「逆効果にしかならないから、もう余計なことしないで」と言われて、僕は君に拒絶されたように感じてしまった。
僕が君のためにしてきたこと全てを、その君自身に全否定されたような気がして……。

 
僕はその心の痛みに耐えかねて、思わず君から距離をとってしまった。
……情けないヤツだと、本当、自分でもそう思うよ。
 
君が学校へ来なくなった時は、正直ホッとしてしまったのも事実だ。
君が傷つく姿をこれ以上見なくて済むと思ったのと、君と顔を合わせるのが恐かったのと、君を救えない無力な自分にこれ以上絶望したくなかったのと……今思えば、ただ現実逃避していただけなのかも知れないけど。
 
だけど、君が教室にいない日が二日続き、三日続き……数えるのも忘れてしまうほど増えていくにつれ、何だか喉が渇いてたまらないような、もどかしいほどに何かに飢えている自分に気づいたよ。

 
こんなどうにもならない状況になって、ようやく僕は気づいたんだ。
僕にとって君が、どれほどの存在なのかということに。
 
きっと今この瞬間も、一番辛いのは僕じゃなくて君の方だ。
未だに君を救う方法一つ見つけられない僕に、嘆く資格なんて、きっと無い。

 
だけど、どうしようもなく思ってしまうんだ。君に会いたい、と。
君に学校で嫌な目に遭って欲しくないっていう、その気持ちも紛れもなく真実なのに。

 
矛盾だらけで思考の逃げ場がどこにも無い、八方塞がりのこの想いを、僕は今も捨てることも投げ出すこともできずに抱え込み続けている。
 
今日もまた、気づけばこの階段を上っている。
ここに君がいないことなんて、分かりきっているのに。

 
君のいないこの踊り場は、物音ひとつ無く静まりかえっていて、まるでこの空間だけ、学校という世界から切り離されてしまっているみたいだ。

 
だからかな。教室に来なくなった君とも、ここでなら会えるような、そんな気がしてしまうのは。
……ばからしい妄想だと、自分でも分かってはいるのだけど。
 
思えばおかしな話なのかも知れないな。

 
病気を克服する方法なら、数えきれないほどの人間が研究して多くの成果を出しているのに、虐めを根絶する方法なんて、そもそも真面目に研究している人間がいるのかどうかすら知らない。
多くの人間が苦しんで、時には命を落とす人さえいるって所は、病気と何も変わらないのにね。

 
大きな事件が起きた時だけ大騒ぎして、でも使えそうな解決策は何一つ出ないまま、そのうちに忘れていく。
もっとも僕だって、君のことがなかったら今ほど真剣に考えていたとは思えないから、赤の他人の無関心さを咎められる義理なんて無いんだろうけど……。
 
今日も僕は独りここで君をこの場所に取り戻す方法を探している。

 
考えても考えても、答えどころか糸口ひとつ見つけられなくても。
あの時守れなかった君への償いのように、ただ君だけのためにこの頭を動かしている。
そうしているとそのうちに、あの日ここで踊っていた君の幻が、踊り場の風景に重なって浮かんでくるような気がするんだ。
 
……もう、チャイムが鳴ってる。そろそろ戻らなくては。

 
重い足取りで階段を下り、途中まで来たところで、僕はいつも足を止める。
そうしていつも、振り返ってしまうんだ。
何度見たところで君がいるはずもない踊り場を、それでもまた、振り返ってしまう。
 
明日もたぶん、君は来ないだろう。
そして僕はまた、ここへ来てしまうのだろう。

 
君にとっては辛いこの学校(ばしょ)で、『会いたい』なんて無責任に願う(・・)ことはできない。
ただ僕は、待って(・・・)いる。

 
明けない夜が無いように、覚めない悪夢が無いように、いつかこの状況が破られる日を。

 君とまた当たり前に会える日を。

 
奇跡を夢見る子どものように、無力に、他力本願に、ただひたすら待ち続けているんだ。

 

記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
乙女ゲーム風小説・貴公子系キャラ攻略ルート(宮廷ロマンス風ルート)没シーン
記事本文

JUGEMテーマ:恋愛小説

 

「次は、エポルエ領国のエクナルフ宮殿です」

 

 そう言われて連れてこられた先は、まるでヴェルサイユ宮殿のような西洋風の宮殿だった。

 

 フランス革命前後のヴェルサイユを舞台にした某少女漫画の影響で世界史――特にヨーロッパ史に傾倒していった私にとっては夢のような場所だった。

 

「うわぁー……すごい。“異世界”なのに、すごくロココ調っぽい装飾……。素敵……。あ、でも、あっちのチャペルっぽい建物はゴシック様式的かも……。庭園の造りはフランス式かな……?あの生垣は薔薇……?あ、でも、この世界に薔薇は無い、かな?」

 

「いいえ、薔薇で合っていますよ。あの植物は貴女方の世界からこちらの世界にもたらされたものですから」

 

 興奮して一人ではしゃいでいた私は、イクスの言葉に我に返り、ぼっと顔を赤らめる。

 

「あ……その、すみません。一人で興奮してしまって。あの……私、こういう宮殿に憧れていて。でも、実際には行ったことがなくて、その……」

 

 恥ずかしくて顔を上げられない。

 呆れられてしまったのではないかと不安で、イクスの目を見るのも恐かった。

 

「我々の世界が貴女方の世界と類似しているのは、二つの世界が深い所で繋がり合っていて、我々が常に意識の深層で貴女方の世界――“地球”の影響を受けているからだと、リア文書には記されています。エスリヴェールの建築様式が貴女の世界のものと似ているのも、その表れなのかも知れませんね」

 

 イクスは呆れたり咎めたりするどころか、私のひとり言を拾って会話にしてくれた。

 その、相手に恥をかかせない気遣いに、かえって自分のコミュニケーション能力の低さを思い知らされた気がして、少し凹む。

 

 私ばかりがフォローされていて、私の方はイクスに何もできていない。

 イクスはこんな私と一緒にいて、楽しいのだろうか……?

 

「エポルエの春花の宴は、いつも趣向を凝らしていて見応えがあるのですよ。今回はどうやら、庭園でのガーデン・パーティー形式のようですが……」

 

記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
愛にあふれたこの世界で、君と
記事本文

JUGEMテーマ:習作短編現代恋愛小説

 

ねぇ、知ってる?

 
夏目漱石は「I love you」を「月が綺麗ですね」って訳したんだって。
すっごいナナメ上をカッ飛んだ、アクロバティックな訳だよね。


でも、何となく分かる気がするな。

 

君のことを愛してる、なんて、日常の中でフツウに口にするには、あまりにも気恥ずかしくて重たい言葉だもん。 

だから、こんな風に日常にありふれた言葉で、さりげなく、自然に、君への好意が伝わればいいなって思うよ。


「日が暮れるの、早くなったね。もう、冬なんだね」

 

こんなにささいな、どうでもいいような言葉だって、一言でもいいから君と話していたいんだ。

一言でも多く、君と言葉を交わして、君と何かを共有していたいんだ。


「見て、あの空。下の方がグラデーションになってる」

 

日が暮れていく時の空の、綺麗なグラデーションが私、好きなんだ。
今日、君と一緒に見られて良かった。

 
好きなものを好きな人と一緒に見られるのって、ちょっとした奇跡だよね。

ふたりとも受験生だから、こうして放課後一緒に帰るくらいしか時間がとれないのが寂しいけど……。


「そう言えば、今日の模試、どうだった?」


本当はね、不安もあるよ。
受験のこと、将来のこと、君との、この先のこと。

 

君と一緒の学校へ行けるか、まだ分からないし。
卒業して環境が変われば、今までと同じではいられなくなるかも知れない。

 

だけど、だからこそ余計に、今のこの時が大事なんだ。
一分一秒だって忘れないように、胸に刻みつけてるんだよ。
いつかの未来に、今の私のことを、ちゃんと思い出せるように。


「あっ。あそこに光ってる銀の星、あれって金星かなぁ?」

 

宵闇の、不思議な透明感のある紺碧の空の中、細い針の先のように小さく鋭く光る星がある。
冬の凍てついた空気の中、ちらちらと哀しげに瞬く星。

 

あの星には確か、とても美しい別名があったはず――

 

「金星だよ。 宵の明星 ( イヴニング・スター ) とも言うんだ」

 

ぼんやり思い出そうとしていた、その美しい名前を、君がさらりと口にしたから、何だか心がホワッてなった。

この感じ、何だか似ている気がする。


そうか。たぶん、きっと“月”じゃなくてもいいんだよね。

きっと星だって、空だって、夕日だって、街の灯りだって、花だって、風だっていいんだ。


君と一緒に、綺麗なものを見ていたい。
美しい何かを見つけたら、君にも教えてあげたい。
私が綺麗だと思ったものを、君も綺麗だと思ってくれたらうれしい。

 

――私がきれいだと思って覚えていた星の名を、君が ( ) っていたことが、こんなにも今うれしいように。


「そうなんだ。…… きれいだね ( ・・・・・ )

 

これ ( ・・ ) が好きだということなら、この世界はもしかして、 愛の告白 ( I love you ) にあふれているのかも知れない。

 

「……あぁ。綺麗だね」


君がそう言って笑ってくれる。
それだけで私は嬉しくなる。

 

もっともっと君と共有したいな。
この世界の、たくさんの綺麗なものを。

この先も、できれば、ずっと……。

 

 


VOICEROID東北きりたん に朗読してもらって動画にしたものです。>
記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
地球を侵略に来た異星人たちと戦う少女の話(のワン・シーン)
記事本文

JUGEMテーマ:妄想話

 少女は男の首に刃の先を突きつけ、告げた。

 

「あなたの負けよ。降伏なさい」

   

 男は荒い息ながら、鋭い目で少女を睨みつけ、言い放つ。

 

「殺すが良かろう!降伏など誰がするか!!」

   

 少女は醒めた目で男を見つめ返した。

 

「あなたに選択を迫っているわけではないわ。命令よ。降伏なさい。嫌だと言っても殺してなんかあげない。自分で命を断つ気もないくせに、命を粗末にするような台詞、吐かないでちょうだい」

   

 男は呆然とした。

 周囲では『殺せ』という声がさかんに聞こえる。

 

「降伏したって後で裏切るぞ。他の奴らの言う通り、殺した方が良かろう」

 

 男が突き放すように言うと、少女は瞳に怒りを宿し、冷たく言った。

 

「自分では何もせず、平気で他人に手を汚せ、なんて言う人達の言葉に従う義理など無いわ。どうして私が手を汚さなければならないの」

 

 そういう問題か、と思わずにはいられなかったが、それでも男は、その少女の尊大とも言える言い様、怒りに燃える瞳に釘づけとなってしまった。

 

 なんという少女だろう。戦闘センスだけではない。こんな少女はそうそういない。

 

「あなたは一体……。もしや、この惑星の王族の方では……?」

 

 少女の、あまりにも“揺らがない”態度は、何か毅いものを感じさせた。何者にもまつろわぬ、王族のような……。

 そこでそう尋ねたのだが、少女はその問いに目を丸くして沈黙した。

 

「……あなたは生まれ持った身分で人間を評価すると言うの?私がこの星のお姫様なら、あなたは素直に降伏してくれるの?」   「………………」

 

「身分なんて、力有る者なら自らの力で掴み取ることができるものよ。普遍のものなどではない。今、私には身分も肩書も無いけれど、あなたに丸腰で挑んで勝ったわ。その点だけでも認めて、おとなしく従いなさい」

 

「はい」

 

 男は思わず答えていた。思わずそう言ってしまうだけの何かが、彼女にはあった。

 

「よろしい」

 

 少女はそこで初めて、にっこりと微笑んだ。

 先ほどまでの戦いぶりが嘘のような、どこかあどけなくすら見える、愛らしい笑顔だった。  

 

記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
あなたの声は、フルートの吐息。
記事本文

JUGEMテーマ:ものがたり

 

 何であんな無愛想な男が好きなの?なんて、友達にはよく言われるよ。

 
 あなたはフルートに関しては超がつくほどの天才だけど、コミュニケーション能力に関しては完全に人並み以下で、人と話している時間より、フルートを奏でている時間の方が長いくらいに無口な人だから。

 

 今まで何人かの女の子が、あなたの才能に惹かれてつき合ったけど、皆あなたの口数の少なさと無表情ぶりに困惑して、だんだん離れていったよね。一時期「来る者拒まず、去る者追わず」なんて噂されていたけど――私、知ってたよ。

 あなたが恋人を失うたびに、本当は傷ついていたことを。

 

 あなたはたぶん、とても不器用な人なんだろうね。

 あるいは感情を表に出すのが恐い、のかな?

 私も同じだから分かるよ。

 
 べつに心が“無い”わけじゃないのにね。

 ただ表に出せていないだけで、頭の中ではいろいろな感情が渦巻いているのにね。

 
 感情を苦も無く表に出せる人たちには、なかなか分かってもらえない。

 冷めてるだとかクールだとか、愛想が無いとか誤解されて、離れていかれたり、的外れな文句を言われたり……。
 そうすると、余計に感情を表すのが恐くなって、結局は悪循環。

 あなたも、そうだったりするのかな?

 

 あなたは周りから感情が乏しい人のように言われているけれど、本当は誰よりも豊かな感情を持っている。
 私には分かるよ。あなたのフルートを聴けば分かる。
 あなたの心は言葉に乗って口から外へ出る代わりに、フルートの音色に乗って、音楽としてあなたの外に出て来るの。

 

 あなたの音を初めて聴いた時のこと、今でもよく覚えてる。
 こんなにあたたかい“声”を聴いたのは、初めてだと思った。

 あなたのフルートを聴くまでは、それが人間の吐息によって奏でられているということさえ、忘れていたのに。

 
 あなたの奏でる笛の音は、人の息づかいそのもの。喜びや悲しみに震える人間の、声無き声。
 あなたの胸から零れたそれは、フルートの銀管の内を通り抜け、この世界の空気を震わせ、妙なる音色となって響き渡るの。

 

 言葉で感情を表すのが下手な人は、その代わりに別の方法で感情を表現することが上手くなるのかも知れない。
 他の人たちは、技巧がどうの、表現力がどうのと褒めそやすけど……。あなたはきっと、自分の心のおもむくままにフルートで“歌って”いるだけ。
 あなたの奏でる音が皆の心を打つのは、きっとそれだけ豊かな心が、あなたの中に在るからだと、私は思うんだ。

 

 今日もあなたの“声”が聴こえる。あなたの吐く息。あなたのフルートの歌う声が。
 千の言葉よりも雄弁に、あなたの心を伝えているよ。

 気がついているのは、今は私だけかも知れないけれど。

 

 私があなたに気づいたように、いつかあなたも私のことに気づいてくれるといいな。
 今はまだ、想いを伝える勇気も無い私だけど、一つ、ささやかな野望を持っているんだ。

 

 いつか、あなたと一緒のステージで演奏したい。
 天才のあなたと同じステージに立つには、きっと血のにじむような努力が必要だろうけど……。

 
 あなたのフルートの優しい吐息と、私の奏でる音とが、重なり合い、やわらかく溶け混じって、空気を震わせ、この世界に響く――それを想像するだけで、不思議と、どんな努力も全然苦しくなくなるんだ。

 

 気づいてね。あなたを想って紡ぐ音に。
 あなたへの想いに震える、この心の“声”に……いつか、どうか、気づいてね。

 

記事続き
続きを読む >>
タイトル
タイトル
「選帝のアリス」RPGルート没シーン
記事本文

 

誰かを、ただ待つだけの時間というものは長いものだ。

 

特に、人と話すのが得意でない私の場合、たとえ相手が10歳にも満たない男の子であっても、何を話したら良いのか分からず、戸惑ってしまう。

 

しかも相手は暗い顔で膝を抱えているばかりで、どう考えても向こうからのコミュニケーションは期待できない。

ここは私が年上として、話のきっかけを作るべきなのだろうか……。

 

「あの……えっと……この山へは、その山菜を採りに……来たのかな?」

 

竹カゴいっぱいに入った山菜を見れば聞かなくても分かるのだが、ただ“会話”をするためだけに私はそう切り出す。

すると男の子は、まるで怒られたかのようにビクッと身震いした。

 

「ご、ごめんなさい!お山へは入っちゃいけねぇって、言われてたのに……」

 

「あ……ごめん、その……叱ってるわけじゃないんだよ?ただ、その……危険な山なのに、なんでわざわざ入って来たのかな……って……」

 

ただの“話のキッカケ”が“叱責”と受け取られるとは思っていなかったので、私はあわてる。

だが、フォローするつもりで重ねた言葉も、男の子の表情をますます暗くさせるばかりだった。

 

「命の危険があるってことは分かってるよ。でも、結界の外はもうタケノコも山菜も、大人たちがみんな採り尽くしちまって、何も無ぇんだ。モンスターに襲われても人は死ぬけど、食う物が無くなっちまったって、人は死ぬだろ?だったら同じだって、兄ちゃんが……」

 

男の子の語る現実は、私の想像を超えていた。

 

「食べる物も無いって……。あなたの村は、そんなに貧しいの……?」

 

「村も元々そんな裕福じゃねぇけど、ウチは父ちゃんいねぇから余計だな。貯めといた食糧も冬の間に食い尽くしちまったし、周りから分けてもらうのも、肩身が狭くなるばかりでな……。今日も、本当は結界の先ちょこっとだけ入って、パッと採って帰るつもりだったんだ。でも、入ってみたら、あんまり山菜がいっぱいあるもんで、つい夢中になって、こんな奥まで……」

 

男の子の声は、だんだんと涙声に変わっていった。

 

どうすべきか一瞬悩んで、私は男の子に寄り添い、そっとその頭を撫でた。

 

「……大変だったね。怖い目に遭ったね。大丈夫だよ。お兄さんはきっと無事だよ。大丈夫だよ……」

 

他に慰めの言葉を持たない私は、とにかくひたすら『大丈夫だよ』を繰り返し、男の子の頭を撫で続けた。

 

これが本当に慰めになっているのかは分からない。だけど、とにかく今は、私にできる精一杯のことをしたかった。

 

少しでも男の子の心が安らげばいいと願いつつ、私はノイルが戻るまで、ずっと彼の髪を撫で続けていた…。

記事続き
続きを読む >>
フッター
コピーライト
This template is made by CYPHR. (C) 2019 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.